渋滞
「殿。……あれを。」
森可成「ん!?門があるな……。」
「敵兵が潜んでいるかも知れません。」
森可成「しかしここまで……。」
「はい。構造物の撤去で少々疲れています。」
森可成「池田に
『代わってくれ。』
とは言えないからな……。」
「如何致しましょう?」
森可成「……一気に行くぞ!」
「はい!!」
と今川方が急遽拵えた門の突破を試みる森可成隊。その間、敵方の姿は無し。
森可成「また張りぼてか!構わぬ!!進め!!!」
と門に到着しようとしたその時。
「放て!!」
の号令と共に門の上と森隊の左右から一斉に弓矢が。
森可成「潜んでいたか!一度下がれ!!」
の声をかき消すように。
「開門!!」
の大音声と共に門から飛び出して来たのは……井伊直盛。
少し前。
本多忠真「戸田様。ここまで出来れば大丈夫であります。有難う御座いました。」
戸田忠次「いえ。いくさはまだ終わっていません。私はここに……。」
本多忠真「いけません。戸田様は長期の移動を終えたばかり。無理はなりません。」
戸田忠次「次に襲って来るのは森だけではありません。池田に信広が加わって来ると、松平様より聞いています。」
本多忠真「……それでありましたら、沓掛に居る井伊様と交代と言うのは如何でしょう?奥三河衆の半分が沓掛に残っていると聞きます。彼らも活躍の場を求めている事でありましょう。それに……。」
井伊直盛の方が実戦で役に立ちますので。
戸田忠次「そうでありました。素直に認めます。」
本多忠真「敵がここを避ける可能性もあります。確認次第、後詰めします。」
戸田忠次「お願いします。」
戻って。門の上と左右からの弓矢に、井伊直盛による突撃も加わり混乱する森可成隊は大混乱。森隊の前衛を掻き乱した井伊直盛は、深追いする事無く再び門の中へ。井伊直盛が中に入った事を確認した本多忠真は
「放て!!」
と弓隊に下知。混乱の真っ只中に更に矢を浴びせ掛けた後、
「開門!!」
の合図と共に飛び出したのは本多忠勝。その後も矢を放っては井伊が。井伊が退いては矢を。そして本多忠勝が。を繰り返し、森隊を翻弄。その頃、後方では……。
織田信広「池田殿。」
池田恒興「あっ!これは信広様。」
織田信広「前が渋滞しておるな。」
池田恒興「森が敵と戦っている模様であります。」
織田信広「苦戦しているか……。」
池田恒興「しかしここは一本道。兵の数を活かした戦いは出来ません。」
織田信広「森に託すしか無いのか……。」
池田恒興「はい。こればかりは仕方ありません。」




