とっとと
織田信広と森可成の沓掛城攻略の進言を容れた織田信長は、池田恒興を第１隊。第２隊に森可成。そして第３隊に総大将の織田信広に指名。
織田信長「池田。少し良いか？」
池田恒興「はい。」
織田信長「其方を先陣に据えた理由を伝えて置く。」
池田恒興「はい。」
織田信長「森が愚痴を言っていたであろう？」
池田恒興「はい。
『何故先陣が俺では無いのか！』
と。」
織田信長「私は
『沓掛城攻めに入るのは、全軍が着陣してから。』
と指示を出している。」
池田恒興「承っています。」
織田信長「恐らく森は無視するであろう。」
池田恒興「しかしそれでは殿の軍令を……。」
織田信長「森は今。戸田忠次に憤っている。奴の出世の道具に自分が使われた事を。」
池田恒興「しかしあれは殿の。」
織田信長「そう。私の指示に従っただけの事である。しかしそれを彼は後悔している。
『仕留める事が出来た。』
と……。その戸田が、沓掛城に居る。それも沓掛城の城代に出世して。
『森と互角渡り合ったぞ。』
と吹聴して。突っ走るのは森の良い所であり、危険な所である。戸田は森と正面で対決している。何処が通用し、何が足りなかったのかを経験している。」
池田恒興「森様の暴走を止めるのが私の役目？」
織田信長「それに兄上の事もある。兄上の悲願は安祥の奪還にある。沓掛を取り、刈谷との連絡する事が出来れば実現する確率を高める事になる。森に釣られ、無理攻めをしてしまう恐れがある。此度は沓掛を封じ込めれば良い。落とす事までは求めていない。」
池田恒興「わかりました。」
その頃。
森可成「信長様から沓掛城攻略の許可が出た！」
「おぉ！」
森可成「沓掛に籠るは小姓無勢の戸田忠次！奴は俺とのいくさに勝利したと偽り、城代に出世している！到底許す事は出来ぬ！」
「この恥辱を晴らすのは今をおいて他にありません！」
森可成「信長様から先陣は池田。我らは２陣と聞いている。その後に来る織田信広様の指示の下、攻略に乗り出す手筈となっているのだが……。」
「関係ありません！」
森可成「私も同意見だ。わかっているな。いくさは何が起こるかわからぬ。予定通りに事が運ぶ事等あり得ぬ。」
「その通りであります！」
森可成「いくさは……。」
「結果が全てであります！！」
森可成「軍令違反等……。」
「物の数にも入りません！」
森可成「よぉし！信広様や池田殿の準備が整う前に出陣する！とっとと戸田を片付けて信広様の悲願。安祥奪還に乗り出すぞ！！」
「御意であります！！！」
