プロローグ、中編。
アタシたちは車から降りて、賞金首が入っていった路地に向かった。
肌は透き通るように白く、若い男がするようなヘアスタイルをし、髪は黒く、白目の所が赤くなっている。
本当に美しい女性だ。
だが、124人も殺した賞金首ということを忘れてはならない。
アタシたちは奴が襲ってきた時に、いつでも反撃できるように身構えた。
アタシたち、「ライカン」を持った賞金稼ぎだ。
「ライカン」とは、超能力を持った人型の生命体に変わる事ができる変身能力だ。
人それぞれ変身者を象徴するような姿と能力になる。
能力に強い弱いは特になく、変身者によってはどんなにショボい能力でも、恐ろしい脅威になるのはそう珍しい事ではない。
そして、この賞金首は「ライカン」の出来損ないの「ウィッチ」。
ウィッチは大抵弱いが、こいつは例外。
被害が桁違いだ。
「ちょっと、そこのあんた。」
アタシは奴に近づいた。
「なんだ。」
何と奴は男の声で、アタシに問い返した。
(男かよ。)
「探してたんだ、あんたの事を。」
「俺を、なぜ。」
アタシは、確実に仕留めるために嘘を考えた。馬鹿正直に、「あんたを捕まえに来た。」なんて言ったら反撃にあう。
「これ、あんたのか。」
奴に渡したのは、探している最中に買った安い財布。親切な奴だと思わせて、不意打ちをねらう。
「いや違う。」
「あぁ、そうか。あれー、あんたのポケットから落ちたように見えたけどなぁ。」
「人違いでは。」
「だよな。悪い、引き止めて。この辺はよくひったくりに合うからな。気をつけろよ。」
アタシは路地から離れた瞬間。
(今だ。)
路地の奥から、仲間の一人、女の子のサキがライカンに変身し、背中から生えた6枚の翼で飛行。持っていた弓矢で賞金首を撃った。
撃った矢が飛んできて奴の頭を直撃。かと思えば、矢を素手で掴かまれた。
攻撃は失敗したと思ったら、矢からいばらが生えてきて、賞金首を拘束した。
いばらの拘束は強く賞金首を絞め、肌が傷つき血を流す。
「よくやった、サキ。」
彼女はで弓を肩にかけ、腕を組んだ。
「相手に命中できなかった事を想定してたみたいだ。いい使い方だな、能力はどうやって使うのかを工夫するためにあるからなぁ。」
賞金首は彼女の行動を賛美した。
「よし、それじゃあ俺も能力を工夫しようか。そうだな、、、まず今やるべき事は、このいばらを溶かすところから始めるか。」
いばらは血の付いた所から煙を出し、徐々に溶かしていった。
アタシはすぐに変身しようとしたが、うまくできない。
(何で、変身できないんだ。)
「サキ、もう一度いばらを生み出せ!!」
彼女は地面からいばらをはやすが、生えた瞬間に目元から枯れ始めた。
「嘘でしょ。正常な地面だったら生えるはず、、、」
その時、サキは恐ろしい物を見るかのような表情をした。
「どうした、サキ。」
「アカリ、今すぐ離れて!!」
サキは、アタシに向かって叫んだ。
「気づいたか、俺の能力に。けど、もう回ってるから。」
その場から離れようとした瞬間、視界がぐらついて倒れてしまった。
そんな状況で、アタシの中にあった疑問が解けた。
ウィッチなのに100人以上を殺傷できるほどの力、女性のような容姿、そして赤く充血した白目。
「お前の能力は、毒か。」
「正解。」
賞金首はニヤリと口角を上げた。
「俺は液体に毒素を混ぜる事ができる。俺は空気中の液体を毒に変えようとしたけど、全然できなくてね、もたついている間に捕まった。
危機的状況だったが俺は考えた。その時、いばらの棘のおかげで血が流れて、脱出。そこから出た煙をお前は吸った。
最初はまだ弱いが、弱くても人を殺せる。それが毒だ。」
「さすが、死の女神だ。」
「ありがとう、褒めてくれて。」
賞金首は、皮肉をこめた言い方で感謝した。
「だけど、あんたは思い込みをしている。」
「思い込み。」
その時、賞金首の地面に正方形の模様が現れた
「何だよこれ。」
賞金首は、危機を察して正方形外に出ようとした。
「動いたか。」
すると、賞金首はいきなり真上に高く飛ばされた。
(いきなり高速の何かが、俺に向かってアタックしてきた。
まさか、あの地面に現れた正方形の模様に出たから、俺はぶっ飛ばされたのか。)
賞金首は必死に原因を考えた。考えているうちに異変に気づいた。
「そういや、あの女は何処にいった。」
「ここにいるぜ。」
アタシはライカンに変身した状態で、賞金首の背後をとり、勢いよく地面に叩きつけた。
その勢いで地面にクレーターができた。
「やっと、アタシの能力が使える。」
賞金首は痛みにもだえながら、立ち上がった。
「正方形の模様。まさかお前か、お前が原因か。」
「残念、不正解だ。その正方形の模様はこの場に居ないフジヤマって仲間の能力だ。
アタシも詳しい事は知らないけど、どうやらアタシたちが危機的状況になると、その正方形の模様が出現して、アタシたちを有利な状況にするみたい。」
「じゃあ、お前のそれは、、、高速移動か。」
「さぁね。」
アタシは、高速で賞金首に接近して思いっきり路地の外にぶっ飛ばした。
賞金首は店の窓ガラスを突き抜け、店の中で気絶した。