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第1話 思い出せない

「また来ちゃったんだ、ゆうくん」


(この声は………)


 懐かしい声だ。

 しかし、あたりを見回すが、誰も見当たらない。


 昔あの場所で出会った女の子の声。なんて名前だったか。


「いた!」


 目の前には古い一本の吊り橋。

 あの女の子との大切な思い出。いや、女の子とは関係がないが僕にとってはその子とのたいせつな…。


「お兄ちゃんみーつけた!」


 あの日見つけた吊り橋。足を乗せただけで”ギィギィ”と音が鳴る程に古い。

 10年以上も前のことなのに鮮明に記憶に残っている。それだけ自分の中で大きな出来事だったのだろう。


「お兄ちゃん?』


 妹のこころが心配そうな顔で僕をみていた。


(いけない。かくれんぼをしている途中だった)


「見つかっちゃった。もうおそくなったし帰ろうか」


「え~まだあそびたい!」


「早く帰らないとお母さんに怒られちゃうよ」


 不満げな顔を向けてくる。そんな顔で見られると困ってしまう。


「わかった。また遊んでね」


 小さく頷く。


「約束だよ!」


 そういえばあの橋はいつからあるんだろう。

3年前に死んだ父から『吊り橋を見つけてもわたってはいけないよ』と口癖のように言われていたが、そんな父も子供の頃に同じことを言われていたらしい。

父が子供の頃は今よりもきれいだったのだろうか。さすがに今と同じなんてことはないと思うが。


「……ぃちゃん!お兄ちゃん!」


「ご、ごめん。どうしたの?」


 吊り橋のことに気を取られすぎた。


「さっきからお兄ちゃんぼうっとしているけど大丈夫?」


 いったん橋のことは忘れよう。またあとで……。


「あの橋、なにかあるの?」


「ううん。何もないよ。………こころ、あの吊り橋は渡ってはいけないよ。」


「なんで?」


 当然の疑問だ。僕も父から聞かされた時はそうだった。


「古いものだし、いつ壊れるかもわからない。渡っているときに壊れて落ちて行ってしまうかもしれないでしょ?それに……」


「それに?」


「とにかく、あの吊り橋は渡っていけない。そんな危ないことはしないでね」


 納得していないような顔をしているが、仕方のないことなので許してほしい。

 もう誰にもあんな思いをさせたくない。妹のこころは特に。






「ただいま!」


「お帰り、こころ、優。」


 何気ないいつも通りの日々。これでいい。これがいつまでも続いてほしい。


「ただいま。母さん。」


「ごはんできてるわよ」


「はーい」






「今日は何してきたの?」


 食卓を囲みながら今日あったことを話す。

 毎日の習慣。


「今日はね、お兄ちゃんとかくれんぼしたの。とても楽しかった!あとね、ぼろぼろの橋をみつけたよ!」


 母の表情が強張った。僕をにらみつけてくる。


「優?」


 今までにないくらに怒っている。


「大丈夫だよ。渡っていないし、こころには渡らないように言っているから」


「そう。それならいいわ」


 よかった、落ち着いてくれた。僕がこころに危険な真似をさせるわけがない。


「どうしたの?」


 何が起こっているのか把握できない様子で尋ねてくる。


「何でもないよ。こころに危ないことをさせていないかって心配しているだけだよ」


 本当のことを言うわけにはいかないので、言葉を濁しつつそう返事をする。


「ごちそうさまでした」


「今日は疲れたしお風呂にはいったらもう寝るよ」


 今日は一段と疲れがたまった。そんなに動いたわけではないのに。吊り橋を見てしまったからだろうか。

もういいや、考えるのはやめよう。


「うっ……」


 部屋に戻った瞬間、立ち眩みをした。


(思っている以上に疲れが溜まっているのか。さっさと寝よう)






ドンドンドンッ ドンドンドンッ

 扉を叩く音で目が覚めた。慌ただしいようすで母がノックをする。


「どうしたの朝早くから」


「なにいってるの、もう昼前よ」


「まさか」


 自慢ではないが、僕は普段から規則正しい生活をしているし今まで昼まで寝ていたことなんてなかった。

しかし、外を見ればすでに太陽は高い位置にあった。


「で、どうしたの?そんなに慌てて。」


 そんなことより、母のこの慌てようが気になる。


「こころが、こころがいないの」


「どっか出かけているんじゃないの?友達と遊びに行ったとか」


 7歳の子供が外に遊びに行くことなんて別に珍しいことでもないだろうに。

いや、おかしい…………。


「あの子が何も言わずにどこかへ行くことなんてなかったでしょ?優と一緒ならともかく、勝手に出かけるなんて考えられないのよ。それに、あの子に友達がいるなんて聞いたことがないわ。優、何か聞いていない?」


「いや、なにも」


 確かにこころに友達がいるなんて聞いたことがないし、一人で遊びに行くなんてなかった。

(心配だな。探しに行くか。何事もないといいけど…)


「探しに行くよ」


「お願い、私も探しに行く」


「いや、母さんは家にいて。もしかしたら、帰ってくるかもしれないし」


(入れ違いになってしまうのは嫌だし)


 まずは、村の人達に妹を見ていないか聞いてみる。

しかし、聞くたびにどこへ行ったのかわからなくなる。

ある人は、『近くの川で見た』と言い、またある人は『西の大きな畑で見た』と言う。こんな感じでみんな見たという場所が違う。


(はぁ、どこに行ったんだ)


 村の周辺を探し、村から少し離れたところも見た。それでもどこにも見当たらない。

探しているうちに日が沈みかけている。


(いったん家に戻るか)


 もしかしたら…という期待を込めて家に戻る。


「まだ帰ってきてない?」


「うん、どこに行ったのかしら」


 まだ帰ってないのか。探せるところは探したしそんな遠くへ行くこともないと思うのだが…。

 ……吊り橋。そこしかないか。


「どこへいくの?」


「すぐ帰る!」


 昨日あの吊り橋のことを気にしてたし、可能性はあると思う、いや、その可能性が一番高い。


 林道を抜け、吊り橋の元まで走る。

ここにも、こころのすがたは見当たらない。気は乗らないが吊り橋を渡ることにする。片足を掛けただけで”みしみし”と音が鳴る。

足を進めるごとに、”ミシッ” ”ぎぃぃ” 吊り橋が悲鳴を上げる。


「こころー!どこだー!」


 橋を渡り終え、こころを探す。


「おかえり、ゆうくん」


 またあの声だ。周りには、やはり誰もいない。なんなんだ一体。

そんなことよりこころを見つけないと……。


「なんだ、この声は」


 先のほうで女の子がすすり泣くような声が聞こえてくる。


(こころか?)


 急いで声のもとへ向かう。


「こころ!」


 声のもとへ行くと、泣いているこころの姿がみえた。


「お兄ちゃん?」


 安心したような表情でこころが振り返る。


「どうしてこんなところにいるんだ」


「ごめんなさい。来ちゃダメって言われたのに、気になって…」


 涙ぐんだ声でそう答える。

 (昨日のことで、どうしても吊り橋のことが気になって内緒で一人で来たんだな。それで迷子に)


「もう帰ろう」


「………」


 怒られると思って何も言えないでいるのか、黙ったままでいる。


「一緒に謝ってあげるから、帰ろ?」


「…うん」







「ただいま」


「どこへ行っていたの!心配したのよ?」


 家に入ると母が心配した顔で走ってこちらに向かってきた。


「ごめんなさい」


 小さな声でつぶやくように謝る。


「昨日のことであの吊り橋のことがきになって、行ってきたんだって。それで、迷子になってしまって」


「そう、無事でよかった」


 少し安心したのか声に力が入っていなかった。しかしそれと同時に怒りのようなものを感じた。


「ごめん、僕のせいでこころをこんな目に合わせちゃった」


 こころに怖い思いをさせたのも、母に心配をかけさせたのも全部僕のせいだ。


「ううん。優のせいではないわ。いつかはこうなっていたと思う」


 実際、自分が悪いのだけど、そういってもらえたのは少しうれしかった。


「とにかく、今日はゆっくり休みなさい」


「うん。そうするよ。おやすみ」


部屋に戻り、ベッドに寝転がると数秒のうちに意識を落とした。

第一話はあまり女の子が出てこなかったですが、第二話以降、主要なキャラクターとして出てくるので楽しみにしていてください。ミステリアスでかわいい女の子です。


初めての投稿、読みにくく感じた方もいらっしゃると思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございます。


下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします。


「面白かった」「続きが気になる」


と思ったら  ★★★★★、


「つまらなかった」


と感じたら  ★


みたいな感じでお願いします。

ブックマークもいただけると嬉しいです。


ここがよかった、また、ここがダメだったと感じところがあれば、コメントを頂けると今後の執筆の参考になるのでコメントを頂けると幸いです。


 ちなみに、この物語は私が小学生の頃に、学校の授業で書いた物語をリメイクしたものです。もう10年くらいまえになるのですが、思い出深いものはなかなか忘れないものですね。それでも、どうしても思い出せない部分があるんです。どうしたものですかね。


次回 2023/9/17 16時 投稿予定


※毎週日曜日16時更新


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