プロローグ:プロジェクト・アイドル総理
集英社ライトノベル新人賞 第12回(2022年) 【IP小説部門 #1】最終選考候補作に選んでいただき、最終選考落ちした拙作を晒してみることにしました。
こちらでは途中までではなく完結目指して走っていきます。
よろしくお願いいたします。
とある日本の会議室でしかつめらしい顔をした者達が集まっていた。
窓の外は激しい雨で、時折遠くの灰色の空の中が光り遠雷の気配がする。
彼らは国会議員で議題は防衛費の財源だ。
「贈与税を上げるのはどうか」という声に「年々贈与税を下げろという国民の声が高まっていますが、それはどのようにお考えですか。生前贈与も減少傾向です」と反論があった。
「しかし、贈与税額を下げれば日本の税収は一体どうなると思っているんだ。稼ぎ頭だぞ。法人税を上げるしかないのではないか」とある議員が言えば、「法人税を増やすのはいかん。日本企業が海外に流れる。上げるならば所得税だろう」と他の議員が反対する。「所得税を増やすのも駄目だ。日本から富裕層が逃げてトータルで税収が減る。こうなったらもう消費税しかない」という意見には「消費税を上げれば確実に内閣支持率は下がるぞ」と抗議の声が上がる。
余りにもまとまらない意見に業を煮やしたのか、議長と思しき男が末席に座る男に視線を向けた。
「平目木、お前、何かないか」と意見を乞われて平目木と呼ばれた男は口を開いた。
「国民が課金して推したくなるような総理大臣を擁立して、総理大臣がアイドルをして税収を集めればいいのではないでしょうか」
先程までの喧騒が嘘のように静まり返った。
近くで大きな落雷の音がしたが男たちは茫然と平目木を見つめている。
彼の発言があまりにもぶっ飛んでいたため、脳みそがフリーズしたのだ。
「男女両方を引きつける歌声と顔の良さを兼ね備えた男を歌って踊れるアイドル総理にしましょう。そしてアイドル総理を国民が推す。推し活で落ちたお金が税収となるのです」
「そんな都合よくいけるのか? 平目木くん」と年かさの議員は懐疑的だ。
「推しのためなら食費を削っても課金する。オタクとはそういう生き物です。僕も推しのために今週は一日一食です」と彼は曇りのない眼差しで言い切った。
「平目木くん、ちゃんと三食摂ろうね。ちゃんとお給料、貰ってるでしょ?」と上司は不安そうに声をかけたが、平目木はスルーして「アイドル総理プロジェクト、やりましょうよ」と拳を握って訴える。「意外といけるんじゃないか」「そう言えば愛沢くんの次男めちゃくちゃ可愛いらしいぞ」「マジで? そんな可愛いなら、一回ご尊顔を拝みたいなぁ」と声が上がった。
多少通報したくなる会話も混じっていたが、男達は平目木の案に対して前向きなようだ。
「アイドル総理!」「アイドル総理最高!」「アイドル総理フゥーッ!」
雷雨の中、深夜の会議室で奇声が聞こえ、後日その会議室は呪われていると国会議員の間で噂になった。
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