96 いざ 悪辣マーラ
マーラの顔が突然に 悪辣マーラに変わりユウゾーはビビりだす。
「何を失礼な事を言っておるユウゾーは。うまくいくかどうかは半々だ。まずはオサと補佐役に現状を相談せねばならないな。10中8・9は失敗するだろうが、その後に提案する事がある」
えーと 悪代官顔でうんうん 一人で納得しないでくれるか?
おじさんは非常に心配なんだが、、、。
全ては明日だ。ユウゾーも一緒に行くぞ。なんせ相談を受けた当事者だろう?
やっぱり俺もか…。どうも気乗りせんのだが…。
自分の立ち位置が今一不明なユウゾーは、マーラの勢いに押されながら頷き返す。
村のオサと補佐役に面談を申し込み、とある小部屋にて詳細を話し込む。
あの 何故シャルル様も同席されているのかな?
えっ? 何か面白そうな気配がした…そうですか、、。
此度の相談事のあらましを伝えると予想通りオサと相談役は渋い顔になり、しばらく考え込んだ。
やがて沈黙を破りオサが済まなさそうな顔で。
「悪いがこの話しはどう考えても現状では解決策がない」
ですよね。ユウゾーも無い知恵を絞ってみたがエルフの将来に関する問題ともなると、迂闊に第三者のユウゾーが発言など本来出来るものではない。
「プラハには申し訳ないが、場合によっては数百年後には現状が変わるやもしれん。其れまで希望を持ち辛抱してもらうしかないの」
補佐役もオサの言葉をそう継ぎ足して渋い顔に戻る。
無論変わる可能性もあるかもしれないが、あくまで推論であり先の未来など誰にもわかりはしない。
ここまでだな。プラハに悪いがこれ以上は無理事であろう…。
隣のマーラを見ると、まだなにか余裕がありそうな顔で微笑んでいる。
さて 何を爆弾発言する気だろうか?
「オサに聞きたいがこの制度は男の子が欲しい為に設けられた制度なのか、それとも単純に子供自体を増やすための制度になるのか?」
「無論当初は子供自体を増やす事から始まったと記憶している」
「そうですな 私も当初は其の様に思っていました。だが生まれてくる子は圧倒的に女が多い。其のために途中から男の管理統制が強まり200年近く経過しているが、結果はどうですか?」
「…正直人口自体もほぼ微増で、男の子の数も左程増えていない。だがそれはエルフ族だけの問題ではないだろう?」
だからこの世界での男の価値観が次第に可怪しくなってきたのだな。
ここまでは誰もが考える事だが、何を言いたいのだろうマーラは…。
「過保護にも問題ありとは思いませんか?」
「…ないとは言い切れないな」
この200年間成人になってからの男はひたすら管理の名のもとに、堕落した毎日を過ごしている。
たまには運動の真似事をする者もいるが直ぐに飽きて元の生活パターンに戻っていく。
その結果数日に一度の夜のお勤めにも満足に対応出来る者はほんの数名にまでになっている。
元々その方面には希薄なエルフ族の男達はこれ幸いとぬるま湯生活に浸かり込んでしまい、それにより更に希薄に輪をかける状況にまで落ち込んでいるのだ。
「こんな状態をいつまでも続けてもよい結果は望めないのでは?」
「…だからと言って今更彼等を元に戻すわけにはいかんぞ」
男の数が足らないのは事実なのだ、それを昔と同じ環境に戻し狩りに森へ行かせるわけには行かない、森の環境は甘くない万一何かあれば、少ない男がより少なくなる事が明白だ。
「だからこそプラハにはテストケースとして数年間ほど経過を見てみませんか」
プラハは今現在は年長組として他の女性と同等以上の仕事をこなし、精力的に動き回っている。
健全なる精神は健全なる身体に宿る と言う。
本人が望む冒険者家業につき、さらなる健全な体に育てあげそれが今後の村にどの様な利益を生むかを見てからでも遅くないと力説する。
「いいたいことは理解する。なれど外に出て万一の場合はどうするのだ」
最悪オサや補佐役の責任問題にも発展する可能性が大だ。それだけでは済むまい、大切な男を減らす事になるのだから。
それに対しマーラの提案は皆の度肝を抜かれる発言を行った。
「保険をかけましょう。ここに最適な男が存在する。この春の発情期にはユウゾーを貸し出します」
ブホーッ!なんてことを提案するんだ マーラ!!
皆がマーラの提案に呆気にとられるが、直ぐに提案の内容が非常に有益な提案と理解して、皆の視線がユウゾーに集中する。
「待て! まーて。突飛な意見に皆惑わされている。冷静に考えてくれ!」
必死に皆の注目から逃れようとユウゾーは焦りだす。
「いやユウゾー 其れが可能なら是非にもお願いしたい。これこの通りだ」
オサと補佐役の両方が深く頭を下げて見せた。シャルル様が何も言わずにこにこ笑っている。
「ま マーラ……」
提案の撤回を望んで少しの可能性をマーラに求めた。
「どうしたユウゾー。お前ほど適任者は探してもおるまい?お前のお陰で我ら5人の妻達は大層満足した夜を日々送っておる。一つ村の為に一肌脱いではくれまいか」
そう言って何となく含みのある笑顔を浮かべるマーラである。
それはお前たちの求めに応じただけで、決して自分から…。
思わず愚痴めいた言葉が出そうになり慌てて口を閉ざす。
その言葉は裏を返せば求めに応じていくらでも対応出来る事を自分で話すことになる。
結果相手にとって有利な材料を与える事にもなる。
マーラのその笑顔を見てユウゾーはある事が思い浮かんだ。
「まさかと思うがこの件、他の妻達も…」
「当然だ。昨夜あれから他の妻達と話し合ったのだぞ。お世話になっている村のためならと全員が賛成してくれたぞ」
嵌められた…最初から出来レースなのだ。まさか昨夜の内に妻達が結論を出していたとは…。
尚も抵抗するユウゾーにマーラがユウゾーの耳に小さく呟いた。
「ここで恩を売っておくのが今後のユウゾーにとって有利だぞ。この村いやエルフ族に大きな恩が売れる事になる」
ユウゾーの不安定な立ち位置がしっかりとした位置に跳ね上がるチャンスだとマーラは言いたいのだ。
ユウゾーは返す言葉もなくなり、項垂れながら承諾する。
昼間から大きな歓声がオサの家から響き渡った。
家の警備の者たちも何か良い話があったのかと嬉しそうに奥の部屋に注目する。
その中でユウゾーだけが何故か割り切れない気持ちにて一人もやもやした気持ちを抱いていた。
この世界の女性たちは賢くて怖く手強い。
今更ながらユウゾーは我が身が置かれているこの異世界の認識を新たにする。




