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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
9/281

09 いざ 村へ 2

ウァー!! 助けてくれー! あっちに行けー!!



はて どこかで聞いたようなセリフだ。 

今にも倒されそうな大木にしがみつき必死に助けを求めている人影が見える。


 うむ 万国助けを求めている時は、そんなにセリフに大差がないんだな。


妙な事を感心していた。

大草原での自分の失態を生暖かく思い出すユウゾーであった。


気付かれないように身を屈めて大猪に近づいて、、、と思っていたが、それは突然大木への攻撃を止め、くるりと向きを私の方角に向けて来た。

大猪と正面から目が合っているんだが・・・・。


共にしばしの沈黙の後、先に大猪が地響きを上げ私に突貫開始。 



 バカ野郎! そこは風上だ。 なぜ反対から来ないのだ。素人めー!! 

  

木の幹にしがみ付いている人物からのアドバイスです・・・。

助けるつもりの行動を諌められて落ち込むユウゾーである。 


 ・・・貴重なご意見ありがとう。 このまま帰ろうか。


ユウゾーは気力が急に萎えるのを感じた。


サイコガン出力最大を確認後、狙いを定めトリガーを引く。

衝撃の大轟音と地響きそれと辺り一面の砂埃、それらが収まった時に、辺りは急速に静けさを取り戻し、大地には大猪の横たわった姿があった。


大猪に近づき命中した跡を検証する。


綺麗に頭部の上半分が吹き飛び、脳内を完全破壊したようだ。

猪系は頭蓋骨はかなり丈夫なはず。

それを問題なく破壊できた事にある意味本人も驚いていた。


最初の一発は顔に衝撃を与えて時間稼ぎを作り、二発目に勝負をかける作戦に出るつもりであった。

改めてサイコガンの威力に感謝する。


 「い いまのは何だ? あれは魔法なのか?」


そこにはいつの間にか()()の小柄な年若い冒険者風の女性がいた。

 

 なんと・・・。


ユウゾーは助けられて礼も言わずに質問を投げかける彼女に見とれていた。

いや 正確には()()に意識が向いていた。

えーと これがよく本に出てくる 獣人族?


 「おい 聞こえないのか?」


再びの質問に我に返ると、軽く咳払いをして誤魔化し口を開いた。


 「その質問に答える前に 先に何か言うことがないのか?」


相手を軽く睨みつける。

面倒くさい状況に展開すれば、すぐにこの場から離脱しようと考えていた。

確かに勝手に助けたが、絡まれる理由はないはずだ。


質問を質問で返した事で、相手もハッと我に返った様だ。


「た 確かに。これは済まなかった。改めて礼を言う。私はユーラシア国3級冒険者ミューリトラと言う。ミューと呼んでくれ。先程は危ういところを助けてもらい感謝している。と ところで先の質問の件なのだが・・・・」


どうしてもそちらに意識が行くのかな? あの大猪を一撃で倒した事はかなりの衝撃が走ったのかもしれん。

何となく迂闊(うかつ)な説明は不味い。適当に・・・・


「私は日本国から来た 浅野 勇蔵だ。ユウゾーでかまわない。質問に答えたいが次回会った時で良いだろうか? もうすぐ夕方だ。野営地を探すのを優先したい。ところでこれは私が処理してもよいだろうか?」


大猪の体に片手を置いて確認をとる。


 「無論すべてユウゾーの所有でかまわない。魔物の部材回収は手を貸す。それと野営地については私に心当たりがああ~~~!!!!!。」


なんだ急に? 目が完全にイッてるぞ。この女やばいのか??

ユウゾーは魔法袋に大猪を回収すると、胡散臭くミューを眺めていたが自分の失態に()()と気がつく。


 (しまった! 魔法袋に大猪を回収するのを見られた!)


あれだけ女神さまから、ヘパフラスコ様が作成した品だから通常品と桁が違うので、充分使用に関しては特に他人に迂闊に見せるなと注意されていたのに…


この世界、大容量の魔法袋は大商人を筆頭に、軍関係も物資・部材の輸送に有効な手段として入手に積極的だ。


倒した魔物はどう見ても重量1トン近くの大物。それを楽々回収する魔法袋ならどれだけの価値があるか・・・ 日本円にて最低億の単位は確実な品。


頭では理解してもこの世界に来て日が浅いユウゾーは、今まで一人で対応してきた事が災いし、野営の件もあって気が急ぎ、ついうっかり習慣的に魔法袋を発動してしまったのだ。


完全に意識が固まった彼女を何とか揺り動かすと、心当たりがあると言う野営地に案内を急がせる。


野営地に到着する間ユウゾーは、居たたまれないプレッシャーを受け続けていた。横にいる彼女から信じられない物を見た、と言う視線を露骨に感じていたからだ。

  

野営地に着き食事の準備を彼女に任せると、昨日と同じ様に周りを堀もどきと防御柵もどき作りを始め。魔物除けも適当に投下を忘れない。


全てを終え食事のために焚き火の前に座る。

彼女は改めて周囲を見渡して、なんとも言えない深い溜め息をつく。


用意された食事を終え温かいよもぎ茶を飲む頃、ミューが質問を開始する。

それを話せる範囲で疑問に対応していくが、今一信じられない口調であった。


 「つまりあんたは迷い人、異邦人と考えて良いわけだな?」


 「迷い人?が何を意味するのか不明だが、異邦人は当たっているな。」


 「その口調よ それにその態度どう見てもこの世界の男の基準ではない。」


なんだ? この世界の基準に合わない? 今後の活動の為確認すべきだな。


 「第一に男は特例を省き、外で活動することが先ず無いと言っていい。」


はい? この女なにを言っているのか。男は外で活動しない?

生活基盤は女性が主で、男は子育て? それとも管理部的な?


 「第二に男は過度に優遇されているせいか、気弱で従順な性格だ。」

 「第三に男は特定の事意外、まったく役に立たない。」

 「第四に男は・・・・・」

              ・

              ・

              ・

 「まて、次から次に目新しい情報は助かるが、どれも抽象的で全体図がボケている。まずはそうなった原因を把握しているなら教えてくれ。」


彼女の話を聞いているとこの世界の男は、存在する価値が無いようにも聞こえてくる。何か原因があるはずだ。

 

 「‥‥男が不足している。」


 「はいい?」 

大きな争いがあったのか? それこそ人類が滅亡寸前まで追い込まれたとか?

戦いなら理屈が通る。兵士は男が圧倒的多数だしな。

でもそれなら一時的な問題だと思うが。時間が解決をする。

まてよ、今がその一時的な状態かもしれないな。


 「‥いつ頃からだ?」


 「‥もう最低200年は過ぎている。」

 

 「はいいいい!?」


今度はユウゾーが固まって動かなくなる。




その昔魔族との最終戦があり、魔族VS他民族は数に優る多民族勢が辛勝し、ほぼ魔族を殲滅した。

ただ魔族は最後のイタチっ屁をかました。 

毒ガスだ。全世界にそのガスが広がったが、幸いにそれほど強いガスではなかった。それでも年寄・子供・病弱者を中心に被害に合い、総人口の1割近くが亡くなった。


その後ガスの二次被害が判明するまで暫くかかる。

男の子がなかなか生まれなくなったのだ。

当初は出産率の5%以下という状態だった。

現在は10数%までに回復したが、慢性的な男不足は変わらない。


各国が男不足からのトラブル対策に本腰を入れ、現在色々な保護対策の元で管理体制が構築されているとの事。



 「つまり この世界の男の立場は?」


ようよう起動し始めた頭でミューに尋ねると、言葉を選んでいるらしく少しの間の後に、、

 

 「‥‥繁殖の為の道具?」


なんじゃ それは!?  よし可能ならこの世界潰して、最初からやり直したほうが良いな。かなり本気で検討するユウゾーであった。


 「因みに私が村に行ったときの弊害は?」 


 「それは問題ない。かなり少ないが冒険者にも男がいる。ただ村でかなり 好奇の目で見られる覚悟はする方がいい。」


 「なんか疲れが……今日はもう寝る。」


ワンタッチテントを魔法袋から出して、夜中に交代するから起こしてくれ。

と伝えるとユウゾーは痛む頭を軽く揉みながら寝床に入る。

ミューは突然出てきたワンタッチテントをしばし呆然と眺めていた。




翌朝 朝食用の雑炊をかき回している最中にミューがワンタッチテントからごそごそ出てきた。

夜中の交代時に尻込みするミューを無理矢理テントに寝かしてみた。

朝食を作る間にテントの感想を聞いてみる。


 「驚いた。朝起きても体が痛くないし、短い睡眠でもぐっすり眠れた。

 あの寝袋も軽いのにとても暖かいのだな。」


床にはエアーマットをひいてある。小さな小石程度なら何も感じない。

地面からの熱や寒さも断熱効果抜群だ。寝袋は高級羽毛、文句のつけようがないはずだ。


だが一人では不安があって使用しないと言う。

ふむ 何か冒険者には向かない事が? 改良点が必要なのかな?


まずテントの入り口は閉め切る事は無いとの事。何か気配を感じた時に確認が遅れるのは死活問題になる。

続いてあの寝袋では靴を脱がなければ入れないし、とっさの時チャックの操作にも時間がかかる。

靴も履くのにも時間が必要。遅れたら即重篤なケースにつながる。


なるほど…さすが命がけの冒険者。参考になる。


ただ靴だけは私は脱ぎたいな。対応策考えよう。

    


 「一つ質問だ。あの大猪に何故ちょっかいを出した?」


するとミューはバツの悪い顔で 誤射だ と呟いた。


誤射? あんな巨大なものを?


 「うー、繁みに隠れていてほんの一部分しか見えていなかった…」


通常の猪と勘違いして誘き出して仕留めようとしたが、出てきたのはとんでもない大物で慌てて木に登り無駄と分かっていても助けを求めたのだと。


こいつこんな調子で一人で冒険稼業が出来るのか?



 「ところでミューは何故一人でこの森に?」


 「依頼だ。でも正規でなくて、知り合いの商人から岩塩を至急集める依頼だね。今開拓村に入る物資類が遅れているんだ。当座の対策用でこの袋に 入るだけと預かっている。」


腰にぶら下がっいる魔法袋をぽんと叩く。

その腰には2つの魔法袋がぶら下がっていた。一つは商人の貸し出し用。

もう一つは個人用だな。

 

 「その袋いっぱいの岩塩か・・ちなみにその袋は何キロ用なんだ。」

出来上がった朝食を食べながら質問した。


 「うーん 確か200キロ用と説明をうけた。」


 「掘るスコップ等は?」


 「はは…抜かりはない。こちらの袋に小型のスコップを持参している。」


私は自分の魔法袋を確認する。うん 量は問題ないな。


さぁ 交渉の開始だ。

ユウゾーはミューを見据えて質問を投げかけた。


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