88 いざ 森のダンジョンへ
出発の日となる。
朝早くから村人に見送られて11名の戦士は森の奥にあるダンジョンに向かう。
昨日に新しい5名にも魔法袋を貸し出しそれぞれの荷物を収めてもらった。
第一と第二の村からも同じくして戦士達が出発している筈だ。
ユウゾー達はゴブリンランドの南端から大きく迂回ルートを進んでいく。
第二村の戦士は第一村に移動して合同でゴブリンランドの北ルートから移動するとの事だ。
ほぼ半日歩いて川に到達する。
この川を渡れば強靭な魔物の闊歩する危険地帯になる。
早めの昼食と休憩を兼ねる。
この時間を利用して皆に昨夜製造した予備のマガジン2本を配布する。
ガンベルトに刺して置いてもらえばいいだろう。
今回の作戦の鍵になるので大切にな。
あっ 充電は各自で宜しく。皆魔力は高いので問題ないだろう。
そうだ ミューは私に持っておいで、充電をしておこう。
えっ ミーアに御願いする?!そうですか。
川を渡り終え、先頭に道案内兼務のニーナが立つ。
その後を2列縦隊で10名が付いて行く。
進行方向右の列に妻達が位置する。
恐らく右手の奥がゴブリン達の生息域と思われるからだ。
妻達は基本前方と右手に注意を向ける。
左手の列は左手方面に注意を払ってもらう。
索敵に優れているミューは申し訳ないが最後方で後ろにも注意をお願いしてある。
一日目は魔物の襲撃も数回で終える。
倒したゴブリン達は確かに私の知るゴブリンより一回り近く大きな体をしていた。
カバの実ってそんなに栄養が良いのかな?美味しいのか?
マーラが苦笑して私は非常食でも食べたくないと断言した…。
粗食が得意な?マーラでも避けるか。
突然ユウゾーは 猫また と呼ばれる、猫も避けて食べないと言われる小魚を思い出す。
「何か失礼な事を考えていないか?」
猫とマーラを一緒に見ていたユウゾーは慌てて否定する。
森の中にちょっとした空き地を見つけ今夜の野営地とした。
大型テントを新旧二つ出し、風呂場と簡易トイレを設置する。
コットとエアーマットも人数分作ってある。
5名のエルフ達がこわごわベットとエアーマットに触ったり横になり、やがて快適性を理解し大喜びの歓声に沸く。
「ふん 田舎者め」
おいおい ニーナその言い方はダメだろう。
つい最近まで同じ穴のムジナ同志だったのだから。
ニーナとマーラが横を向いて視線を外す。
ユウゾー手作りの料理をたらふく食べて、消化の為に横になっていた。
でもユウゾーがお菓子を出すと皆起き上がってくるのは何故だ?
風呂も初めての経験らしく、ミーアからの指導?の元、楽しいお風呂タイムを過ごしたようだ。
見張りの2名交代を残しお休み時間となる。
周りにはユウゾー特製の柵と魔物除けの袋をまいてあるので、ある程度安心して夜番出来るだろう。
朝方起き出したユウゾーは夜番に慰労の声かけと魔物状況を確認後、朝食の準備に移る。
美味しそうな匂いに釣られて皆が目を覚ます。
食べたら今日も一日頑張ろう。
大型テントや設置した物をキャンプ専用袋?に収納して出発だ。
あれだけの容量が全て入ったと5人組がざわついているが、直ぐに慣れるだろう。
二日目からは魔物の出現が頻繁になってきた。
ほぼ一時間おきに魔物達に遭遇する。これ幸いと5人組の練習相手になってもらう。
今日一日でかなりの数を殲滅する。
5人組も銃の扱いにほぼ慣れてきたようだ。
これでダンジョン到着後もそこそこの活躍が期待できそうだ。
後四日ほどで目的地に到着するから、今のうちに銃の経験を積んでもらおう。
さすれば生存の可能性が上がる事にも継るのだから。
3日目には新人5名はかなり銃に関して自信を深めたようだ。
今から先が銃を撃つことが楽しい時期になるだろう。
でも油断はダメだぞ、慣れが事故を呼ぶケースが多いからな。
マーラから 父親みたいに煩い と呆れた顔で言われた。
何故だ・・・解せん。
5日目に入った時に今回最大のゴブリン数がユウゾー達を襲った。
恐らく近くにゴブリンの大きなグループが生息していたのかも知れない。
練習していたフォーメーションの実施に丁度良い。
約百体程のゴブ相手に 十字掃射のお披露目になる。
またたく間に殲滅されたゴブの死体を見つめ5人組は何を考えたのだろうか…。
途中四ツ牙の大猪を狩り、オークを4体程回収して少し早いが解体して肉確保の為に野営の準備に入る。
ニーナに進行状況を聞くといいペースだと言うので早めの野営に入ったのだ。
全員魔法袋持ちにより身軽な事が進行によい影響が出たようだと、満足げに答えた。
野営の設置が終わると早速魔物の解体作業に移る。念の為2名の警備担当を置き、他の者による解体ショーとなる。
ユウゾーはまだこの光景に慣れていない。
指示に従い魔法で大量の水をかけるぐらいの手伝いしか出来ない。
皆大猪の肉を所望の為この1トンクラスの解体になった。
オークはしばし袋の肥やしになってもらおう。
ほぼ2時間近くで大猪はきれいに解体された。
皆の手際には本当に感心させられる。
今晩は美味しい肉を焼くとするか。
但し、焼肉のタレは使わんぞ。俺が食べる暇がなくなるからな。
手の余った人からお風呂をどうぞ。もうお湯が貯まっているぞ。
最終6日目の移動が始まった。
今日の昼過ぎには目的地に到着するだろうとニーナが教えてくれた。
やれやれようやく到着するのか。
他の村の人達はもう到着しているのかな?
ゴブリンの襲撃がかなり多くなる。
次々に10~20体程が襲ってくるようになった。いい加減にして欲しい。
落ち落ち休憩する間も無いくらいにやってくる。
他の魔物はゴブリンに追い払われているのか、ほとんど姿が見えない。
なる程ゴブリンランドと良く言ったものだ。
今日だけで一人平均30体は退治しているのでは?
昼食時も交代で食べている状態になる。
マーラが首を傾げている。どうも何か異常状態に近いと呟いている。
これだけの襲撃は通常考えられないと ニーナと何か打ち合わせている。
何だか嫌な予感がしてくるが、ここは彼女等の判断に任せよう。
それが判明したのは更に1時間程を進んだ時だ。
先頭のニーナがそしてマーラが、いや全てのエルフ族が皆立ち止まり、風が運んでくる僅かな音を聞き耳立てはじめた。
人族のユウゾーとアーシャだけが何が起きているのか皆目検討がつかない。
耳の良いエルフ族とミューも何かの異変を感じている様だ。
「ユウゾー急ぐぞ」
ニーナが小走りに移動開始する。
他のエルフ達も追従して動き始める。
「魔物が集まっている。そして何かと戰っている気配がある」
マーラが渋い顔でユウゾーとアーシャに説明する。
何かと魔物が戰っている?
そう言われてもピンとこないユウゾーだが、アーシャがもしかして と呟き始めた。
どういう事なんだ? アーシャに尋ねてみる。
推論だがと、断りを入れて語り始める。
「この地までは冒険者たちは入って来ないのだろう?すると二つの考えがでてくる。ダンジョンから溢れた魔物がゴブリンを追い回しているか、他の村から討伐に出ているエルフ達に何かが起きている…」
後の言葉はボカした…。そうか! 恐らく後半が正解だろう 鈍いユウゾーもようやく事の重要性が理解出来始めた。
仲間を助けようとエルフ達が動き始めたのだと。
更に30分程進んだ時にユウゾーでも風に運ばれている声が理解出来始めた。
魔物の叫びと微かに聞こえる人の叫び声が・・・。
あいも変わらずゴブリンが襲ってくる。
それを退けながら進むユウゾー達であったが突然前方が開けた、かなり開けた場所に出てきたのだ。
そしてそこに見えた光景に一同は思わず息を飲み込んだ。




