71 いざ ギルマス相談
岩山より数日後オレオンに帰り着いたユウゾー達は冒険者ギルドにて換金のために窓口にいた。
5体のワイバーンは合計1800万強の価格で引き取られ全員がそれぞれの分割金を手にしていた。
ユウゾー達3人は直ぐにギルトの個人口座に預け、他の二人は分け前を手に消えていった。
酒場だな…。飲みすぎるなよ、ユウゾーは軽くため息をつく。
今回も皆無事に帰還出来たし、まずはめでたしめでたしかな。
さて家に帰ってのんびりしよう。
お願いだから最低一週間はゆっくりさせて欲しいものだ。
最初の2日は皆ゆったりと過ごしていた。
その後一週間近くユウゾーは錬金術に注力していたが、ようよう努力の甲斐があり付与魔法が何とかなりそうな状況まで進んでいた。
「えーと ミューは素早さアップでミーアが体力向上。そしてあの二人は…適当でいいか」
ミューは獣人らしく動きに特化しているし、ミーアは基礎体力が若干劣る。例の二人はカンスト同様のレベルなので基本何でも良い筈だ。
そして皆に共通の付与は 思念力+5 これはサイコガンの威力が共通底上げになる。
まぁ 気分的なUPではあるが。
ここまでユウゾーが手こずったのは指輪に付与を2つ入れられないかと四苦八苦していたが、その目処がここにきてようやく可能になり安堵に胸を撫ぜおろしていた。
この晩食事後に皆に完成した指輪を配布してみた。
後で知ったがこの世界では結婚指輪の概念が無かった。
送られた指輪に感謝はしたが、そこまでの感激にはならなかった。
一応ユウゾーの世界での慣わしを説明したが反応が今一なのは少し残念だ。
仕方あるまい。一応形式的な事だからな。ユウゾーの気分は晴れたからよしである。
そんな平和な日々が過ぎていたが、新ダンジョン調査隊が帰還して来たあたりから少し様子が変わってきた。
調査隊は45階層で一旦引き上げたらしい。
正確に言えば断念に近い。
魔物がかなり強くなり怪我人が続出し薬の在庫からもこれ以上進むのが困難になったのだ。
そんな情報を知ったのは調査隊が帰還して数日後の事で、それも参加した本人からの説明によってだ。
ユウゾーたちの前にはギルマスとアターシャの二人が座っていた。
どちらもかなり苦虫を潰したかのような顔で淡々と調査内容を話した。
なぜ 二人揃っての説明なのか、少し嫌な予感がしていたユウゾー達であった。
「えーと 詳細なご説明有難うございます。その上でお聞きしますが何故そこまで詳しい説明をわざわざ私達に?」
ギルマスが少しの沈黙の後語り始めた。
今回大きく分けて2つの問題が発生していた。
一つは戦力不足。もう一つは食料問題。
戦力に関しては首都チームから更に追加をお願い出来るが、次の第三次調査隊にて満足出来る結果が出ないと首都本部が正式に乗り出してくる。
それはつまり新ダンジョンの管轄がこのオレオン都市から外れ、首都直轄になる可能性が高い事だ。
ダンジョンから上がる多様な利益に影をさす事にもなる。
何としても首都直轄は避けなければならない。
その対応としてオレオンとしても最強メンバーにて背水の陣を組む必要があるのだ。
そのメンバーに何としてもユウゾー達のパーティが必要になる。
是非にも力を借りたい事が今回の訪問内容になる。
それと食料問題がある。次回は長期戦となる。
ポーターを増やせば対応が取れるが、それはまた必要食料の増加につながる。
つまり荷役人を増やせば増やすほどに、荷役を守る護衛の数も増えまた食料も増えるイタチごっこになるのだ。
無論そこまでの経費を投入しても新ダンジョン攻略には多大の利益がある。
通常ならこの地を治める貴族たちによりこの面は支援がある。
だがこのオレオンは国の自治地区だ。
オレオンのトップは一応派遣された役人にて管理されているが建前だ。
実際には冒険者ギルドを始め商業ギルド及び他のギルドが中心となり運営されている。
さまざまな柵が複雑に絡み合っている。
オレオン内部でも新ダンジョンの管轄には首都勢力を良しとする派閥もいるらしい。
そこには裏で相当大きな金が動いているとの事だ。
話しを食料問題に戻すと、一番の問題は量よりその内容となる。
新鮮な野菜や食料に関してダンジョン内をピストン輸送しても限度がある。
本来この業務に一番適しているのは軍の協力だ。
だが軍は名ばかりで実際には傭兵の上級クラスの寄せ集めに成る。
ここでもその命令指揮に不安が残る。
本当に問題がないか実際に試してみないと判断がつかない状態らしい。
ここでも話題に上がったのはユウゾー達のメンバーは皆かなりの大きさの魔法袋を持っているらしいとの噂が流れてきた。
もし本当なら有効に活用出来るし、ダンジョン内輸送ピストンも最低限にて運営出来る。
いかん やはり心配していた事が前面に…。
何か良い手はないかユウゾーは考え込む。
それに反応してマーラが代わりに口を挟んた。
「その前に他の冒険者たちは一人何袋を持っているのだ?」
目の前の二人が怪訝そうな顔つきに変わる。
「私は500キロ入りの袋一つしかもっていないが?」
アターシャが何が言いたいのかと顔をしかめた。
おう 500キロ用か 流石一級冒険者だ。
魔法袋は高額だ。普通はお金に余裕が出て買い換える時には、先に購入した少容量の魔法袋を下取りしてもらい高容量の袋を購入するので一人一つが当たり前だ。
それでも3級冒険者でも数人に一人の所持率となる。
大概はパーティ用に一つしかないのが現状だ。
魔法袋には大別して2つの袋がある。
ユウゾー達の持つ入れれば重量がなくなるタイプと軽減袋と呼ばれる入れた物が1/3~1/10に軽くなるタイプに分類される。
共に魔法袋と呼ばれるが実際には使い勝手には雲泥の差が発生する。
軽減袋でも下位冒険者にとっては高値の羨望品になっている。
「だよね 大概の冒険者は一つの袋しか持っていない。そこに落とし穴がある。2つの容量が一緒の魔法袋を持っていたと仮定しよう。一つは容量の半分入っている袋ともう一つは限度一杯の物が入っている袋だ、さてこの半分入っている袋に限度一杯入っている袋を入れる事は可能かどうか?」
二人は呆気にとられた表情でそれでも考え始めると、何方が正解か分からなくなってきたようだ。
ようなそんな事今まで考えた事も無かったのだろう。
「正解は入るだ。理屈は私にはよく分からないが、これを教えてくれたのは此処に居るユウゾーだ」
「そ そうか!大容量の魔法袋と思っていたが、実際には少容量の袋が何個も入っていた?!」
マーラ ナイスだ。肝心な事をつい忘れていた。これなら誤魔化せる?!
ユウゾーは大げさに頷きマーラが言う通り何個もの魔法袋を一つにできる裏技です と胸を張る。
実際には無限に持ち運べるとは思わない、前にユウゾーはテストとして5袋の投入に成功していたが、どういう訳か6袋目からは拒絶されている。
ギルマスとアターシャが頻りに感心する。
このやり方なら袋さえあれば大量の品を運べることが可能になる。
いや実際には機転のきく商人の中には実践している者がいるはずだ。
他の商人たちに話す筈がない。ライバルに塩など贈らないのが商人なのだから。
「これで大量の食料運搬に目処がついた。後はユウゾー達の参加依頼の件は?」
ユウゾーは妻達を見渡した。いかん…皆目が輝いている。
渋々ユウゾーは次回参加に承諾をした。
なれどダンジョン内でのユウゾー達の事は極力秘密に、箝口令をお願いした。
それを不思議そうな目でユウゾーとギルマスとの口約束を見ているアターシャであった。
それと第3回目の探索には最低半月以上待って欲しいとのお願いをした。
その間にレベル上げと作製する物があるのだ。




