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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
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65 いざ 再活動


突然のギルマス訪問に胡散臭い顔で見入る妻達にお茶の用意をお願いして、二階の書斎兼応接間にご案内となる。


大きな体をソファーに収め部屋の辺りを眺めてギルマスが いい家だ と感心していた。

確かに多少古い家だが手入れが良く落ち着いた雰囲気のある家である。

無論貸家だが…。


「突然の訪問で悪いな。お前達の姿がとんと見えないので気になってな。もしかして()()に虐められているのかなと心配になってな」


無論冗談だ。 ニヤリと笑った口からは同情する気配も感じられた。

隣で護衛役でいたニーナが一瞬不快な顔をした。


「カカカ 冗談だ。元気そうでなにより。今日の用件は例の南の新ダンジョンの件だ。ダンカンからの報告であらましは理解した。かなり面白そうなダンジョンらしいな」


「私はそれ程ダンジョンについて詳しくはないけど、妻達に聞けば聞くほど特異性の高い場所かと」


「ふむ実は再度調査隊を派遣する事に正式に決定した。其の前に今回()活躍したユウゾー達に細部の分かる範囲で詳しく教えてもらおうと本日の訪問理由となった訳だ」


ふむ訪問理由は分かったが、ギルマス本人が直接訪問とは、、ギルドに俺たちを呼び出せば済む話では?


「そう構えるな。一つはお前達の生活ぶりを確認しに来たのも事実だ」


やはりか、ダンジョン情報収集でギルマス本人が直接来る筈がないからな。

私の動向が監視対象かな? 単なる野良異邦人を大層な事だ…。


「ギルマスの下には優秀な監視員が何人もいらっしゃるのでは?わざわざ私ごとき者の為に忙しいお時間を割く必要などないでしょう」


「フフ 言いよるな。まぁこれも俺の仕事の一部として理解してくれ」




妻達を全員集合と集め。ギルマスの疑問点に答えていく。


「フーッ すると攻略にはかなりの時間を要すると?」


「推測だが上級ダンジョンと認定しても良いかと」


マーラ達は互いに頷く。もし今回の調査で正式に上級と認定されれば首都近くにあるダンジョンに続いてこの国では2つ目の上級ダンジョンとなる。


「当初確認された安全エリアの不安定さは単なる一過性の問題と考えても良いのか?」


「それに関しては何とも言えん。確認の為の時間が必要だ」


ギルマスはそれを聞くとしばし考えを纏めているようだ。


「ユウゾー お前はこのダンジョンをどう見る?我等と違い()()()から見た感想を聞きたい」


「…おちよくられているかな?」


はい???  全員が何を言い出すのかとユウゾーに注目した。


「言葉を変えるなら、ある意思のもと冒険者に注意喚起を与えているとも感じられる…」


層の浅い階ではこれからの探索に甘い考えを持たず気を引き締めろ とのアプローチであり、実際に10階層を過ぎると魔物の強さも変わってくる

15階層からのダンジョンは確かに中級レベルに変化していった。

その段階では通常の冒険者を守る結界に戻ったのだ。


「…ある意思のもとにか?」


ふーむ とギルマスは少し考え込み、話しを続けた。


「正直言うと私はダンジョンにおける理不尽さは冒険者時代から感じていた。随分痛い目にも会ってきたからな。それが注意喚起とはとらえもしなかったが…。だが落ち着いて今考えればその節目には何か変わった事があったのも事実だったな」


それが意思の元により発生するかを認定するのは現状況では不可能な事だ。


「次回探索時には首都からの腕利き冒険者達数パーティにも来てもらう予定だ。ユウゾー達も参加してくれるよな?」


ユウゾーは暫し考え込んだが次回は参加しないと断わった。


「あまり目立ちたくないからな…」


今更何をとギルマスは言いかけたが、ユウゾーの出自や噂に聞く特殊な武器をふと思い出し、ユウゾーのこれからに置ける立場問題を冷静に判断し始めた。


「…この都市だけなら私の権限である程度潰しがきくが、話しが大きくなると俺より上のクラスが騒ぐ可能性が確かにあるな」


もしかの場合ユウゾー達の助けがどれだけ有り難いものになるかを計算していたギルマスだが、それ以上の騒ぎが起こる可能性も否定できないのだ。


ましてや次回は首都からそれなりの支援パーティが参加すれば、当然ユウゾー達の噂が一気に広がるだろうと判断した。


「残念だが色々問題発生も考えられるな…。当然開拓村のギルマスからもお叱りがあるな」


そう言って怖そうにわざと震えてみせた。

苦笑しながらユウゾーはそういう事になるかもしれないので、次回の参加は見送りたいと正式に断る事となった。





「良かったのかユウゾー 断わって」


ミーアが心配そうに覗き込んだ。

他の者達もそれぞれの仕事をこなしながら聞き耳だけ立てている。


「ああ これからの事を考えると少し目立つことは抑えなくてはな。第一これだけ可愛い奥さん達に心配事を増やす訳にはいくまい」


皆の顔が少し輝いたように見えたのは気のせいかな?

何も冒険稼業で一旗上げるつもりではない。ベースはあくまで明るい老後だからな。

しばしこの世界での常識を学んだら妻達と話して次のステップに進む必要がある。


これからは独り身とは違う。もしかして生まれてくる子や妻達の生活を第一に常に考えなければならない立場だ。


そんな状態でわざわざ波風を立てる必要など無いからな。

これからの数カ月はギルドのクエストなり中級ダンジョンでの活動に注力しよう。

ユウゾーは秋までの間の行動予定を考え始めた。




錬金術を展開して細かい細工を行うには基本レベルを上げるしか無い。

しかしユウゾーはスキルとしての錬金術を持っていない。

あくまで生活魔法の延長で覚えた錬金術だ。

当然飛躍的な技術向上は望めない。日々努力で少しづつ自分の望む技術を上げていくだけだ。


今日も作業場に籠もり、うんうん唸りながら根気よく作業を行う。

もう少しなんだが最後のツメが今一の有様だ。

ユウゾーが懸命に作り上げようとしているのは結婚指輪だ。


指輪自体はインゴットを購入して作製に成功している。

無論簡単には輪の形は最初から出来はしなかった。

何日も作っては潰しの繰り返しでようやく納得出来る品になったのだが、ユウゾーはこの指輪に付与をつけるべき藻掻いているのだ。


妻達に渡すためにそれぞれに合う付与魔法を指輪に付けようとしているのだ。

だが、上手くいかない。今日も虚しく時間は過ぎてゆく。


そんな苦しんでいるユウゾーにミーアが見かねて言葉をかけた。


「ユウゾー 何を作っているのか知らないが、少し気分転換をすればどうだ?皆も心配してるぞ」


度重なる失敗にとうとう作業机に上半身を被せてギブアップ寸前のユウゾーに声をかけた。


「あぁ ミーアか。そうだな本日はここまでか…」


ユウゾーは素直に作業の中止を行い、おやつの時間に皆が集まっている食堂に移動した。

温かいお茶を飲みながら何が不足で上手く付与が出来ないのか頭は休まる暇がない。


「ユウゾーかなり疲れているな。明日森に皆で狩りに出掛ける予定だが、お前も参加しろ。あんな場所で何日も手先仕事を続けると体が鈍るぞ」


言葉は粗いがそれなりに心配しているマーラが狩りに誘う。


「そうだな…体を動かして少し発散させた方がよいかな」


ならば前回活動期で中途半端に終わった西のダンジョン攻略はどうだと皆に尋ねる。

皆が賛成して決定になる。食料品も最近買い込んだから問題ないしな。

明日早く出発となる。皆が明日に向けて準備を始める。

ユウゾーはぼんやり今夜の食事メニューは何が良いか考え始めた。



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