59 いざ 新ダンジョン
翌朝早くからユウゾーは食事の準備をしながら考えをまとめていた。
ミーアを省く三人は確かに既成事実があり、彼女等が望むならそれに従い皆の面倒を見る事はある意味当然と感じていたが、ミーアは別だ。
ミューの言葉を信じない訳ではないが、一度意思の確認をせねばならぬと思う。
今はまだバタバタとしてその時期ではない。この探索が終了後にミーアとしっかり話し合いをせねば…。
ユウゾーは今だ自分に降り掛かった事項に解決策が分からずに戸惑っていた。
いつもと変わらぬ朝食時間が過ぎて、ダンジョン突入への準備を終え皆の顔が軽い緊張に包まれていた。
先頭はリーダー格の黎明が次に永幸・風神そしてユウゾー達が続く。
ユウゾーの後からギルド職員2名とポーター役が続いていく。
副マスターのダンカン氏が時折ユウゾーに話しかけてくる。
元冒険者らしくダンジョンにも慣れており、周りの警戒もそれとなく気配りながらの対応は流石だ。
1階・2階層は取り立てて騒ぐほどの強い魔物はおらず順調に進んでいた。
やがて5階層の安全エリアを見つけ昼食と休憩に入る。
ダンカン氏が安全エリアの構造確認に余念がない。
今後冒険者が訪れる事になるから安全に対して配慮が必要なのだろう。
やがて満足したのか昼食の席に着く。
各グループよりここまでの間気になる点の話し合いを持つが、此処までは特記に値するような事態は感じられないとの報告が上がる。
ドロップ品に関しても10体に一回程度で並のダンジョン程度だし、魔物の強さも下の上辺りが精々だろうと、そして各層の広さもさほど広くないようだ。
途中に宝箱が2つ程みつかったが、まだ階が浅いせいか其れなりの品しか出てこない。
予定通り地下10階を目指し野営の拠点にする。
午後からも順調に距離を稼ぎ予定の安全エリアに入るが、ダンカン氏がエリア内に少し疑問を感じたようだ。マーラに近づきこのエリア内で何か気になる点を尋ねている。
マーラが笑いながら よく気がついたな。ここの結界は少し弱い。今晩は念の為数名の夜番を出したほうがよいかも知れない。
それを聞いた各冒険者に軽い緊張感が漂ってきた。
エルフ族は精霊魔法に特化しているが、この様な結界の強弱の判断も意外と得意だ。
伊達にレベルがカンストしているのではないと言う事になる。
寝込みを襲われるのが一番堪える。場合によっては翌日にも響くことになるからな。
マーラがユウゾーに向かい軽く目配せを行った。それを見てユウゾーは俺の出番と判断してエリアの出入り口に歩み始めた。
皆が何事と注目する中魔法袋より大量の木材、いや丸太の柵が出現し簡単には侵入出来ないように組み立てた。
皆が呆気にとられている間に設置が終わり、都市で買い求めた中級用の魔物除けを辺りにばら撒くと何食わぬ顔で戻ってきた。
それを見てニーナが念の為夜番は2名でよいと思うぞ と提案する。
他の事情を知らぬ冒険者達がカクカクと頭を頷いて同意する。
ユウゾー達の仲間と風神のメンバー達は苦笑いで見守っていた。
今夜は生肉の良いのが有るからステーキだとユウゾーはメンバーに伝え、辺りに香辛料の香りが強烈に漂い他の者達より羨望の目が届いていたがユウゾー達はすべて無視して食事に夢中になっていた。
食事後しばらくして恒例のお菓子タイムでお茶をしている時にダンカン氏がユウゾー達の大型テントに訪問して来た。
ダンカン氏は大型テント内のユウゾー達の優雅なお茶会に呆気に取られながら、勧められたお菓子に夢中になっていた。
やがて再びテント内に目をやり、簡易ベットに近寄り興味深く観察し、えあーまっと なる物にかなりの興味を抱いたので予備の一つを貸し出す顛末になる。
その後テントの裏に隠すように設置されていた簡易トイレと浴室なる物に大きく目を広げ凝り固まってしまった。
「ま まるで宿屋暮らしの延長ですね」
今回遠征にあたり初日からユウゾー達の大型テントに興味があったが、予想以上の物で改めて認識の違いを感じていたようだ。
その後 えあーまっと を大事そうに脇に抱え自分の野営場所に帰っていく。
皆がその姿を見ながら 明日から毎晩来るかもしれない と苦笑いをしていた。
ダンカン氏一人なら食事の面倒を見てもよいが、流石に全員となると、ユウゾーはぼそっと呟く。
翌朝早めに目を覚ましたユウゾーは夜番の冒険者に挨拶を交わし、魔物の様子を確認してみた。
するとやはり夜中に何回か動きがあり、エリアの出入り口近くを彷徨く魔物が何回か確認されたようだ。
魔物は魔除けの袋と丸太の柵に躊躇し去っていった模様だと教えてくれた。
やはり安全エリア全体の防御が少し甘くなっている様だな…。
下の階に進む程心配は大きくなりそうだ。
夜番の担当者に礼を言い食事の準備に移る。
食事をしながら先程仕入れた魔物情報を皆に知らせる。
マーラとニーナが興味なさげに頷いている。
ミーアとミューも食事に夢中で生返事を返す。
この余裕我がパーティ員はなかなかのものです。でも油断は禁物だぞ。
出入り口の柵を回収してダンジョン二日目の開始となる。
11階層から魔物の強さも数もかなり変化して来た。
ユウゾーはそろそろこいつの出番かなと愛銃に手を置いた。
昨日まではそれ程の強さの魔物の出現はなく、すべて剣にて対応していたのだがこの階からこのダンジョンの本質が見れるかも知れない。
冒険者達が三方に別れそれぞれ魔物の相手をしている。
ユウゾー達は後方にいる6名の護衛に着いている。前から抜け出る魔物を容赦なく切り捨てる。
「いかん 後方から10体程の魔物が近寄ってくるぞ」
最後尾にいたポーター役の冒険者が大声で知らせる。
皆に前方を任せユウゾーが後方へ素早く移動し剣を左手に持ち替え、右手でサイコ銃を引き出し次から次にまものを殲滅していく。
あまりの手際に驚きの声が上がる。
その有様をダンカン氏が興味深く観察していた。
魔物の攻撃がようやく一息つき、今のうちにと12階層に移動開始した。
ふむ 定番のオークとゴブリンソルジャーが主の階層のようだ。
数はそれなりに居るが組織だった動きはなく、個別に襲ってくる内は大した事はない。
今まで誰も入った事がないダンジョンならそれなりの魔物の数も当然だろう。
冒険者達は次から次に魔物を倒し前に進んで行った。
13階層に突入する寸前にダンカン氏が先頭の黎明パーティ達に少し疲れが見えているのを気づく。
ダンカン氏からの指令が飛び、疲れの見えた黎明を下げて代わりに元気なユウゾー達が全面に出ていく。
「横一列でいくよ。」
真ん中にユウゾー、その両脇にミーアとミューが並び両サイドにニーナとマーラが布陣して全員が間隔を広げて横一列になり魔物を迎え撃つ。
完全に各自個人戦の展開に他の冒険者達もどの様な戦い方をするのか興味深く見つめた。
「よし 殲滅開始」
ユウゾーの声が響き、向かってくる20体程の魔物に向けて5丁の銃から絶え間ない攻撃が開始されたちまち魔物達は地に伏せ光の渦に包まれた。
ユウゾー達は油断なく近づき魔石回収に移る。
あっと言う間の殲滅撃に絶句する他の冒険者達だが、唯一雷神のパーティがその殲滅戦を当然の如く見つめていた。
彼女等は25階層でのダンジョン活動期において、ユウゾー達の圧等的な殲滅戦を知っているのだ。正に鬼神のような強さで魔物を絶滅に追いやった再現の一部を改めて見ていた。
その後も向う所敵無しでの働きぶりで15階層の安全地帯に全員無事に到着する。
エリアに入ると同時にマーラが ここも弱い と呟いた。
その声に反応してユウゾーは全員が入室すると、丸太の柵を配置して魔物除けの袋を大量に設置した。
他の冒険者が疲れから一休みしている間にユウゾー達は野営の準備に掛かっている。
その後土魔法にて作成したテーブルセットにてお菓子とお茶の時間に移っていく。
ダンカン氏が笑いながら近寄りお菓子とお茶の接待を受けている。
「それにしても見事な撃退戦でした。感銘しました」
お茶を飲みながらダンカン氏は感想を述べた。
それに答えたのはマーラだった。ただその口端からお菓子の欠片が溢れたのを見てユウゾーは顔を顰めた。
「ダンジョンでの活動期に比べれば大した事ではない」
「いやいや 正に噂以上の活躍ぶりでした。ほとほと感銘しました」
繰り返しユウゾー達を褒める言葉におすまし顔のマーラの耳が、ピクピク反応しているのを見逃さないユウゾーであった。
静かにダンジョン内の時間が過ぎていく。




