45 いざ オレオン都市
「なる程 ギルマスにそんな過去があったのか」
だがそれはそれである。迷い人でも龍造祖父のようにエルフの村に貢献した者もいれば、ケンイチのように禍を持ってくる者もいると言うだけの話だ。
エルフも同様な事が言えるだろう。善人の多いエルフと言えども全く過去に罪人がいなかったとは言わせない。良い者もいれば悪い者もいるそれだけの事だ。
過去に同情はすれど過去に縛られて目先が曇るのもいかがなものか。
只この事がギルマスがシャルル様に恩義を感じ、何故あのような過剰反応に出たのか理解出来た気がしたのは収獲だ。
「まぁこの話しはここまでにしよう。それより例の袋はそれなりに捌けたぞ」
奥に一旦赴き金貨を5枚テーブルに置く。
思ったより高く売れ差額の不足分を差し出す。
「ほう 流石がやり手だな」
ユウゾーは書類にサインをしてアリアに渡す。
「で 手土産は?」
苦笑いしながらユウゾーは袋2枚をテーブルに置いた。
アリアの鑑定眼が製品をじっくり観察するとまた一旦奥に入り小袋に入った金貨を差し出した。
金貨70枚。確かに。受領書にサインして、今回は暫定契約はしない、しっかり稼いでくれとアリアに言い店から出ようとしたが、ふと魔道具の事で思い出しアリアに尋ねた。
「選別の魔道具かい?」
暫し考え込み 特注品で作成出来るが日数がかかるとの事。
秋口まで出来れば良いと答えると 金貨20枚請求される。
その手に金貨を置き 宜しくと店を出る。
表通りに出たらギルドに一旦寄り金貨50枚を入金した。
さて 次は買い出しだな。
後から着いて来た二人は深い溜息をつく。
なにごと と振り返るとミューが呆れ顔で 何かユウゾーと居ると金銭感覚がズレまくる とミーアと顔を見合わせて苦笑いをしていた。
確かに言われればそうかも、ほんの数分の交渉で金貨70枚、7千万ゼニーを手に入れたのだからな。
魔道具も手に入りそうだ。出来上がれば子供達の仕事も楽になるだろう。
子供達の笑顔が一番だなとユウゾーは歩きながら考えていた。
冒険者相手の屋台がこの村には5店あるが、丁度朝のピークも終わり暇そうな雰囲気が漂っている。
「おっ兄さん 久しぶりだが、買っていかないか?」
前回大人買いをした事で顔が知れてしまった。ユウゾーはゆっくり頷くと、一時間の間で出来るだけの品を全部買うと提言する。
途端に各店から歓喜の大声が上がり、各店から勢い良く焼く煙が立ち上る。
近くの簡易椅子に3人が座り込む。
後は出来る品を待てば良い。ミーアとミューはお喋りタイムに入る。
次から次に各店から料理が運ばれて、それを魔法袋にどんどん収めていく。
やがて約束の時間になり各屋台に料金を支払い食堂方面に足を向ける。
「時間的にお昼だし 寄っていこう」
「おっ 来た来た」
食堂の奥に知った顔ぶれが並んで座っていた。
残念エルフの二人とミューの仲間三人で、昼間からエールを片手に出迎えかい?
「此処で待つのが一番会える可能性が高いからな」
ミューの仲間のカリナが軽く片目を閉じる。
計8人にて騒がしい食事会となる。皆よく食べ飲む、感心するよ。
「話しは聞いている。ミューが離れるのは寂しいが、秋までの辛抱だ。その間ミューを頼むぞ」
カリナがミューの肩に片手をかけユウゾーに笑いかける。
しばし食事を楽しんだがまだ買い出しの途中だ。
テーブルに銀貨5枚を置きゆっくり飲んでくれと食堂から離れる。
少しお腹が窮屈だからお茶でも飲んでから動くとするか。
そう言えば喫茶店のお菓子関連が結構美味しかったと思い出す。
店に入りお茶とお菓子を注文する。
無論お菓子は女性用だユウゾーはお茶だけで十分だから。
店主に店の営業に邪魔にならない程度に各種のお菓子を有るだけ買えるか交渉する。
喜んである品を全部運んできた。
結構有るけど商売大丈夫かな? 此方は美味しいお菓子が手に入るから良いけど。
ミーアとミューがにこにこ眺めているな。
その後野菜関連と調味料の補充、日用品の補充最後にまた各種お菓子の補充を終えて宿屋へ。
明日朝一番で馬車の発着場でミューと待ち合わせる。
最後の荷物整理が待っているとの事だ。
これでのんびりかな?
そうだ各種ポーション作りもしておこう。ユウゾーは忙しい。
翌朝 出発前に一人当り中級ポーション2本 下級ポーション10本 マナポーション5本 他を配布して袋に収めさせた。
ミーアがこれだけのポーション類を持つのは初めてだと喜んだ。
他の二人は当たり前の様に受け取る。…足りなくなってももうあげないぞ。
馬車場にはミューが仲間達と待っていた。早いな、、、
皆の馬車代を支払い、ミューに最終確認の忘れ物がないか尋ねる。
昨夜数回確認したから問題ないとの返事。
まぁ大切な物以外なら買い足しできるしな。
時間となり仲間の見送りに手を振りオレオン都市への移動開始だ。
5日間の馬車旅行となる。お客はユウゾー達以外は4名いる。商人風が2名 親子が2名 計9名
護衛役に3名だな。3名はミューの知り合いらしく先程から何か話し込んでいた。
ミューがこの数回ゴブリンが出没したとの事だ。おっ情報収集かな。
おそらく森の中を通過するあの場所あたりかな?
まだ数日先の場所なのだが警戒が必要か。
当初3日間は魔物の気配もなく順調に進む。4日目に問題の地点に差し掛かり護衛役が一層警戒の体勢に入る。
マーラが突然 いるぞ…10体は間違えなく気配がすると お菓子を食べながら呟く。
…少し緊張感が足らなくない?
隣で半分口を開けて寝ていたニーナがむくっと起きてサイコガンに手をかける。
皆も同時に反撃体勢に移る。
突然前方が騒がしくなり馬車が止まる。護衛役が降りて前方に駆け出した。
ゴブリン特有の声が辺りに響いてきた。
子供が怖がり母にすがりついた。
前方で戦いの剣戟の音が鳴り始める。
「ふむ 手伝いに行くか」
マーラとニーナがゆっくり立ち上がり馬車から降りた。ミューが前方の業者席に移動してもしかに備えた。
ユウゾーとミーアが後部からの襲撃に備え場所を移動する。
前方の騒動がおさまりつつある、どうやらもう少しで鎮圧かな?
すると後方より数匹のゴブリンが森の中から飛び出し馬車へ走り寄ってくる。
ミーアに目配せして彼女に対応を任せる。
軽い衝撃音が響き3体のゴブリンはミーアのサイコガンの餌食となった。
うん 上手くなったものだ。もうユウゾーレベルまで追いついた模様だ。
いつの間にか前方の騒ぎも治まり、マーラとニーナが現れ、
「おっ此方も3体出たか ミーアか?」
ミーアが対応したのか聞いたのだ。ミーアが頷くと、その頭に軽く手をあててよしよしをする。警備役が魔石の回収を終えると、馬車は特に何もなかったかのように走り出した。
ゴブリンの死体は放置しても森の魔物が後から綺麗にしてくれるからな。
子供がまだ少し怖がっていたので美味しいお菓子を差し出し、心配はないと安心させる。
その後はコボルト数匹の襲撃が1回あっただけで無事オレオン都市に到着した。




