39 いざ 歩兵銃
村に帰り着くと門番から、シャルル様が目を覚ましたようだと報告があった。
ミーアを伴いオサの家に急ぐ。
寝室に入るとシャロン様が枕元に座りにこやかに笑うと、此方においでと手招きをする。
シャルル様はまた寝ているようだが、枕元に食べ残しの食器が置いてあるので、食事も取れるようになったのだと感じシャロン様に尋ねると、少しだけど美味しいと食べてくれた と嬉しそうに話した。
食欲が少しでもでれば体力回復が早まるからな。
それは良い兆候だ。シャロン様も一安心かな。
「もう少し様子を見ないと…それより二人で何方まで?」
午前中は銃の鍛錬で、午後から2名の護衛と共に森で実技訓練と説明。
「魔法銃の?」
いえいえ 実はとユウゾーが持つサイコガンの実物を手に取り説明する。
「ええ? 神様からの贈り物なのでしょうか?」
詳細に説明するとヘパフラスコ神様の名前が出てくる事もあり、ある程度の所で納得してもらうしかなかった。多々疑問があったようだが、曖昧に誤魔化すのが一番。
「そうそう 銃といえば武器庫の奥に父が異世界から持ってきた物があるのですが、興味があれば使って下さいな。武器庫の肥やしにしても仕方有りませんし、正直どの様に使うのか私も不明なんです」
異世界から持ってきた武器?
あっ、話に聞いた歩兵銃かな? 少し興味があるな…。
その後少し話し込んで、今日狩りをした魔物の解体の為食料庫の担当者に会いに出かける。
マーラ達が魔法袋で回収して解体場に運んでいたので、もう何人ものエルフが解体作業に借り出されていた。 皆楽しそうにお喋りしながら解体作業を続けている。
これ以上の人手はかえって邪魔になりそうなので、隣の建物が武器庫なのでそちらに顔を出してみた。
「お邪魔します。オサからの許可で武器を見せてもらいます」
ミーアは武器庫の警備兵に許可をとり、倉庫内に入っていった。
「確か奥の方といってましたから、一番奥にあるあの箱かな?」
埃まみれの細長い箱を引っ張り出し、部屋の手前まで運んできた。
かなり古い箱で力を込めるとボロボロ木の板が崩れだした。
そっと中の武器を取り出す。
元々は油に浸した布で品物を包んでいたが、長い年月が布自体腐食してボロ雑巾並の役割しかない。
布を引けばポロポロ細かく千切れだし、苦労してようやく中の武器とご対面です。
旧日本軍の歩兵銃に間違えない。ただ正式な形式が分からない。
年代から三〇式か有名な三八式銃と思われるが、ユウゾーには判断の基準が今一はっきりしない。
銃自体もかなりの錆に侵されている。完全分解して錆とりから始めなければ危なくて使う事は無理だろう。暴発でもしたら命に関わるし。
うん。 弾はどこだ?
箱の中を探すと数発の弾が布に包まれていた。これも弾の薬莢部分が剥げて、布がこびり付いていた。
銃は手入れが命だ。どうするか暫し検討だな。
元通りにするにはかなりの時間を要する。
そのまま魔法袋に回収して倉庫から一旦引き上げる。
そろそろ夕食の時間が近い。村から見える夕焼け空が綺麗だ。暫しミーアと共に赤く染まりだした村を眺めゆったりとオサの家に歩き出す二人だった。
夜半ユウゾーは目の前に祖父の遺品でもある歩兵銃を前に考えていた。
分解するにもそのやり方がどうにも分からない。
銃自体は分解清掃が常だから、意外と簡単に分解出来ると聞いた事があるが、1回でもその現場にいればまだしも、ぶっつけ本番は推奨出来ない。
まして錆だらけの銃なら常では簡単に外れる部品も外れない可能性が高いし、万一壊したらこの世界では二度と使うことは無理だろう。
リスクが高すぎる。ユウゾーは銃を前にして何回目かのうなり声を上げた。
スキル劣化版創造魔法で何とかならいか、それに賭けてみる。
劣化版はあまり高度の製造は向いていない。
出来たとしてもかなりのMP消費が待っている。今のユウゾーのレベルでは無理と思われる。
只それは無から有を作成する場合で、幸か不幸か現物がここにある。
この部材を利用すればそれ程の消費はない と判断したのだ。
問題はこの錆まで再現されたら意味が無いので、それを防ぐ方法が分からないのだ。
新品状態で再現されるか、錆仕様になるか勝負をするしか無いと腹を括る。
本来レベルがあがるのを待ってから対応すればよいのだが、ユウゾーはこの錆だらけの遺品を何とか早く元の状態に復元させたかったのだ。
何となく祖父が喜ぶ顔が目に浮かぶ。理屈ではなく感情の問題だ。
やるか!気合を入れ直し歩兵銃に両手を添える。
最悪MPがたりなければErrで弾かれるだけだ。
現在レベル7にて当初のMP値500から850まで上がっている。
なんとかこれでうまく行ってくれと祈りつつ劣化版創造魔法を発動する。
いけ!錆無しの新品歩兵銃に生まれ変われ!!
うおぅ 光の洪水とMPの急激な減少に意識がもっていかれそうになる。
頑張れ ユウゾー! ! 自分で自分を励ましながら頑張っている。
あかん… 意識が… もう少しだけ頑張れ……。
突然真っ暗闇の視界が現れユウゾーは倒れ込んだ、、、
意識が戻りかけたその手で予め用意してあったマナポーションを探す。
確かここに置いてあるはず、まだ視力も半分闇の状態で必死に品を求めて手があちこちに動いている。
あった。この瓶の感触はマナ… あれ なくなった? 確かにあの感触は瓶だった…
それが何か柔らかい感触に変わったぞ?!
「ユウゾー 何してるんだ?」
はい? どちら様? まだ意識がはっきりしない。
誰かの顔がぼやけて・・・あれ この顔は?
「ミーアか?!」
「おっと 急に大声出されると驚くよ」
「す すまん。 …いや何故ここにいる?」
「隣の部屋で寝ていたのだが、急にユウゾーの大声と共に何かが倒れたような音がしたので、慌てて駆け寄ってみれば必死に何かを探しているユウゾーのその手が、この瓶らしき物を求めていたので渡そうとしたら手を握られたんだが」
はい? 手を握った? するとこの柔らかい感触は・・・
ちらりと 視線を手に移動する。
ゲッ。 マナポーションを握るミーアの手をしっかりと握りしめているユウゾーの手があった。
慌てて手を離し、ミーアからマナポーションを受け取ると飲み干す。
用意してあったもう一本も飲み干し、ようやく人心地ついた。
改めてお礼と非礼を詫びる。
どうやら意識がなくなる前に自分に掛け声を懸けていたのが無意識に大声を発したらしい。
大変ご迷惑を・・・あっ、銃は 銃はどうなった?
周りを見ると、あった、銃が新品同様に光っている銃が!
思わず奇声を上げ喜ぶユウゾーに、ミーアが冷静にたしなめる姿があった。
さらに離れた部屋ではミーアの母であるミランダが夜中に二人の声が耳に入り、もしやと思い全身を耳にしてミーアを応援している姿があった。




