37 いざ ミーア
そうか、ミランダさんが居なくなってから改めて問うのは、何か聞かれたくない話しが有ると言う事かな?
先程までと違う雰囲気に包まれているシャロンさんにユウゾーは少し緊張した面持ちで向かい合った。
「お尋ねの件は、どの様な事でしょうか?」
「…私の推測なのですが、ユウゾーさんの加護の内容は特定の神の名ではなく、何か言葉文字で記載されているのではないかと?」
「…正解です。隠しても仕方ない事ですから、読み上げる前に何故そう思ったのか教えて頂けますか」
「…私の父がそうだと母から聞いた事を思い出したのです」
龍造爺さんがそうだと? でも何故ミランダさんを退室させてから問う必要があるのかな?
何か特殊な加護で自分の娘を退室させても隠すことかな?
そんなユウゾーの思いを察したようにシャロンさんは言葉を続けた。
「娘にあまり期待させてはいけませんので…」
そうにこやかに笑うと悪戯っぽく首をすぼめた。
「? 私の加護は (改)自他共栄 と書かれています。」
「(カイ)ジタキョウエイ… ですか?」
「…ご存知ないですか?」
シャロンさんは父の加護の内容までは母に聞いてはいないとの事だ。
何度か母に父の加護の件で問うたが母は微笑んでいるだけで、決して内容までは教えてくれなかったと言う。
只、今までのユウゾーの体験談と母が父から授かった事に共通点が有ると言う。
それを確認する為にマーラ等を呼び出していると答えた。
全ては彼女等の確認待ちとなる…そんな状況だ。
「…先程、ミランダさんに期待させてはいけないとおっしゃっていましたが?」
「…あぁ 確かに。でも深い意味ではないんですよ。そうですね、この結果次第では直接本人から聞いてみて下さいな」
…解せん 何かあのミランダさんは思い悩んでいる事があるような…。
その後は他愛ない話で暫し時間を過ごしていると、何人かの気配が此方に向かって来る…。
「「「失礼しまーす。」」」
何も知らずに元気に馬鹿リーダー達が入ってきた。知らんぞー。
オサの前に集合したエルフ達はそれはそれは気の毒になるほど責めぬかれていた。
時折涙目でユウゾーを横目で見て、私達を売ったな という目線を送るが、知らんがな!
君たちのその行動力は是非正しい方に向けて欲しい。
流石に見かねてミランダさんが仲裁に入りようやくシャロンさんの怒りが収まりつつある。
続けてシャロンさんは 少しあなた達を鑑定します と有無を言わさず鑑定に移った。
キョトンとするエルフ達を尻目にシャロンさんの目が金色に変わった。
やはり……確かにそう呟くシャロンの声がユウゾーにも聞こえた。
鑑定が終わると深い溜息と共にエルフ達を退室させる。
無論今日の鑑定の事は秘密にするようオサからの厳命と共に…。
??状態のエルフ達だったが、説教からの開放に喜びの方が強かったようだ。
「どうでした? お母様」
ミランダさんがエルフ達が退室してから、待ちわびたように尋ねた。
「…不味いですね。全員限界値が上がっていました。特にマーラは2つ。他の者は1つです」
「まぁ!! 本当に限界値は上がるんですね。でも何故なんです?!」
何が起きた?! 何故彼女達も? いや原因はアレか?! マーラが2で他の者が1か・・・
何でだ? 何故差がでる? 何が違った…。 本当に原因はアレか??
「原因はおそらく…」
シャロンさんはユウゾーを凝視する、ミランダさんもその視線に気がつきユウゾーに‥。
いやいや待って下さい。差が出るなんて可怪しい、別の・・・。
「…結論は母シャルルの体力が回復後に尋ねて見るまでは‥。でも早急に手は打たないと、あの者達が異変に気づく前に何とかしなければ…」
全員がカンストしているので、現状自分たちのレベル等には無頓着が救いかな。
確かに限界値が上がる可能性が判明すれば、それこそ村中のエルフが騒ぎ始める。
「最悪は契約魔法のお世話に……」
おっと、何やらおどろおどろしい言葉が…。
その後の対応は一晩よく考えますとシャロンさんは一旦棚上げとなる。
ユウゾーも旅の疲れを癒やす為に別室に案内された。
しばし部屋で寛いでいたが、まだ夕方には早いしエルフの村を探索してみるかと部屋から出ると目の前に背の高い兵士が陣どっていた。
監視… いや護衛だな… そう思いたい。
あれこの娘は 確か…。先方もユウゾーに気づいたみたいで声をかけられた。
「補佐ミランダの娘でミーティアと言う。ミーアと呼んでくれ。母の依頼でユウゾーがこの村にいる間は護衛に着く事になった。ヨロシクな」
そうだ昼間村に到着した時に門番をしていた娘だ。特徴のある子だから覚えている。
若い感じがするので、恐らく成人になってそんなに経っていないと思う。
それにその体、背はユウゾーより高い 190を超しているな、そして その…他のエルフと違い豊かな胸に少しだけ驚く。決して やましい目では見ていないよ…。
「ユウゾーだ、ヨロシク。補佐の娘さんなら血縁関係だな。気楽に接してくれ」
うん 此方こそ。と笑顔になった其の顔はなかなかの美人さんだな。
少し外を散策したいのだが、問題ないか?と尋ねると私が同行してれば何も問題ないと胸をはった。
いかん つい目が、マーラ等の胸に慣れていたもので…
何処に行きたい?
そうだな暫く銃に触っていないので射撃の出来る所をリクエスト。
エルフが弓の練習に使っている場所に案内され、一番端の木に手作りの標的を張り銃を構える。
距離は30メートル位かな。続けて5発。片手で3発。片膝ついて3発とこなし、新しい標的と交換。
うん 標的のほぼ真ん中に全弾揃い始めたな。
大きなミスも無いし自分ながら進歩したものだと満足。
熱心に射撃の様子を見ていたミーアが ぼそっと、
いいな 私も遠距離攻撃が出来たら…
うん? エルフなら弓がお得意なのでは。弓が苦手なエルフもいるのかな?
するとミーアが そうではないが実際子供時代は得意だったんだが…ともじもじしながら答える。
? 怪我でもして弓が引けなくなったのかな…。
いや その… この胸がいつからか邪魔になってきて と下を向いた。
あっ! アマゾネスの神話。
昔アマゾネスの女達は弓を引くのに邪魔な乳房の片側を切り落として弓を引いたとの言い伝えが…
そうか…豊かな胸は弓を引くには うーん まてよ…。
「ミーアこの銃を持ってみて。そして鑑定をしたいけどいいかな?」
魔法袋からダンジョンで手に入れた初級の魔法書を出した。
怪訝そうな顔をしながら頷いて銃を受け取る。
「鑑定!」
薄い光がミーアを包み数字が表れた。その中の一つ思念力の項目に注目する。
普段は思念力の項目は表れないのだが、ヘパフラスコ様の作った銃に触る者には特別に項目が増えるのだ。その数字が低い者はあまりサイコガンの効用が役に立たない。
ミーアは、、、おっ135あるな。個人レベルも16/33 少し限界値が低いようだが、個人レベルはこれからまだ上がるから充分弓代わりに銃が使えそうだ。
そのようにミーアに伝え銃を覚えてみるかと尋ねる。
弓の代わりになるなら是非覚えたいと目を輝かせてお願いされる。
もしかして弓が使えない事で引け目を感じていたのかな?
ならばと銃を一旦返してもらいスキル劣化複写で銃を作成!
うおぅ 一気にMPが 700近く無くなる。慌ててマナポーションのお世話だ。
ふぅ 少し気分が悪いがそのうち治るだろう…
ミーアに出来たばかりの新品銃を、大事に使えと渡す。
嬉しそうに頷くミーアは瞳が輝いていた。 良かったな…。
早速使用上の注意を徹底する。万一自分は当然仲間に誤射は禁物だしな。
しつこい程の注意徹底で丁度いいのだ。
ミーアは頭がいいのか難なく次から次に新しい知識を覚えこんでいった。
せっさくだから何発か打たせ感触を掴んでもらう。
狙った的に最初の数発は微妙な命中だったが、どんどん自分で修正をかけ、次第に中心に集まってくる。これには驚いた。ユウゾーが始めたときより数段上達が早い…。何にでも天才はいるもんだな。
後でミーアに尋ねると、最初の数発は確かにとまどったが、的を狙うコツは弓の応用でいいと分かってからはよく当たるようになったと笑っていた。
そうか 元々は弓が得意だったという事だから上達が早いのも当然か。
本日はここまでで明日から本格的に教えていこう。
魔法袋から一番小容量の魔法袋を出し、これに保管して置くように渡す。
目を見開いて驚いていたが、使えば良いと強く言うと嬉しそうに受け取り、腰に結びつけていた。
さてそろそろ夕食の時間だろう、帰ろうな。
当人達はまだ気づいていないが、後年ユウゾーの影にミーアありとまで呼ばれる程の関係は今日この日から始まった…。




