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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
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32 いざ エルフ村


 ......リュウゾウ....急いで....私にはもう時間がない....急いで..


 宿にて目覚めの時間だ、ユウゾーはここ数日、夢?いや夜中に誰かから話しかけられている気がして朝何かもやもやした気分が暫く続いていた。


 隣では気持ち良さそうに寝ているラ-サがいる。鼻をつまんで起こす。

 優しくないとかぶつぶつと文句を言う彼女の手を引いて食堂に向う。


 全員揃って食事をとりながら本日の行動予定の確認を行う。

 最終の買い物が少し残っているので、それが済み次第エルフの村に向う。


 通常行程4日だが、ライラの大事をとり5日と計算して進む。

 本人は問題ないと言うが、万一を備えて無理は禁物だ。

 

 それぞれ支度を終えて1階に集合とする。


 


 村を出る時見知りの門番がいたので、ミューの現状を確認すると仲間と遠征でしばし帰ってこない事が判明する。元気なら良い。手に硬貨を握らせてミューを見かけたらエルフ村に用があるから、終わったらまた開拓村に寄るという伝言をお願いした。

 門番に見送られ進路を森の北西にとる。


 これより先はユウゾーにとって初めての森になる。

 住まいのある洞窟は開拓村から見て、正反対に位置する南東の方向になる。


 普段は森の中をショートカットぎみにエルフ達は進むが、冒険者が踏み鳴らして出来た道を今回は進んでいく、此方のほうが多少見通しも良く魔物の襲撃もいち早く発見出来るからだ。

 その分少し遠回りなのは仕方ない。

 すべてライラの安全を第一にだ。


 一日目は冒険者達が作った野営広場に泊まることになる。

 大形テント 簡易トイレ それに風呂場の設置 防御柵等ユウゾーは忙しい。


 出来上がった各施設をライラ達は初めてみる。

 それぞれを見て回り野営が楽だと感心される。

 そこのエルフ、なにを得意そうに頷いている! せめて手伝え。


 一度に全員が風呂は無理なので、半分はユウゾーの監視の元料理作り。

 お茶をのんびり飲んでいる君! 早く野菜を切れ。


 お陽様が落ちるまでに食事の準備が終えた。

 これだけ人数がいると楽しい食事時間になるね。


 食器洗いが終わると自由時間、皆好きに寛いでいる。

 ライラだけテント内でのんびり簡易ベットに横になっている。

 他は....皆食後のお菓子狙いかな。もう少し待ちなさい。


 どうしたニーア? 今晩は私だと..了解。村に着けば落ち着くだろう....


 




 ......リュウゾウ...急いで...急いで..お願い....


 夢の中の呼びかけはユウゾー達が村に到着するまで毎夜続いた。


 最終日5日目途中で森の中に進路を変え約半日で第3エルフ村が見えてきた。

 突然切り開かれた丘の上に村はあった。

 村全体は大木の柵で覆われているが、周りは農地もあり、人族の村とさほど変わりはないように見える。

 

 人口を聞いてみると村人は百名弱いるそうだ。

 門番は1名おり、その者が遠くの一行を見つけ手を振っている。


 「姉さん達、おかえりなさーい!」


 段々村の全容が見え始めた。それにその門番も..あれ?

 ユウゾーは少し違和感を抱いた。

 いや正確には会ったこともないエルフの門番に親近感?いや変な意味の親しさではなく、前から知っているような...そんな気持ちが渦の様に巻き上げてきたのだ。


 向こうはどうやら、一行の中に男らしき者を確認したのか軽い警戒心が見てとれる..。

 門の中の者と何やら連絡を取り合っているようだ。

 門に到着する頃には数人のエルフの戦士と思われる者まで現れた。


 「何だか 少し騒がしいな?」


 マーラとニーナは自分の村が何か通常の状態ではないと感じた。

 二人は先に進み警備隊と何があったのか話し合い始めた。

 何だか険しい顔をしているな.....


ライラを庇いながらゆっくりと村の門に到着すると、マーラとニーナの二人が戻ってきて状況報告をしてくれた。


シャルル様が今朝早く危篤状態になり、一時的に大騒ぎになったが、つい先程ある言葉を呟いて目を覚まされたとの事だ。

 それでだ ユウゾー。 マーラがユウゾーに向き合い.....眉をひそめながら

 

 「ユウゾーお前の名はユウゾーで間違いないか?最悪偽名の可能性は?」


 「はい??」


 まさか偽名を疑われるとは....。残念ながら生まれて今までこの名前で通している。

 名前に嘘偽りはないと告げると何度もマーラは頷く。


 「すまんユウゾー。決してお前を疑っての話ではない。もう一つだけ質問させてくれ。我等にとって大事な話しなのだ。 リュウゾウ....アサノ リュウゾウと言う名に覚えはないか?」


 「なんと!」


 今度はユウゾーが驚いた。

 覚えがあると言う意味ではなく、この世界でユウゾーは名字を名乗った記憶がない。

 それが突然に名字の 浅野 の名を告げられたのだ。

 どう答えてよいか一瞬の間が空いた。

 

 それがマーラには肯定と感じられたのだろう。

 マーラが喜び勇んでユウゾーに確認してきた。


 「知っているのだな! アサノ リュウゾウ と言う名を!!」


 「お 落ち着けマーラ。そうではない、違う意味で驚いたのだ」


 今にも抱きつきそうな勢いのマーラにユウゾーは思わず一歩引いて、その理由を話しだした。

 まず アサノと言う名字は俺の世界では決して珍しい名ではなく、どれほどの人が アサノを名乗っているか調べるのも億劫(おっくう)な有様だ。


それを頭に入れてもらい答えると、確かに俺の名字は 浅野に間違えはない。

ただ リュウゾウ 龍造、 隆蔵、.....今の日本人の感覚ではまず名として付けきれないであろう。絶対に無いとはいえぬが....そう そんな名は、そうだな俺の祖父あたりなら可能性があるか?


 当時の日本は極端な話し、10年毎に戦争が起きた年代だ。

 無論日本だけでなく、世界が不安定な社会事情に包まれていた、そんな時代なら有りか。

 当時の日本はそんな社会事情に合わせて男も女も強そうな名を付けたと教えられた。


無論子の生存率が今よりかなり低い時代だし、続く戦争等で子供等が生き延びて欲しいと言う親心も隠されていたと聞いている。

 

 ならばそんな時代の人が此方に迷い込んだ?

 ふむ それが一番可能性があるが....


 リュウゾウね.....。 あれ? 俺の祖父なんて言う名だった。

 唐突に浮かんできた疑問に思わず身震いが出たユウゾーだ。


 ユウゾーは祖父を知らない。祖父は時の戦争で亡くなっている。

 祖父の写真も空襲で全て消失している。関係資料も同様だ。


 辛うじて郷里に墓があるが、墓石に刻まれた故人の名を詳しく覚えてはいない。

 先祖の一人として拝んではいても、名を記憶してまではいない。

 いや、墓石に書かれた名は何度も見ているのに....。


 しまった! この歳にして恥じる。

 思い出せ! 墓石に何と書いてあった?!


 突然にウンウン唸り始めたユウゾーに、周りのエルフ達は....

 ライラを始め同行エルフ達は番所でのんびりしているみたいだね....。

 いやいや 別に不満ではありません。特にライラさんは妊婦さんだしね。


 周りのエルフ達はマーラを始め門番と護衛エルフは、ユウゾーの一挙手を注意深く見守っていた。

 

 ここでひとつ亡き父の言葉を思い出す。

 父生前の折にこの浅野家は少し変わった血筋が代々伝わっている。

 遡れば奈良時代の いざなみ? いざなぎ?流の陰陽師にたどり着くと。


 先の大東亜戦争で資料焼失したが、代々名の最後に 造 をつけるが慣わしになる。

 だから父の名が 徹造 私が 勇造か....納得だな。

 うん? そうなると リュウゾウ は龍造があてはまる?

 いや 待て。いつからリュウゾウが俺の祖父と決め付けたのだ?


 墓石で頼りない記憶の中から思い出した事があった。

 墓石に先祖の名を刻んだ文字は男はまさに 造 の文字が最後に書かれていた事を。

 それに結構違和感が合った若い頃の記憶から、すっかり抜け落ちていたのだ。



それが今正に唐突に辺りに光の渦が湧き、頭の中に先祖の顔と名が次々に浮かんでは消え、消えては浮かんできた。

 これは何だ? 俺の頭はどうなった? 混乱の局地に勇造はいた。

其の中に父徹造の顔が急に浮かびだす。

その顔はようやく思い出したかと、(からか)うような笑顔であった。

 

勇造はその多大な情報に押しつぶされながら、ゆっくりと大地に倒れ込んでいた。

 


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