27 いざ 求婚?
ユウゾーの叫びを怪訝そうに柳眉をひそめたエルフ達に、慌てて風呂に入りに行くユウゾーであるが、中々胸の動機が止まらない自分に呆れ返っていた。
湯船に浸かり全身の血管が拡張され、ようやく心地よい気分に慕っていると突然に、
「「「ねぇ ユウゾー。お腹空いたんだけど。早く出て」」」
いきなりカーテンが開かれエルフ達の顔が現れた。
反射的に驚いて立ち上がろうとして、湯船の中で足を滑らせた…
うおっぷ ぶくぶく…
ユウゾーは思い切り湯船の中で溺れかけた。
残念エルフ達は大声でただ笑いこけるだけだった。
「「「ごめんユウゾー。もう許して…」」」
涙目のエルフ達に散々説教をしたユウゾーはそれでも気が済まず、今晩の夕食は罰として3人で作らせた結果散々な料理が出来上がり、それを余すこと無く全てエルフ達に食べさせた。
基本この3人は調味料の使い方を知らなすぎた。
ユウゾーの手料理作りを見ている筈だが、すべて感が頼りの大雑把な配合。さらに出来た料理は生に近い物から焼きすぎの物まで呆れ返る出来上がり。
流石のエルフ達も途中で食事をやめると、ユウゾーに再度作り直しを依頼してきた。その結果ユウゾーの怒りが爆発した。なにがなんでも全ての料理を食べなければ、明日からの食事作りはそれぞれの個人で作らせると宣言したのだ。
古いユウゾーには食材のムダは許せなかった。
泣き泣きエルフ達は全ての料理を食べ終わり、あまりの味に3人共悶絶中。
そんなエルフを横目にユウゾーはお茶を楽しんでいた。
元々食事量がそんなに多くないユウゾーは最低限の被害で済んだ。
口直しにお菓子を要求され、ユウゾーも少しやり過ぎたかなと反省し残り少ないお菓子を提供するとあっという間に平らげてしまった。
落ち着いたエルフ達に今までの回収した魔石量を確認すると、数えるのが怖いほどあるとそれは嬉しそうに答えた。ユウゾーの協力のお陰だから 分配に色を付けると申し込まれた。
ユウゾーの当初の目的はギルドの初級講座のクリアだから、左程興味はなかったが貰える物なら困る物でなし、有り難く頂く事にする。
その後明日の予定と雑談を少ししてから寝る準備にかかる。
セーフティエリアの出入り口2ヶ所に念の為防御柵と魔物除けをバラ巻き、テントの中に入ってからエルフに奪われた?魔法袋の補充の為複写にて3袋を作り魔法のランプを消して寝袋に入りこんだ。
それは夜中におきた。あまりの寝苦しさにユウゾーは目が覚めた。
そこには見知ったエルフの顔が間近にあった。
「…何をしている?」
「えっ? 約束通り色を払いにきたんだけど?」
何の事を言っているのか判らずユウゾーはポカンとしていたが、マーラは先程ユウゾーも了解したではないかと抱きついてきた。
「まて!落ち着け。……色ってまさかそっちの意味か?」
「他に何の意味があるんだ? さぁ始めようか?」
「は 離せ! 勘違いだ。話せばわかる。くっ 馬鹿力め!」
「ユウゾー。エルフは約束は必ず守るのだ」
単純な力と力の勝負は女性とは言え、カンストしているレベル41の前ではユウゾーはまったくの無力な状態であった…。
翌朝、朝食を作るユウゾーの顔は不機嫌だった。
それに反し一人のエルフは肌艶がつやつやに輝き、他の二人のエルフは羨ましそうにそのさまを見て3人で笑いながら語っていた。
時折エルフ達はユウゾーの方を向き、意味深な眼差しを向けてくる。
ユウゾーは非常に居たたまれない気持ちで口調荒く、
「出来たぞ。早く食べて出発するぞ!」
その様子を見てエルフ達は含み笑いを浮かべ食事に移る。
今後の予定は二通りの意見があった。
ユウゾーはエリアボスを倒して光の階段で地上に出る案を唱える。
それに反しエルフ達は歩いて地上に出る案を提案し、多数決で後者に决定。
つまり各階の残りの魔物の討伐をしながら更に魔石を回収するのが目的と判明。
それ程までして集めたい理由が有るものとユウゾーは理解する。
10階・9階と魔物の数はかなり減ったとは言え、それでも通常期のダンジョンより多い数を正に殲滅に近い勢いで、先頭に立つユウゾーはこなして行った。
夕方近く5階のセーフティエリアにたどり着くが、冒険者の姿はユウゾー達以外は誰も居なかった。
恐らく今回の活動期によりダンジョン内に入るのを自粛していると思われる。
エリア内に入ると同時にエルフ達は風呂を要求してきた。
いかん…いらぬことを教えたか。ユウゾーは風呂作りに汗を流す。
その後各テント、簡易トイレを設置すると料理作りに取り掛かる。
ようやくエルフ達が風呂から出てきたので、先に食事をしてもらい、ユウゾーはのんびり風呂に浸かり疲れを落とした。
湯船に浸かりユウゾーは今後の事をあれこれ考えていた、昨夜は力技で屈したものの言い訳でしか無く男としての責任をどう取るかである。
異世界に来て半年、まだ勝手は充分ではないが幸い生活はなんとか出来そうだし、マーラ1人、いや場合によっては子供を授かっても当面困る事は無いかなと、色々なケースを検討してみた。
すっかり湯が冷め始めて慌てて風呂から出るユウゾーであった。
食事を終えのんびりしているマーラを呼び出し、少しテントと離れた場所に二人で座るとユーゾーは何事かと怪訝な顔をしているマーラに、直球勝負で今後のマーラの面倒を見たいと申し入れした。
突然の話にマーラも混乱しているらしく、色々確認の話を互いに煮詰めていくと、理解したのか大きく頷いてから肩を震わせて下を向いていたが、とたんに大笑いのマーラに変貌した。
「御免 御免、笑いだして。ようやくユウゾーの申し入れの理由が分かったわ。子供が出来たらそれこそ万々歳で村に帰れるけど、残念ながら今回はありえない。何故なら…」
少し長くなると前置きしながら、何故エルフが年一回この時期に人間の都市に訪問するのか教えてくれた。
エルフの村も人族と同じく魔王戦の影響を受け、男児の出生率が大きく減少した。
だがエルフ族は長命だ。人族は妊娠可能期間が数十年だが、エルフは数百年可能性がある。
これが幸いして人族と違いエルフは人口が微増している。
だが男が不足しているのは人族と同じで、このままでは微増がいつまで続くか分からない。
それと元々がエルフはそんなに子供が生まれる種族ではない。
過去には一生子供なしで終わる夫婦が結構な確率で発生していた。
実際微増を良く検討してみると前より子供数は増えていない。
たまたま不慮の事故や自殺率が減って老人人口が増えた結果と判明。
これを受けエルフ族は長期対策を図る。
女性は 400歳までの妊娠しやすい女性を優先して、村で保護している男性を年に一回の春先の発情期に宛てがい子作りに専念させる。
当初は有効だったがこの所鈍化している。男性の高齢化が進んだ事が原因だ。
あいも変わらず男児の出生率は高くない。
再度危機をいだき、外に活路を求めた。この白羽に選ばれた者は 400歳以上のエルフで希望者は春先に人族の都市に出向き、高級売春館にて好みの男性と情交を結ぶ。
但し路銀等の支援はない。エルフ村は共用が身についており個人で自由になるお金などほぼ無いと言って良い状態だ。
特例で人族の都市に出向く者は5年間の間、自分で退治した獲物に関して部材の個人売買を認めて路銀作りに溜めて良いとの達しが降りた。
高級売春館は一回でエルフとしては考えられない金額が必要になる。それに長期滞在費とを合わせるとエルフにはなかなか用意出来ない金額である。
昔なら自由恋愛の手もあるが、今は全ての男は紐付き状態で、ユウゾーは稀な存在らしい。
今回この都市に出向いたエルフは5名。第一村2名。第二村1名。第三村がマーラを入れて2名の計5名が参加した。
今回おめでたが1名発生。この数年浮いた話がなかったが、他のエルフ達は自分の事のように喜びあった。
ただ一つ問題が発生。他種族との子供は時々拒否反応のせいか激しい体調不良が起き。最悪こどもが流れる可能性がある。絶対安静が条件である。
最低10日以上の滞在が必要だが、路銀の不足がすぐに問題となる。
皆ギリギリの金額しか用意出来ていない。
金を集めれば当事者と1名の介添人計2名10日分の宿泊代はだせるが、帰路の馬車代も無く。最悪歩きで村まで帰らなくてはならない。
健康人ならそれも可能だが、妊婦を伴っての歩きは無理だ。
ダンジョンで稼ごう。特殊なダンジョンだがカンストエルフ3名いれば何とかなる。問題は荷物だ。
背に背負っての戦いはかなり不利になる。
ポーターを雇い入れて持てるだけ持ってもらおうとギルドに募集依頼に訪問したが、なかなか良い返事がもらえずに、ヤキモキしている時にユウゾーが現れたのだ。
「そうか なかなかに大変な事態だったんだな…」
「長いエルフ生 たまにはこんな事もある。だから私の事は気にするな。それより…」
後ろをチラッと見て確認すると、ユウゾーの腕に手をかけ引き上げると、
「今夜はあの二人を楽しませてくれ」
ぐいっとユウゾーを引きずり大形テントに向う。其処には先程から事の成り行きを見守っている二人の笑い顔が見えた。
「ま 待て! それとこれとは話が…」
無情に引きづられ二人に手渡されると、ユウゾーは抗議も虚しくテント内に消えていく。
マーラはテントから離れた場所に座り込み、ふーっと長い息を吐いた。
有難うユウゾー。長いエルフ生で 初めてプロポーズの言葉を聞いた。嬉しかったよ…。
そう呟いていたマーラは心から嬉しそうに微笑んだ。
ユウゾーの女難がはじまるのか?




