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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
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25 いざ ダンジョン 7


 「この世界をよく知らぬ?」


聞き様によっては見かけの歳から判断し、世間の荒波に揉まれ始めた時によく見られる相談ごとの一つと、気楽に先輩からの教えを語れば良いケースだが、3人のエルフは直感的にそんな単純な話ではないと判断した。


そもそもこの男は規格外なのだ。何をするもこの世界の男としての基準からはずれている。特に時折みせる老獪(ろうかい)さは見かけの歳とは明らかに一線を引く。


教育も満足に受けられないこの世界で全くの非常識な輩はたまにいる。

だがこの男からはそれなりの教育を受けて育った匂いがする。そんな教育を受けた者が一般常識を知らぬはずなどありえない。


 ならばこの質問の真意はなんなのか?

 それが判らねば回答が大外れの見掛け倒しになる可能性がある。

 

唯一、可能性としてそれなりの身分の子で、何かの理由により生まれてからすぐに長い幽居暮らしを強いられ、最近逃亡か家から放逐されて現在に至る可能性だ。


 いや違うと頭を振って不定した。そんな環境で育てば人は卑屈にはなっても、老獪にはならない。

 突然エルフ達は3人頭を寄せそれぞれの考えを語り合った。


呆気にとられたのはユウゾーである。自分の質問の何が彼女らがここまで議論に及ぶに至ったのかまるで見当がつかない。


暫く議論が続いたが、やがて一人のエルフの仮説に他の二人が無理やり同意させられ、一応の決着がついたようだ。


 そのエルフはユウゾーにゆびを指し声高らかに宣言した。


 「ユウゾー あなたの正体が判明した」


 「はい?」

 予想外な展開に思わず身を引き締めた。迷い人がバレた?!


 「あなたの正体は!」


 「ごくっ」


 「どこかの元王族様!!」


 思いっきり、ずっこけたユウゾーであった。

  

 「痛ーい!」

  

 頭を抱え思い切り涙目の残念エルフがそこに居た。


簡単にユウゾーから王族説を不定された。

両サイドのエルフはあれだけ違うと反対しても自説を変えぬエルフに、最後はリーダー権力を発揮されて渋々従った。その反動で反射的にリーダーの頭を二人揃い思い切り殴りつけたのだ。


それに至った根拠を尋ねると、涙目の残念エルフは自分の自説を朗々と説明し始めた。


 ①.あまりにも一般常識不足。

 ②.通常の男の行動と掛け離れている

 ③.其れなりの教育を受けている

 ④.年の割に老獪さがある


そして幽居暮らしも検討したが先の理由で却下。悩みに悩んで出た答えが、全てを併せ持つ者として王族にたどりついたと。


 ①.一般人常識など必要ない。王族としての常識知識のみ必要。

 ②.一般の男と掛け離れて当たり前。

 ③.当然王家なら小さいうちから教育三昧。

 ④.海千山千の貴族相手に必要事項。


 どうだ 否のない推論だろうと 薄い胸をはる。


 ふむ 確かにこの4点だけなら当て嵌まるな?!

 いや 大事な事が抜けているぞ。


 「大事な点だ 王族にあって 俺にないものがある。わかるか?」


 「…………王族としての品?!」


 ピンポーン!! 正解のご褒美にリーダーの頭よしよし攻撃!

 

 品格までは持ち合わせていない。それを考えればすぐに結論が出たのに…。

 まぁ 自分で言う事ではないが… 。


 「よ よさんか。われは子供ではない!」 

 

 逃げ出すリーダー。でも少し嬉しそうな顔でした。



 残念リーダーのせいで余計な時間をとられ本日はここまでとなる。

 明日は10階のエリアボス戦が待っているでもう寝ないと…オヤスミ。





翌朝 皆で食事を食べながら今後の打ち合わせを行う。

深緑のパーティーはエリアボス戦後()()()()にて地上に戻りたいとのことだから、今日でお別れだな。


私達4名はエリアボス戦後に出現する地下トンネルで11階層へ移動予定となる。

先に深緑のパーティーがエリアボス戦に挑むことになる。

支援を申し入れたが過去何回か対戦しているので大丈夫だとのことなので、健闘を祈り送り出した。


 いくばくかの魔石と宝石が入った小袋を防具修理費の一部として渡しておいた。

 かなり恐縮していたが、お互い様だ。


 私達の出発まで1時間ほどあるので、昨夜聞けなかった情報をお茶しながら聞き出した。

 彼女らの村はエルフ第3村と呼ばれ、新しい村はまだ出来て 300年経っていない。

 場所は開拓村から北西徒歩4日ほどに第三村があり、その北部に第二村、第一村がある。

 年一回この地に各村から選抜で遠征すると言う。


話しながら少し疑問に思ったのは、なぜわざわざ遠いこの地に年一回だけ遠征に来るのか不明な点だ。通常は例の大森林で倒した魔物の魔石等を開拓村にて、不足分の日用品等の交換に訪れるだけとの事だから基本あの大森林で完結するし、事実過去はあの森から出ることはなかったそうだ。


その件を尋ねると3人は顔を見合わせながら、少し照れた顔で互いに笑い合うだけで明確な答えは無く回答をボカされてしまった。 解せん…。


 やがて時間となり私達も荷を纏め、エリアボスがいる奥のトンネルを進む。

 トンネルから出るとそこは別天地だった。


 


 基本草原地帯だ。所々森林も見える。のどかな鳥の声も聞こえる…


 何なんだ? 先日までの薄暗いダンジョンは何処に行った。

 この長閑(のどか)さは何なんだ?

 空は青い… 太陽も、いや違う。人工物だな、ユウゾーは違和感を唯一太陽に感じた。


 凄いだろう。残念リーダーが胸をはる。無いけどな… 

 どうなっているのだ と問うと、知らんの一声、、、

 

 聞いた相手を間違えた。隣を見ると気づいたエルフも笑いながら顔を横にふる。

 理由はわからないがダンジョンの一部だと補足してくれた。


 エリアボスの陣地は何処に有る? 尋ねると、ここがそうだと答える。


  …陣地などどこにも無いが、、、


ほぼ2km四方全てがエリアリーダーの私的地区でここには子供騙しの罠くらいしか無いが、下部に行けば要塞化された場所もあるそうだ。


 罠?少し構えるが、エルフは笑いながら小枝を拾い、横の草むらに向かい投げ捨てた。

 バチン!! 金属音が辺りに鳴り響く。


足元に注意して着いて来い 指示通り音のした場所に向うと、そこにあったのはトラ挟みであった。


 はい? これが罠、、、確かに罠だが なぜこんな罠を?


嫌がらせ?かな。エルフは両手を広げ肩をすくめた。道はそれこそ過去何人もの冒険者達が通って出来ているので、其の道を外れなければ弊害はないと。


 何のための罠なの? 初見殺し…かな。 確かに地道に堪える罠かも。

 確か日本でも小型の獣を捕獲する時に有効な手段として用いられる。

 猪も挟まると自由が束縛される。


ここは本来ボーナスエリアだから… ここがある程度の冒険者が来れる限界地点なの とエルフは笑っている。この下の階からは中級以上でないと立ち入り禁止になっている。


それともう一つ罠があると教えてくれた。エリア全体に掛けられた罠で、歩く度にHPを僅かづつ吸い取られている。

それに気が付かないと、いざボス戦になった時HPが半分ほどになっていて慌てるとケラケラ笑い出した。

ボス戦の直前にポーションを飲む、これさえ守れば大抵の事は許容範囲内。

 

 な なんかセコいボス戦だ。



 「活動期の影響はないのか?」


 「先に言った通りエリアボスの陣地内だから、問題ないと思う。懸念はボス自体が活動期の影響で一段階強いボスがでてくるかも」


 小鳥の(さえず)り聴きながらのどかな風景を眺め、最終地点に向う。

 


 



 やがて前方に高さ3メートルほどの石作りの壁が半円形状に広がる場所に到達。

 後ろは岩山のためこんな作りになっているのだ。

 正面には門がある。この門が開けばボスが中で待っているとの事だ。


 一人のエルフが門に手をかざし、軽く魔力を流す。

 重々しい音と共に門がゆっくりと開いていく。

 

 パーティに魔力持ちがいなければどうなるんだろう?

 その時は数人で門を押すのだと 呆れ顔。




 門の中に入ると前方に直径50メートル程の闘技場らしき物が目に入ってきた。

 中央に三体の魔物らしき姿が見える。


 「チッ やはりワンランク上のオーク達だ」


 残念リーダーが状況説明してくれる。通常はボスはオークソルジャーで両脇に完全武装のオークがボスを守っている。

 今回は両脇がソルジャーでボスはオークジェネラルと思われる。

 少し厄介ね… そう呟いた。


それを聞いたユウゾーはガンを抜き出力を最大に合わせる。

だがそんなユウゾーを制し、リーダーのマーラは今回はエルフ達で対応する。ユウゾーは万が一の時手助けして欲しいとの提案だ。


 エルフの心意気として一歩下がって補佐に徹することにする。


 マーラは他の二人に 最初から全力でいくと伝え、二人も頷く。

 4名がゆっくりと一段高い闘技場に近づいている時にユウゾーの耳にエルフ達の唱える詠唱が小さく聞こえてきた。


 その声は闘技場の中央部に達するまで続いた。


双方しばしにらみ合いから、エルフ達がわずかに先に動いた。遅れて魔物たちも動こうとした瞬間途轍(とてつ)もない魔力量の塊が3体の魔物に襲いかかった。

豪火三連が一つになり超大形火球として炸裂したのだ。


ユウゾーはあまりの凄さに一瞬逃げ腰になる程の威力であった。

すべての物を焼き尽くす地獄の蓮火がやがて消え去った跡には焼きこがれた跡しか残っていなかった。


豪火が消えたにもかかわらず辺りは熱の残りが暫く残っている有様だ。


 「やった! やった!」と3人のエルフが飛び上がっての喜びの声を聞いて、ユウゾーは始めて戦いが終わったと我に返った。



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