24 いざ ダンジョン 6
ユウゾーの働きはもの凄いものがあった。
少し歩けばすぐに湧いてくる魔物に 何だ坂 こんな坂 と気合に溢れた攻撃を見せる。
当初エルフ達の後をただ遅れずにを合言葉で必死に着いてきた 深緑 も少しづつ慣れてきて、エルフの魔石拾いに何人かが支援し始めた。
すると支援する人数が公平ではないと、エルフ3人が揉め始める。
ユウゾーは呆れ返りエルフ3人をこのまま9階に置き去りに出来ないか、真剣に一時考えていた。結局それは人として不味いだろうと泣き泣き諦め、深緑のパーティから各1名づつエルフ達に支援に出てもらう事で妥協し、他の者は辺りの警戒に劣化型ライトを渡した。
(こんな仕事 ポーターの仕事ではない!)
ユウゾーは何度目かの愚痴をこぼし、その恨みを魔物に向けていた。
魔物の海の中を恐ろしい速度で泳ぎ切り、10階に突入前の最後の点検に入る。
この先は9階に比べオークの進化種も出るらしく、入り口から10階を覗き込むと毛色の変わったオークが何体か見られた。
ただこのエリアは9階に比べ広さが2/3しかないと、壊れ気味のエルフがのたもう。
残りの1/3はエリアボスの陣地だと言う。その両方の境目の一角にセーフティエリアが有るらしい。
ボスの陣地? よく意味がわからないが、、行けば判るの一声でユウゾーは飛び出しながら叫ぶ。
「おらぁ! 出てこい マイ○ル・オーク!!」
ユウゾーも半分壊れ始めたようだ……。
「なんだ これは?」
激戦に次ぐ激戦を制してユウゾー達は一面の岩壁に突き当たった。
流石に10階をユウゾー1人では荷が重すぎて、3人のエルフは渋々ながら自分をサポートしてくれた、深緑のメンバーに魔石拾いを依頼して戦闘に加わった。
流石腐ってもエルフであり、彼女らは魔石拾いを出来ぬ憂さを特大の精霊魔法で魔物たちに八つ当たりで解消していった。
巨大な火球が落ちる度に何体もの魔物の丸焼き、巨大な竜巻に次々に巻き込まれ天高く持ち上げられての自由落下、研ぎ澄まされた氷の槍が無数に魔物目指して襲いかかる様は、それは見事な有り様だとユウゾーは感心していた。
魔物たちの阿鼻狂乱の様をゆっくりと眺めながら、ユウゾーは歩を進めた。死にきれない魔物に銃口を向け止めを刺していく。
「できるなら最初から殺ればいいのに…」
ついボヤきたくなるユウゾーは最終の地にたどり着いた。それが目の前にある岩壁だ。
「こっちだ ユウゾー!」
その声に反応して、顔を向けると岩肌の凹凸に隠れるかの様に、一人が通れるのが精々な壁穴が見えた。ここがセーフティエリアの入り口らしい。
全員が入るまでユウゾーは用心深く辺りを警戒し、最後に壁穴の中に足を踏み入れた。
「皆大丈夫か? 怪我はないか」
エリア内に入り確認すると、ボロボロ状態の深緑のパーティーは全員床に転がり込んでいた。
エルフ達は?
心配するのが馬鹿らしい状態だった。少し離れた場所で、3人で座り込んで袋から回収した魔石等の確認作業に夢中な姿が見えた。
かなりの数が各位の前に積み上がっている。それを嬉しそうに数えているエルフ達の目は「¥マーク」に輝いていた。いや此方は ゼニーマーク か…。
ごほん まぁ良い。幸せそうでなによりだ。
ユウゾーは壁に持たれかけ魔法袋から水筒を取り出して喉の渇きを潤した。
この数階で何体の魔物を退治したのだろうかと、ボーッと考えていた。
流石に体は限界に近づいていた。少し晩御飯の準備まで寝ることにした。
いや体の疲れもそうだが、精神的な疲れの方が大きいかな? その内半分は間違いなくあの3人が原因だとユウゾーは確信していた…。
心地よい眠りを邪魔する者がいる… はっ とユウゾーは眠りから目覚めた。目の前に美人3人組のアップの顔が迫っていた。
あまりの近さに思わず顔を後ろに反射的に引くと、ユウゾーは背の壁に強かに後頭部を打ち、あまりの痛さに涙が滲んだ。
「何をやってるのだ。そろそろ飯の準備をお願いしたい。」
ひとりのエルフが呆れた顔で食事の催促を依頼した。
痛さに頭を抱えていたユウゾーはふと思い出し、3人の顔を見比べた。
「な なんだ。その顔は、、激しい戦いの後にはアレが本能的に高まり易くなると聞いてはいるが、ここは人目が、、、、」ゴニョ ゴニョ。
アホか! 何をほざいておる?
ユウゾーは一品を賭けた結果が誰が勝者か容易く判断出来た。
一人は輝いた瞳で食事を待ち。他の二人は半分トロ~ンとした目で焦点が合っていない。
たかが一品だが、ある意味エルフ達の全力さに感心したユウゾーである。
視点を変えれば食に関して浅ましいとも…。
では食事の準備にと立ち上がったユウゾーに、先程のエルフが小声で…
その、、個別相談には乗ってもよいが…
ユウゾーは聞こえない素振りをして、食事の支度に掛かった。
食事を作りながら深緑のパーティーが気にかかりそれとなく見ていると案の定、干し肉中心の簡単な食事に成りそうだ。
一緒に食べないかと誘うと、嬉しそうな顔で頷く。
そこのエルフ達嫌そうな顔をしない。ちゃんと多めに作るから。手伝うと言って数人が材料の切り出し等に動き回っている。 いい娘達だ。 なあエルフ……顔をそむけるな!
食事時間を優先したので、食後皆が満腹感で寛いでいる中、ユウゾーは宿泊セットにて大型テントにワンタッチテント、それに旅のお供の簡易トイレを次々とエリア内に展開した。
深緑のパーティーはこの日何回目かの固まりから暫し脱却出来なかった。
エリア内は基本魔物の襲撃はありえないが、今回は活動期と言う事もあり、念の為夜番は深緑のパーティーが是非にと進んで対応してもらうことになった。
申し訳ない。明日別れる時に心ばかりの魔石を譲渡しようと呟く声を、エルフ達が聴きとめて抗議するが、あんた達散々魔石回収でお世話になったのでは? の一声に渋々ながら了解した。
それに彼女達の鎧は大量発生した魔物と戦った後遺症で、全員がそれなりの傷が入っていた。
鎧の修理代も馬鹿にならないだろうから。
体の方はかすり傷程度で大事にいたらずに幸いでした。
深緑のパーティーも当番以外寝る準備にかかっていたが、ユウゾーは夜食用の軽いお菓子を土魔法で作った皿に入れて、陣中見舞いとして差し入れた。
寝る前だから断られるかなと心配したが、全員が大喜びで食べ始めた。
無論当番の担当者も猛烈な勢いで駆けてきて、お菓子に舌鼓を打ち食べていた。
良い子たちだ。少しほのぼのとする。
さて もう一方の悪い子達?にも持っていこう。
一晩フリーだから折角だし少し情報を集めたい。
主にエルフの生活ぶりやこの世界の仕組みがまだまだ不足している。
悪い子達?のテントにお菓子と共にお邪魔すると、簡易ベッドでダラけ切った姿のまま迎えられた。
うむ 両極端なパターンだな…
生活魔法を使い 椅子とテーブルを作るとお菓子を置き 少し話さないかと伝えるとのそのそと集まり出した。
お腹が一杯でお菓子に興味が無いのかなと思ったが、違っていた。目はお菓子に釘付け状態だ。
まったく素直じゃないなと、苦笑いをしていたらお茶は無いのかと催促される。
苦笑して魔法袋から茶器一式を出し、魔法袋に保管してあった熱いお茶の入った水筒を出して皆に注いであげた。
お菓子をつまみ、お茶を飲んで人心地ついたのか、どうした こんな夜に? とお菓子をたべながら尋ねてきた。
おいおい 可愛いお口からポロポロお菓子の欠片が溢れたぞ。
食べ終わるまで喋ったら駄目と親に教わらなかったのか?
「いや 寝る前に悪いのだが、教わりたい事がある」
一人のエルフが異常にその言葉に反応した。何だあの期待に満ちた目は? 何か良からぬ事を考えているな。言い方が悪かったかな?
「俺はこの世界が良く理解していない。色々知りたいが、手始めにエルフ達の仕組みと言うか、生活一般について語ってくれないか?」
なんだそんな事かと反応した者が二人、期待が外れたとがっかりする者が一人。
ふむ こいつは絶対別の何かを考えていたな…。
だが少し冷静になったエルフ達はある疑問が浮かび上がってきた。




