23 いざ ダンジョン 5
驚いたユウゾーは銃を向けたまま魔物に近寄った。
体長約4メートル 大きな牙を持つ大物だ。
致命傷ではあるが、まだ動こうとする魔物に銃のトリガーを引く。
「それがブラックパンサーだ」
追いついた血まみれのマーラが教えてくれた。
マーラに生活魔法の清浄をかけ綺麗にする。
「有難う。気が付かなかった。助かった」
ユウゾーはいつの間にか背後に忍び寄っていた魔物に改めて戦慄していた。
「いや 此方こそあのオークから救われた。まぁお互い様か?」
光となりダンジョンに吸収されていく魔物を見ながらマーラが呟く。
「おっ 宝石のドロップ品だ!」
最初の頃のドロップ品より一回り大きな宝石が3個、魔石も大きな物が回収出来て喜んでいたら後ろからマーラが囁いた。 ところであの銃何なのだ と。
新型の魔法銃と説明しても無駄だった。エルフの村に魔法銃が残されており、実際にマーラは若い時分に興味本位で持ち出しオサ(村長)から、当時こっ酷く怒られた前歴がある。
よって、魔法銃に関しての知識は他の者より持っている。
「一番の違いは魔法銃は発射後魔力の残り香があるんだ。エルフの者なら皆判るはずだ」
さて どうやって切り抜けるか? 顔色を変えずにユウゾーは懸命に考えを纏めていたが、思わぬところから救いの手が入った。
「見てくれ。大きな魔石とドロップ品だ!」
ニーアが嬉しそうに差し出した。 おお 黒豹の魔石より一回り大きい。ドロップ品の宝石も一回り大きく4個も落とした。
「しかしあのオークは一体何なのだ。不思議な動きをしていた」
一緒にいたラーサが困惑気味に顔をしかめた。おそらく進化系のオークだろうと3人が頷きあい、次に遭遇したらどう対処するかで暫し議論が進み。ユウゾーが見かねて休憩時間にまた検討すべきで、今は先に進もうと提案した。
ムーンウ○ークするオークなどそうは多くないだろうしね。
でも滑りやすい舞台等とは違い、大地を相手にあの動作は凄いと、オークの並外れた脚力に感心していたユウゾーである。そしていつかは自分もと考えるユウゾーである……
次の獲物を求め移動開始した4人であるが、マーラは少し不満顔であった。
(上手くうやむやにされたかな?まぁ次の機会だな…)
ユウゾーが少し気になり始めたマーラであった。
7階を順調に粉し、地下8階に突入すると大忙しのパーティであった。
左側面オーク3体… 正面からもオーク5体!
次から次にオークが湧いて出てくる。
流石に見ているだけでは申し訳なく、当初は威力を落としたサイコガンで美女軍団が手薄な時にこっそりサイコガンで対応し、合間に魔石拾いを続けていたユウゾーであったが、進むにつれて魔物の襲撃頻度が増し、魔物の数も増えて来た。
美女軍団も少し疲れが見え始め、不本意ながらユウゾーが討伐の先頭に立ち、中央突破を図る。
銃を隠すメリットより、最悪大怪我をするエルフ達のデメリットの方が高い。
魔法袋から劣化版の懐中電灯もどきを出し全員に配る。使い方は単純なのですぐに理解してくれた。光度は正規品の60%だが、エルフ達にとっては問題ないレベルであった。
試しにあちこち照らしてキャッキャ楽しんでいる。
ストラップも付いているし弓を使う時ライトを離しても落下の心配がない。その説明にふむふむと納得し実際に確認作業をして実技にさほど問題がないレベルと納得してくれた。
ライトを離した瞬間手首にライトの重さがかかり、振られて僅かに安定するまで矢先がブレるとの事。なる程少しのブレが命中精度にかかわるからな。最初にわかっていればいくらでも対処はあると、ミューと競う薄い胸を張る…。
サイコガンの出力及び残回数を確認すると、ユウゾーを先頭に行軍を開始する。
あたるを幸いにユウゾーは撃ち続ける。後ろから着いてくる3人は楽しそうに魔石とたまに出てくるドロップ品を回収続ける。
進行速度は一気に倍近くになるが、度々彼女らの両手一杯の魔石を魔法袋に回収の為止まらねばならない。そこでユウゾーは最後の手と、劣化版の一番容量が少ない魔法袋を全員に配布した。
容量を確認するとユウゾーに預けてあった各個人の荷を収めて燥ぎ廻っている。えーと あくまで臨時に貸し出した品なんだが、完全に私物化する気満々だな…。
余計な事は後で考えようとユウゾーは気分を変え魔物に突入を開始する。後ろからエルフの楽しげな声が聞こえてくる、誰が一番魔石を回収するか、今晩のおかず一品を賭けだしたようだ。
ユウゾーはサイコガンを撃ちながら、確か俺はポーター役で雇われたよな と何か割り切れない気持ちになっていた。
進撃のユウゾーである。 怒涛のユウゾーである。
8階をクリアして9階に入る入口で小休止をとった。この2つを結ぶ通路内は魔物が出現しない。理由はエルフに聞いても不明。そうなっているで完了だ。
実はこの通路で拾いものをした。3級の深緑のパーティー6名で、通路の真ん中あたりで全員蹲り半分死んだ目をしていた。
事実ユウゾー達が近づく足音に反応して震えだす者が何人かいたらしい。
足音が冒険者達と分かった瞬間、歓喜の声で迎えられユウゾーは何が起きたのか当初判らずに逆に狼狽えてしまった。
一緒に10階のセーフティエリアに同行したいと哀願され、どうしたものかとマーラに眼で確認するとマーラは軽く頷き、冒険者達に一歩進み薄い胸を張り 安心して大船乗った気持ちで着いておいでと それは大層な見栄を堂々と宣う。
深緑のパーティーから一段と大きな歓声が上がったのは当然である。
おい マーラ達はつい先程まで泣きそうな表情で魔物と戦っていたよな、見かねて俺が交代したけれど良くそんな大見得を吐くなとばかりにマーラを睨むと、プイと視線を避け横を向いた…。
後でそれを小声で指摘すると、 し 仕方ないだろう。人助けだと 悪びれず答えた。
そんなこんなで9階の様子が見える入口で休憩に入った次第だ。
昨日と同じく昼食を食べそこねたので、簡単なツマミを屋台で仕入れていたので、それを放出する事にした。深緑のパーティーも安心して腹が空いていたのを思い出したらしく、出した品を涎を出さんばかりに見つめているので、追加に深緑のパーティー分も皿に並べて出してあげた。
それを食い意地の張ったエルフが見ているのは内緒にしておく。
食べている間はつかの間の静寂がある?。その間にユウゾーは銃のマガジンを外し、弾の代わりに入っている魔石に魔力を注ぎ充電?を完了する。
再度マガジンを嵌め込み、安全装置を解除すると液晶もどきの表示の色がグリーンに点灯した。それを見て安全装置をセットして一息ついた。
8階を脱出する時には、残回数が半分以下の黄色に表示が変わっていたのだ。
まだ食べたそうにしているエルフの訴えを無視して、ユウゾーには初めてのダンジョンで勝手がよくわからないが、先程から皆を見ていると何かダンジョン内で異常が発生しているのかと、マーラに尋ねるとダンジョンが活動期に入っていると答えた。
漠然として意味が判らず続けてもらうと、年に数回魔物がダンジョン内で大量発生の時期があり、今回これに当たってしまったと言う。
通常一週間程で落ち着くと大して気にもかけていない様子だ。
孫のラノベ本にも書いてあったダンジョン外に魔物が溢れる現象かと再度尋ねると、少し考えるとこのダンジョンでは可能性が低いと答える。
その根拠を尋ねると、このダンジョンは無駄に広く、大量発生しても魔物たちの生息域がかなりあるのが一点、それと冒険者が定期的に入り魔物の数を減らしているのがもう一点の理由だという。
ダンジョンの活動期に入ると7階で会った進化系の魔物が多く発生するのだと。
おぅ あの ムー○ウォーク・オークな!
言いにくいな マ○ケル・オーク の方がいいか?
どうでも良い事で悩むユウゾーである。
休憩を終え一気に10階セーフティエリアに行くと全員に伝える。
深緑のパーティー員は少し青ざめていたが、健気に頷きあい、せめて魔石の回収を手伝うと申し入れがあった。3人のエルフが笑いながら体力の消費を控え、しっかり我らについてくれば良いと優しく諭していた。深緑のパーティーは全員感動の涙、涙。
…おい エルフ共、確か晩飯のおかず一品を賭けていたな?邪魔されたくないんだろ?
3人のエルフが横を向く。
9階の魔物は武装オークに武装ゴブリンが主だ。特にオークの武装は厄介だ。唯でさえぶ厚い皮下脂肪に守られているのにその上防具だと? 通常なら皆手こずるのが道理だ。
ユウゾーはサイコ出力を10%引き上げた。威力は前の倍になる。
一気に殲滅して踏破するつもりだ。
ユウゾーによる魔物虐殺劇が開始された。
無造作に飛び出したユウゾーは集まる魔物を近場にいる魔物から順にサイコガンで狙い撃ちにする。あちこちで魔物の悲鳴と血肉が飛び散る。
一瞬で10体の魔物を倒したユウゾーは次の魔物を求めて走り出す。その後を我先にと魔石拾いの修羅場を繰り広げるエルフ達。その後に続く深緑のパーティー員は全員暫く固まり動けなかった。




