20 いざ ダンジョン 2
日に一話で当面進めます。宜しくお願いします。
翌朝早く宿をチェックアウトするとユウゾーはドアの横にあるソファーに腰を下ろし、エルフ達が降りてくるのを待っていた。
程なく4人のエルフの姿を確認する。うん?4名。昨日の他にまだいたのか、また覚えにくい名かなとぼんやり考えていた。
だが一人は階段から降りず、3名に何か言葉をかけ小さく手を振って奥に引き返して行く。
見送りか? 病人という事でもなさそうだし。そうこうする内に3名がチェックアウトの手続きを進めている。
終わった者と朝の挨拶を交わしていく。
3名共大きなリュックを背負い、腰にはセカンドバック的な物を巻きつけている。
「早速だがこの荷が入るか」
「まかせろ」
ユウゾーは収納していく。計3人分の荷を収納するとエルフ達も喜んでいる。
荷は無いほうが移動には楽だからな。
ではいざ鎌倉と宿から出ようとした時二階から声がかかった。
ミュー?! 昨夜皆達と夕食時に互いの再開を約束して語り合ったばかりだ。
「外で待っている」
エルフ達がニヤリと笑い出ていった。
まだミューが起き出すには少し早いはずだが、見送りに起きて来たのか。
「怪我には注意してね」
「ああ お前もな。皆にも宜しく伝えてくれ。それじゃ行くからな。」
愛想の無い返事を返しユウゾーは手を振って外に出た。
3人のエルフが壁に背を預け待機していた。
「早かったな? 別れはもういいのか」
こいつら話が長くなると思ってのんびり体制に移っていたな。
さぁ行こうと 美女軍団を追い立てる。
方角は正門ではなく反対側の門に向かっている様だ。
都市のメインストリートをゆっくり歩んでいく。もう15分も歩けば門に着くそうだ。
歩きながら手に持っていた矢立と弓を一緒に纏め背負っていく。
おう やはりエルフは弓だよな と一人納得するユウゾーである。
人が疎らな時間帯は何だか無性に好きだ。
でもしばらくしたら人が溢れかえりいつもの騒々しい毎日がはじまるんだな。
少しこの時間が大切な時間に思えてきた。そんな事を考えて歩いていると目的の門が目の先に見えてきた。
門の兵士に見送られ田園の先にある森を目指し4名は歩みを少し上げた。
昼前に森の入口までたどり着き、昼食休憩にする。
春の日射しが本来気持ち良いのだが、数時間は歩いて来た者達には日陰のほうが汗を乾かすには向いている。
宿を出る時に水筒に生活魔法で氷を作って入れてきたので、エルフ達にもおすそ分けで一杯づつカップに入れてあげる。
大層氷を喜んでいた。単なる生活魔法なのに…。
エルフはどんな食事なのか興味があったが、普通の干し肉が出てきた…。
噛むと大量の水分を取られるので魔法袋から昨日仕入れた屋台での野菜スープを取り出し、それに浸けながら食べているとジトッとした視線を感じる。スープを飲むかと尋ねると3人が一斉に頷くのでカップにこれまたおすそ分けです。
まだスープも温かいのでよかったね。
さてこれから先は魔物が出始めるので装備関係を最終点検して森に分け入る。
ユウゾーも剣を中心に対応してみるつもり。
だが 剣を使う時は来なかった。エルフ達が物凄い連射で次々に魔物を仕留めていくからだ。
一人でも関心するくらい連射するのに、それが三人だ。
あっけに取られてユウゾーはただ見ていた。
ユウゾーがしたのは倒した魔物から魔石を取り出す作業だけだ。
一日目の野営の準備にかかる。森の中に広がった空き地があり、よく見ると彼方此方に野営の跡が見られる。
場所が決まると各自の荷を置き、楽しい野営作りを始める。
今回魔法袋を分けて持参したのはこの為だ。野営セットの魔法袋から防御柵を、一周ぐるりと設置しその先に浅い壕を生活魔法の土魔法で作っていく。
かなり手慣れてきたのでサクサクと掘り進める。
仕上げに魔物除けの粉を一周撒き散らし完了する。
さて次は夕食作りの手伝いを……あれ 皆さん食事作りの手が完全に止まっているのですが、どうしたのですか…?
しばらくすると我に返ったように、時々頭を振りながら食事作りを開始した。
暖かいスープ作りの材料に各種野菜と一角兎の肉の塊を何個か提供すると少し固まりながら感謝された。
ああ無論大量の香辛料も忘れずに並べて置いてみた。
何か急に黙り込んでしまったが、香辛料関係は好きではないのかな?
エルフのリーダーから真剣な顔で質問が飛び出してきた。
ユウゾーの魔法袋の容量に疑問を持ったみたいで、当然この対策にユウゾーも抜かりはない。複数の魔法袋を提示して、色々分けているから沢山入れる事ができると胸を張ってみた。
エルフ達3人は集まり何やら相談を急に始めだした。
あの スープつくりが途中で止まっているのだが…。
とりあえず疑問は後にして食事作りをしない?
ユウゾーは代わりにスープ作りを始めた。
それでもようやく食事作りが完了し、晩飯となったが皆急に無口になり時々チラチラとユウゾーの顔を見ると、何か深い溜息をつきながらも次から次に胃袋に収めていく。
「こんなに美味しい野営食なんて始めてだ。有難う。
色々疑問は有るけどこの美味しい食事で皆忘れる事にする。いや あえて先送りする方がいいと判断する。皆いいね?」
エルフのリーダーが他のエルフに同意を求めると、皆頷いてそれがいいと認めあう。
格してエルフ美女軍団はユウゾーマジックに飲み込まれていった?
夜の番はエルフ達で対応するからユウゾーは寝るように指示され、ワンタッチテントを取り出すと中にユウゾーは潜り込んでいった。
そのテントを見たエルフ達は再び固まり、長い間ユウゾーのテントを凝視続けていた。春の夜はまだまだ冷え込む、風邪にご注意。
朝の朝食準備を一人のエルフが始めた。
この時期は大地に座り込んで調理すると忽ち体温がお尻から吸収され底冷え状態になるが、昨晩ユウゾーより支給された えあーまっと なる物が大地からの冷えを遮断し快適な夜を約束し、また調理中においてもお尻を大地からの夜明け前の寒さを防いでくれて、何の支障も不満もない作業に感謝していた。
他のエルフも普段毛布一枚に体を丸めて寝ても大地の冷えに睡眠が浅い状態となるのが常だが、皆のびのびと睡眠を貪っている様に見える。
あのユウゾーと言う人族は一体何者なのだろうかと調理しながら考えていた。
エルフに生まれて400と数十年がすぎたが、こんなに驚かされた事は片手で数える位しかない。
それも成人になって300年は記憶がない。人族なのは紛うことないが、何となく知っている人族のそれと違っている。
ユウゾーに不可思議な思いが常に付いて回っている。
おっといかん。そろそろ皆を起こさねば…。
調理も各種調味料のお陰で普段の料理より数倍いい出来上がりだ。
オーイ 寝坊助共! 早く起きろ!
エルフのリーダーは多少声を荒立てた。
最初に起きたのはユウゾーであった。テントから抜け出すと大きく背伸びをして、テントをそれは簡単に一瞬で畳むと魔法袋に回収した。
只々見事としかいいようがない。
他の二人のエルフは共に心地よい睡魔と戦っている。
起きようと意識は有るものの、体が眠りを誘っている状態で えあーまっと なる堕落する品に完全に負けている。
しかたないか、逆の立場なら私も同じ反応をするかも知れない。
そんな二人とは別にユウゾーは周りを廻り丸太柵を回収している。
昨日は半分誤魔化されたがとんでもない容量の魔法袋だ。
最大クラスの1トン? いやそれ以上あるかも…。
なにが小容量だ。どの口がそれを言う。
二人のエルフの頭を軽く蹴り飛ばし、早く起きろと再度伝える。
うう 言いながらようやく置き出した二人に生暖かい視線を向ける。
その間にユウゾーは生活魔法?の土魔法で元の大地に戻している、
あいつは嘘つきだ。生活魔法にあんな土魔法なんか有りはしない。
通常の土魔法 中級クラスの使い手だ。
「美味しいな 毎回こうだと野営も苦にはならないな」
一人のエルフがしみじみと料理を食しながら呟いた。他の二人も口には出さないが普段の野外での食事、果てはエルフの村における食生活を思い出していた。
たまに出てくる人族の街でひとつの楽しみは食事の豊かさである。
自然と共にがエルフの代々の教えであり、それに対して疑問はないが森だけでの恵みにはある一定の限界がある。
無論長生きのエルフ達はそんな事は承知の森暮らしで、ただ人里での食料の種類の豊富さには驚かされる事が多い。
そして今回ユウゾーが持ち込んでいる各種の品には、有り難い反面しばらくすると暮らしている森に帰る3人には決して慣れ親しんではいけない事も理解している。
此方の食材に慣れると里での暮らしに戻る時に苦労するのは自分なのだ。
複雑な気持ちで食事を終えると、出発の準備を始める。
今日中にダンジョンに到着せねばならない。
出てくる魔物は順調に退治され、ユウゾーは魔石回収に追われていた。
そんなユウゾーにエルフのリーダーが笑いながら、
「もう少しの辛抱だ。ダンジョン内ではかなり楽になるからな」
? ユウゾーにはその真意が良く判らなかった。後で判るとそう話すと先へ進むエルフ達だった。
その日の夕方近く目標であるダンジョンに到着する。
森の中に突然小高い岩山が出現し、その岩山にダンジョンの入口が有ると説明された。岩山の周辺はかなり綺麗に刈り広げられている。
その一角に数パーティの野営地がある。




