190 いざ 大臣等のお願い
グレイシア様一行はユウゾーが製造した乗り合いバスにて王城に一旦戻っていった。
「なあ ユウゾー この変わった ばす? はどうするのだ」
ミーアが興味深く庭の隅に置いてあるトラックを指差した。
「ああ こちらはトラックと言って 荷を専門に運ぶ為に作ってみた」
「荷を専門の とらっく なのか・・なぁ 動かしてみたいのだが」
どうやら王女の側近が運転している様子を羨ましそうに眺めていたが、ミーアはかなり興味があった模様なのだ。
「そうか、ならば今後のために覚えてみるか?」
嬉しそうに頷くミーアであった、そんな様子を見ていて何とライラまでが運転を覚えたいという。
一人も二人も同じこと、この二人を一週間特訓すると後は勝手にトラックを動かし始めて走り出した。
「それー 早く走れ!」
ミ ミーア、あんたスピード狂なのか?!
ユウゾーは少しだけミーアに運転を教えたことに後悔していた。
それに対して性格なのかライラは非常に丁寧だ、だが本人曰く猫をかぶっている?状態らしい…。
それに触発されたのか、マーラやアーシャさてはカリナ達も二人の教えにより空き時間に動かし始めた。
大丈夫だよな、事故は起こすなよ、、。
新開拓村に得体の知れない物が走り回っていると噂が立ち始める…。
「おい ユウゾー、何やら面白いことをしているらしいな」
あちゃ ギルマスまで興味を持ち始めたようだ、お願いだ歳を考えてくれ・・。
お陰で新開拓村での運転者が増えたことは良しとしよう。
其の代わり皆の希望で数台追加でトラックを製造する羽目になる。
まあ 今後の発展には必要な事かもしれんが。
秋口にようやくグレイシア様一行は帰ってきた。
あれ?馬車での帰還だな、もしかしてバスが故障したのか?。
心配になってグレイシア様に尋ねると、国王陛下がいたく気に入り交渉のすえに売り上げたとの事だ。
バスは国王車として改造されて内装から全て高価な仕様に変更されて、この国の家紋まで書き込まれたようだ。
まぁ ある程度は予想されていたが・・いいのかな、、、。
因みに今回のバスは白金貨50枚にて商談成立したらしい…ユウゾー本人は蚊帳の外かい、、、。
白金貨50枚、5億ゼニーか、、、けっこうボッタクリでは?
陛下より預かった金子をユウゾーは受け取った、そして新たな注文を受ける。
当面トラックを増産して欲しいとの依頼がある、一台1億ゼニーにて最低今年で20台希望との事。
そして当面は他の貴族にはバスは販売しないことが条件になる。
つまり、当分の間は国王だけの優越感に浸る考えが見え見えだ。
・・了解だ、5億ゼニーだからな、毎度!
要は他の貴族には売らなければよいだけだ。
念の為 少し小型にしてこの大森林では動かそうとユウゾーはグレイシア様と悪い顔で話し合う?!
おい ギルマス、受け取った金子をどこに持っていくのだ?
はい? いつものようにギルド貯金だと・・勝手にしておくれ、、、。
何か割り切れない気持ちで立ち去るギルマスを見つめるユウゾーであった。
国王陛下からの依頼により、農業はカリナ達を中心にお願いしてユウゾーはトラック製造に注力する。
お金には成るが色々と大変な作業になる。
なれどユウゾーには裏技の劣化版複写がある、元の性能の70%落ちだが大丈V。
こんなこともあろうかと最初に作ったトラックはそれなりに気合を入れて製造した。
そのお陰で複写による70%性能のトラックでも最高速度は其の気になれば60キロは出せる。
当面はこれで問題あるまい。
より高性能を求められたらそれなりに価格相談で済む問題だ。
取り敢えず今は注文の20台と、この大森林にて使用する10台の計30台を至急製造せねば・・。
妻達の声援を受けてユウゾーは頑張る。
一月ほどかかり集中して製造に追われていた、その甲斐もありユウゾー宅の庭には見事なトラックの勇姿が並んでいた。
訪問客がひっきりなしに褒め称えてくれた。
ははは もっと褒めても罰は当たらない とユウゾーは得意になっていたが、妻達からは冷たい視線が突き刺さる。
早く退かしてくれなければ邪魔だとぶつぶつ文句が出る。
き 君たちにはこのトラックの勇姿が目に入らぬのか?!
はい? 早く売りつけて処分しろだと・・了解です。
国王様に至急便にてトラックの完成と持ち帰るための運転手候補を送ってもらうように依頼した。
一月後に20台分の金額と派遣ドライバーの教育が完了して、ようやく庭先が少し綺麗になってきた。
残り10台は地場の運送業務店に売り込み完了となった。
1台2億ゼニーにて売れたのだ、無論グレイシア様による無言の圧力に負けた運送店であった。
かなりこの大森林で儲けているみたいだし、いいか、、。
当面予定していた小型バスは中止となった、トラックを数台改造して雨対策の幌を作り、荷台の半分は乗客専用で後の半分は荷専用の多目的トラックとして誕生した。
なるほどこれならどちらに転んでも対応出来るなと、ユウゾーはこの世界の商売人にいたく感動した。
要は儲けそこなったのだ…彼らのほうがユウゾーより一枚上手である。
このアイデアは直様ユウゾー達が乗るバスに採用する。
ユウゾー関係者は最大15名も見積もっておけば いや違う、グレイシア様一行を忘れていた。
お付きの人々の計算が面倒だが、最大10名の乗車に寝室関係を充実させてと、、ユウゾーは付き人達からのアドバイスを聞きながらグレイシア様用の新型バスの製造に追われていた。
一度このバスにて移動すれば、無骨な馬車など二度と乗りたくないと皆は言う。
それはサスペンションが違うしな、比較にもならない程移動が楽になり、移動日数も驚くほど早くなるからな・・。
まぁ それなりに魔石を消費するが、考えれば馬等の生き物の手間と藁等の食事の手間も省ける。
考えるほどにはコスパは悪くはないか?。
故障に関しては当面ユウゾーが面倒を見る、それなりの金額を頂いていますので。
さて次は何だと休む間もなく対応に追われているユウゾーであった。
「えっ? 大臣閣下や将軍様専用のバスを希望と?」
季節は夏になり避暑地としてこの地に赴いていた両氏からの提案があった。
「「しーっ そのな・・あくまでも相談じゃ、ほれあの ばす なる新型馬車をそれは国王様は嬉しそうに乗り回しておってな、国中の貴族達が羨望の的なのだ。わかるだろう?」」
その件は十分に理解している、なんせあの原型を作ったのはユウゾーなのだから・・。
「そうは言っても陛下より当分の間は誰にもバスは売ってはならぬとのご命令が、、」
「「それは よう解っておる 解った上での相談なのじゃ」」
まったく、、この二人は・・。
「「例えばの話なのじゃが陛下の バス より小型であまり外見は似てはいないが性能は・・」」
勘弁して下さい、、それがバレたら怒られるのは自分です ユウゾーは断じて断るしかない。
「「頼む この通りだ、何とか協力してくれ。あんな馬車が欲しいのだ」」
まったくこの二人は、第一に他の貴族にバレたら、いや絶対バレる。
この二人が大人しく他の貴族に分からないように運用するはずがない。
逆に他の貴族に見せびらかす確率の方が高い。
そんな事になれば国王陛下より大目玉をくらう事が目に見える、困った・・。