186 いざ 探索隊
マーラとライラが男の子二人を抱えて帰ってきた。
なんだかんだと大騒ぎな一週間が過ぎた頃に新開拓村に大人数の一団が到着した。
長旅が終わりかなり各自が疲れている様子なので、まずは暫くの休息が必要と思われた。
ユウゾーの済む敷地の南側に空き地があるので、土魔法を使えるエルフ達の協力を得て防御用の壁を造り上げてここに一旦彼らの安全に住む事が出来るスペースを作り上げる。
護衛の兵達の大半はユウゾーの空き敷地内で過ごす事になった。
互いの敷地内には通用門が作られ万一に備えて当番兵による監視体制が行われている。
大型テントが何個も連なる様は見ていても一種独特の雰囲気があり、翌日にはギルマスを交えて各責任者と今後の打ち合わせとなる。
数日後からは本格的な大平原に向けての道造りがスタートとなるが、当初は歩行4日程度までは川の岸沿いに道路を作っていくが大きく川の流れが変わる地点よりどうするかは、やはり斥候隊が必要であるとなるだろう。
これはある程度地理を知っている冒険者達を臨時採用して偵察隊として採用する事になった。
川の手前側になるので左程魔物たちの脅威も薄まるものと思われる、ここで二組の探索チームを組むこととなった。
一つは川沿いに進むチームと最短を進むチームとに分けた。
川沿いは2パーティの人数で取り敢えず一週間進んでもらう事をお願いする。
その後引き返し情報を抱えて検討する事になる。
最短班は妻達3名とユウゾー、それに1パーティの冒険者により磁石による西を目指し魔物の多い中を強行突破を図る。
妻達はユウゾーは行かずに残っておれと言うが、そうはいかん。
これはそもそもユウゾーが依頼された事だ、妻達だけに危ない目に合わせるわけにはいかん。
ミーアとアーシャそれにミューがユウゾーに同行となった。
2日後準備を終えると冒険者3パーティにて大平原を目指しての探索が開始された。
「なぁ ユウゾー、川の向こうと此方ではこんなに違うもんだな」
ミーアーが退屈そうに呟く。
出てくる魔物の数は多いが妻達によりたちまちに退治され、美味しいお肉は回収となるが殆どは魔石だけの回収で捨てられてしまう。
そんな妻達の呟きを同行している冒険者達は顔を引きつらせながら聞いていた。
「な おい、流石ユウゾーさんの妻達だな…余裕じゃないか?」
「一般の常識で判断しては駄目だぞ、俺たちなら毎回懸命に魔物と格闘しているからな」
「そうだ あまりにもレベルが違いすぎるなぁ…」
冒険者達は取り敢えず妻達の後から続き、時折戦闘に参加したり、後方の確認をするだけで黙々とユウゾー達についていくだけだ。
やがて予定の分岐点に無事に到着した一行であった。
「じゃ 打ち合わせ通り一週間探索してまたこの地点で待ち合わせ場所にするよ」
二手に分かれて川沿いは計9名、磁石に依る探索は計8名と別行動になる。
川沿い班にユウゾーは用意してあった中容量の魔法袋を渡した。
「この中に美味しいお肉と野菜・ポーションも何本か入れてある。何かの時に使ってくれ」
9名の冒険者は感謝しながら二週間後の再開を楽しみに別行動となった。
「さてさて 西は…この方向だな、行こうか黒ダイヤの、、、」
磁石を頼りにユウゾー達4名と黒ダイヤと呼ばれるグループ4名が樹木に目印の紐を定期的に結びつけて森の中を進み始める。
「ユウゾーさん…いや名誉伯爵、この場所で今晩は野営にしましょう」
「畏まらんでいいぞ、通常の呼び方にしてくれ。ここでいいぞ」
「へへ…そう言ってもらうと助かる。片苦しいのはどうも…」
皆が笑い出す、変な呼び方は此方も気持ち悪いとユウゾーもそれに応える。
野営に関してはユウゾーの受け持ちと成る。
たちまちあちこちが土魔法にて形を変えて皆の安全を守る土壁を作り出した。
三方が壁で正面だけは警備用に少し空けてある。
毎回手際の良い構築に冒険者達も感心しながら野営の準備になる。
トイレと風呂場を造り上げ食事の準備を開始。
妻達は風呂場に向かう、昨日までは風呂場も二つ作っていたが今回からは楽な作業になった。
「しかし 土魔法は便利なものですな、私も土魔法の才能があれば良かったが…」
黒いダイアのリーダーが本音ともつかぬ呟きを吐く。
「いやいや 生活魔法の応用だぞ、その気になれば誰でも…」
冒険者達は絶対に違うと首をぶんぶん横に振り、深い溜息を吐く。
「こんなの生活魔法の応用なんかじゃない、最低中級以上の土魔法でなければ…」
そんなものか? ユウゾーは土魔法のスキルなどないのだがと小さく呟く。
「でもそのお陰でこんな奥地でも安心して野営が出来る、ユウゾーさんに感謝だ」
調理しながらリーダー達は互いに頷きあう。
おっ、妻達がようやく風呂から上がってきたな。悪いが先に風呂に入るぞ。
「済まんな 毎回夜番をお願いして。」
楽しい食事も終わり、妻達はもう大型テントにてゆっくりしている。
ユウゾーは冒険者達に先に寝ると伝えて立ち上がった。
「なんの 昼間は奥さんたちの後から付いていくだけですから、夜番くらいしなければバチがあたりますぜ」
冒険者達に挨拶を交わして自分たちのテントに向かい、テント内で簡単に今日の歩いたコースで気になる点を地図の中に書き込んでいく作業に没頭する。
そんなユウゾーの背後からアーシャが近づきユウゾーの背中にしがみつく。
「お おいアーシャ、他の妻達や外の冒険者も…こりゃ何処を触っておるのだ」
「ふふ 何なら三人一緒に相手にするか? 外など気にするな」
他の妻達も目をキラキラさせてユウゾーの方を見ていた。
「…仕方ない 一人づつだぞ。大きな声は禁止だぞ」
大森林に悩ましい妻達の声が響いていく…。
「おはよー」
元気にユウゾーは朝食の準備をしている冒険者達に朝の挨拶をする。
お・は・よー、、、、
何故かイマイチ元気のない冒険者達から挨拶が返ってきた。
えーと どうしたのかな? 寝不足かな少し元気が…。
「…ユウゾーさん、もう少し遠慮してくれれば、独身者には辛い夜なのだが…」
あん?…もしかして、昨夜の妻達の声が?
それは失礼しました。何度か妻達の口を手で塞いだのだが、、、。
しきりに謝るユウゾーとは別に妻達は元気にテントから出てくる。
実に晴れ晴れしい顔で朝飯と騒ぎ出した。
あのね 君たちのせいで俺は謝っているのだが…。
妻達は我関せずであった。
昨夜のユウゾーの働きが良かったのか?妻達は先頭に立ち、魔物たちを実に楽しそうに退治していく。
実に頼もしい妻達の働きぶりに感心するユウゾーであった。
時々立ち止まり土魔法で地中の奥深くまで掘り起こし、水が出るか確認していく。
意外と水源が浅い場所にあるのか、数メートルも掘れば水が滲み出てきた。
「ふむ もしかして川の流れは意外と近い場所に流れているのかも」
昨日から数回堀り一回は成功している。場所に土魔法で丸い壁を造り魔物たちが入り込まぬよう細工していく。
川は一度大きく曲がり暫くしてまた元の位置近くまで戻ってきたのかも…。
この調子ですすんでも水の心配はいらない可能性がある。
ユウゾーには神様から貰った魔法の水筒がある。
わずかな魔力と引き換えにいつでも新鮮な水が水筒に溜まりこむ。
魔力1で700cc程度の水筒がいっぱいに成るしミーアも初級の水魔法にて最悪水には困らない、だからユウゾー達が最短コースを選んで見たのだ。
魔物を倒しつつ一週間程進み、井戸を何箇所かキープする事に成功する。
そんな時にミーアとミューがよく聞こえる耳で誰かの話し声をとらえていた。
当面一週間に数回の投稿予定になります