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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
185/281

185  いざ 集団奴隷術


道路建設に関しては殿下より提案がユウゾーにあった。


「ほう 千名の奴隷を借りだすとな」


勿論 この奴隷たちは先の戦いで捕虜になった軍人達だ。


「だが、この千名の奴隷となると監視自体が途轍もない人数が必要となるぞ」


それには対応策がある、先の戦いにて無理やり先発隊の捨て駒にされた元ボルカ国の生き残り5百名を監視役として採用したいんだ。


「ボルカ国の…大丈夫なのか?」


良くは知らんが集団奴隷術があり、鉱山等で働く奴隷によく用いられるらしい。


「…聞いた事はあるが、確か効果が、、」


そうこの奴隷術は集団にて大量の奴隷たちに用いられるが、その効果は長くても半年程度しか有効ではないらしい。


「念のために数ケ月毎に術をかけてもらう事になる。そしてボルカ兵達はチェチェ国に対して恨みがある」


余程ひどい仕打ちを此方がしない限り、元ボルカ兵達がチェチェ兵達を監視してくれると思う。それにだ、大森林の森で脱走したとて第一逃げ場がないし、逃げ出した兵達が森を彷徨えばどうなるか予想がつく事になる。


「なる程 魔物の餌か…」


不完全な装備にて森に入り込めば結果は誰の目にも明らかになる。

問題はどう進めば大平原に効率よく道を開けるかだが、ここでユウゾーはひとつの品を取りだした。


「「これはなんだ?」」


磁石だ、ユウゾーが予てより作り置きした品で、最悪ダンジョン内での迷子状態に利用しようと考えていた品物となる。


「これをこう合わせていくと方角がわかるんだ。地形的に西に向かえば最終の大平原に到達するはずだ」


興味深く妻達が実際に手にとりユウゾーが使用方法を説明していく。


「ほうほう この針の先をNの表示に合わせてWの方向に進めば西に向かうのか?」


なかなか飲み込みが皆はよい、これで左程方角的には狂うこと無く大草原に到着できると思う。

川は西方面に流れていき、途中から大きく向きを変えてあちこちと流れるみたいだ。

本来なら川沿いの道を作ればよいが、蛇行の程度によればどれほど距離が無駄になるかわからないのだ。


「一度誰かとこの磁石片手に大草原に向かってみたいのだが?」


出来ればそうしたいが何せかなり遠い場所にある、往復するにもそれなりの時間がかかる事になる。


「それに水の確保もあるだろう?基本的に川の近くが飲水確保には一番だぞ」


確かに、千名を超す人数だ。いくら道が直線で近くても飲水が確保出来なければ大変な事になるな。


「これはこれで使える道具だ、部分的に道をカットして短縮するときにも利用出来る」


そうだな 道を作っている最中に斥候が確認に先に進んでの情報確認に使えるか…。


「それにだ 斥候が万一道に迷っても無事に本隊に戻る事も可能だろう?」


無論通常は斥候は迷わぬようにあちこちに目印をつけて進んでいるが、確かに万一の可能性時にも有効に使えるな。


「安全の為に川の向こう側に道を作っても、大量のゴブリンに出会い、逃げ出して方向がわからなくなる場合も考えられるしな」


そうだ そうだと妻達は笑い出す、無論妻達数名が組めばゴブの百体程度は鼻歌交じりとは思うが。


「で いつから工事が開始されるのだ?」


正式に奴隷の借り出し要請とここまでの移動距離を考えると、最低二ヶ月後から開始か?


「わかった それまでは畑も一段落つきそうだな」


妻達の頭は種まき後の行動を思い浮かべているらしい、頼りになります 今後とも宜しく。




殿下の行動は早かった、早速陛下に向けて今までの結果報告と大量の奴隷貸し出しの件を早馬を飛ばしていた。


「ほほう 流石グレイシアじゃな、見事ユウゾーの首に縄をかけたと見える。あっぱれじゃのう、あの性格は誰に似たものか…」


そんな陛下の手紙を見ながらの独り言に、近くに居た近習達が苦笑いをしていた。

恐らく現陛下の血を色濃く伝えているのは、グレイシア様だと皆が昔から噂していたのだ。


そんな内輪話は別にして、手紙の要望通り大量の奴隷達を大森林に向かわせる手配をすすめる陛下であった。


魔道士達は大騒ぎの有様であった、集団奴隷術は半端な消費魔法術ではない。

効率と引き換えに大量の魔法量が必要となる。


宮廷の魔道士達は数人掛かりで一度に百名に施す。

ほぼ半日かかって魔道士達は何人もの魔力切れにてへばっている仲間を介護していた。


こんな魔道士達の努力があり、チエチェ兵600名+ボルカ兵500名が大森林に向かったのはほぼ一月後の事であった。

人選段階にて労働に耐えられる者をふるいに掛けた結果である。

馬車で移動してもユウゾー達の済む場所には半月必要であり、歩きではなかなか遠い大森林…。


脱走対策にボルカ兵の中でも特に優秀と思われる百名を選んで、簡単な装備と武器を貸し与えて警備兵としての役割を与えた。

これは大成功で、この百名は特にチェチェ兵達に今までの恨みとばかりに、厳しい監視の目を光らせていた。


監視されている主にチェチェ兵達は流石にこの状況がどういう事なのかよく理解しているみたいで、大森林に到着するまでに一人の落後者を出さずに無事到着した。


まず彼女等は大森林の入り口にそびえる大門に度肝を抜かれ、これから進む大森林の予備知識を教えられ大いに意気地が砕かれていた。


この地域に一歩進めば生死にかかわる事をこの先も経験していく事になる。

先頭と最後部は正規兵が固めていたが中間部においてはどうしても警備の兵も手薄に成る。


その手薄を狙い魔物達が襲いかかる、魔物も頭があるらしく丸腰の奴隷兵達に襲いかかる。

警備兵が慌てて駆け寄ろうとするが魔物を避けようとする人混みに邪魔されて後手に回る…。


第一開拓村に到着する半日で数人が死亡・負傷者が10名程被害にあう。

狭い開拓村に千名を超す奴隷たちが村の一角に押しやられて休息となった。

押し合いへし合いの状態で満足に体を横にするスペースも無い状態であったが、村の外で寝泊まりしたいとは誰も申請がなかった。


この村でギルドのダンカン氏が皆を出迎えた、ここで警護の役を解任された50名はこの村に残り大門の警護に今後つく事に決まっていた。


新たに警護の兵がボルカ兵達から選抜されて今後の任につくこととなる。

ユウゾー達がいる第二開拓村まで後数日の予定になっていた。




春の植え付けが完了してようやく一息いれたユウゾー達の元に、例年通り交代エルフ達が到着した。

少し様子が違うのは、マーラとライラの二人がその手に赤子を抱いて帰還した事だ。


その赤子は皆が望んだ男の赤ちゃんである事が判明した。

いっぺんに二人の男子が誕生したのだ、その二人の前にたちまち妻達が殺到して肝心のユウゾーは皆の外から必死に赤子を覗き込んでいる。


 俺の子供なのに…。 前にも繰り返されたユウゾーの愚痴であった。 


その後まる三日間仕事はほぼ中止状態で、飲めや歌えやの大宴会が開かれた。

噂を聞いてギルマスやグレイシア様、それに村の人達にも祝い酒が振る舞われて大いに賑わった。


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