183 いざ 縁組
遅れました 投稿します。
直営店で売り出す新商品をあれこれ考えるユウゾーであった。
悩むユウゾーにちょっかいを出す飲んべぇ達。
ならばよいアイデアがあるのかと問うと、各自が勝手な事を言う。
お菓子屋を開くべきだ 気の利いた服も好みかも 料理屋はどうだ? いい男を紹介…
おい…自分の思いだけで発言するな、特に最後は寮生達か?
気持ちはわかるが自分で見つけろ…。
何だかんだで冬も過ぎ去ろうとしていた。
残雪も消えかけた頃、来訪者が訪れた。
「なぁ あの豪華な馬車はあれだよな…」
「間違えない 王室関係だな」
絢爛豪華な馬車に続いて、それなりに格式の高い馬車が新開拓村に入っていくのを妻達2名がその様子を目撃していた。
馬車の数が5台、騎馬警備の供兵が30名はいるだろうとの報告がユウゾーに届いた。
「へーえ そんなに多くの団体が?」
もしかして 例の公爵クラスの別荘地に入っていったのかな?
それにしても早春そうそう慌ただしいと ユウゾーは呆れていた。
そんな事より もうすぐ春の耕作が間近に迫っている。
恐らくもう雪は心配いらないし、色々と野菜の植え付け準備に入らねばと気分を変えて今年の植え付け予定を検討していた。
そんな気分はものの数時間後には一新された、ギルマスが走り込んできたのだ。
「おい ユウゾーいるか? 王女殿下からの伝言だ」
はい? もしかしてグレイシア様?
グレイシア様ならいつも直接この屋敷に乗り込んで来るのだが…。
「例の別荘は 王室用の別荘だったのだ!」
はい? さる公爵クラスではなく、王室用?
「ふむ 儂も騙されていた、どうりで何やら厳重な造りの注文が多かったわい」
でも 何でこんな僻地に? 警備に問題が山積みでは?
「うーむ いくらなんでも この大森林には…。いやいや そんな詮索は後日だ、いいかユウゾー 殿下様からの伝言だ よく聞け…」
伝言内容は 明日昼前に開拓村の館まで参上しろと、その折にそれなりの正式な礼服の着用を忘れずにとの事だ。
へっ?! 正式な礼服…あるかそんなもの! 今どき言われてもこの村では貸衣装屋もないし、前回と同じく冒険者装備で、無論それなりに錬金術で豪華な鎧にして誤魔化せるが…どうだろう?。
皆とあーだ こーだと騒いでいたら、玄関に誰か訪問があったようだ。
アーシャが何やら玄関先にて対応している声がする、、、。
「ユウゾー 王女殿下より届け物だ」
届け物? 皆で中身を確認すると、恐らく明日の儀式用と思われる礼服一式が入っていた。
「流石 殿下だな。 お前のことが良くわかっておるわ」
ギルマスがニヤリと笑いだす。 有り難いが、内情が筒抜けだな…。
馬子にも衣装と良く言ったもので、ユウゾーは翌日に届けられた衣装に着替えて殿下の待つ邸へと伴としてアーシャが付添で一緒に向かう。
ミーアが自分が護衛役として同行したかったと見えて、少しゴタゴタしたが他の妻達から宥められていた。 済まん 今回は王族に慣れているアーシャが適任と思うので…。
待合室にはギルマスも待機しており、3名にていざ 接見の間 に移動した。
人影が3名確認された。
中央に殿下だな、その右隣りは大臣閣下だな…左隣りは将軍閣下だ…。
それと両端に計10名の儀式兵達が並びユウゾー達を出迎えた。
ユウゾーは3名の前に進みより片足を跪いて頭を下げる。
「ユウゾー 久しぶりじゃ、ふむ衣装が似合っておるぞ」
豪華なドレスに儀式用の飾りに身をつけた殿下がにこやかに言葉をかけた。
それに対して殿下のお心遣いに感謝している旨のお礼を述べた。
「さて 先の戦において 今回一番の功労者は全員一致で ユウゾーとその仲間たちで在ることは周知の者皆が納得しておる。それに報いるために本来は城にてその労を誉め称えるのであるが、国王陛下がお前が格式めいた事を嫌がるだろうと、今回は特別に王族である妾が陛下の代理として此の地に赴いた」
おっ 流石陛下 良くおわかりで…。
城に行けば何だかんだで一月近く帰ってこれないからな、春の大事な時期の畑が心配です。
「国王陛下の名の元に ユウゾーに以下の褒美をとらす。ユウゾーを客分として 名誉伯爵を授ける」
はい?! 名誉伯爵とな…確か一代限りとして伯爵対応の身分だよな…。
「本来は 辺境伯を妾は押していたのだが、陛下がまずユウゾーが辞退して受けまいと言われてな、受ければこの国の組織人として組み込まれてしまう事になるのでな」
確かにそれは嫌だ、第一この大森林がこの国の一部として認可されてしまう事になる。
誰にも束縛されない自由な大森林が一番だ。
「よって 客分としての名誉伯爵を授け その身の組織人としての拘束はしない事を約束する。尚国より客分としての報奨を年に白金貨20枚を届ける」
およ 年に白金貨20枚?! これって一生だよな、いいのかな?
「更に 此度の報奨追加金 白金貨50枚を授ける事とする」
およよ 更に追加とは 計白金貨100枚か! 少し多すぎない?
そんな顔色を読んでいたのか殿下が小さな声で…。
「安心せいユウゾー殿、大量の敵兵達の保釈金がかなり入る見込みなのじゃ」
ああ そうかあれだけの人数の捕虜・貴族達の開放による身代金が莫大な金額になるな…。
それ以外は奴隷として売りさばかれるのかな…。
一応名誉伯爵にて問題ないか、後ろにいるギルマスにチラリと目線を合わせる。
その目線に気づいたギルマスが小さく頷く。
その様子を満足気に確認した殿下や両閣下達も笑顔を見せている。
「ならばこれで報奨の件は終わるとしよう、実はもう一つ母上から確約事あるが、この後の食事会にて詳細を述べよう」
はて? 何を陛下から…。
楽しい食事会が順調に過ぎていくが、肝心な話しがなかなか出てこない。
「そうだユウゾー これは妾からの提案なのだが、配下の兵を持つ気はないか?」
配下の兵? 農業地の拡大に兵は左程必要ないよな…。
「実は先の戦いの折に、先発隊に組み込まれていたボルカ兵達の生き残りが約5百名程捕虜になっておる。彼らは祖国をチェチェ国に奪われ何処にも帰る場所の無い兵達じゃ。彼らの希望で出てきた案件で可能ならばユウゾーの組織に組み込んで貰いたいと要望が上がっての…お前が嫌なら過酷な奴隷生活をおくる事になるのだが…」
無理やりチェチェ国の先発隊として突撃命令により多くの同胞がユウゾー達の攻撃により命が散った。
その相手のユウゾーにどうして仕えたいのだろう。
「その件には蟠りはないぞ、彼らが恨んでおるのはチェチェ国だ、ユウゾーに関してはあれだけの兵数で大国のチェチェ国を打ち破った英雄と見ておる。ほれ 大森林の森に出来たあの見事な大門とて警備の兵がおらねば宝の持ち腐れであろう。 それと聞き伝えによるとこの大森林の果にそれと匹敵する大草原が広がっておると聞いておる。そこの開拓に着手する気はないか? 現在お前は官位はあるが大掛かりな土地は所有しておらぬだろう? 是非開発に力を入れればお前の土地として皆が認めるであろう、そして…」
少し 待ってくれ、藪から棒に急に何の話しになるのだろうか?
話の展開についていけず困惑しているユウゾーがいた。
「ははは 姫殿下 それはあまりに話しが急展開で御座いますぞ、ユウゾー殿が困惑しておりますぞ。まずは何故その必要があるかのご説明をせねば始まりませんぞ」
大臣が姫殿下の話を遮ってにこにこ笑いながら殿下を嗜める。
「う うむ そうであったな、唐突すぎたな。 そのユウゾー 実はな… 陛下が認めてくれたぞ。いや今までも反対はなかったのじゃが、その…正式にな 陛下が構わんとおっしゃってな…」
えーと 姫殿下様、急に滑舌が悪くなりおっしゃっている意味が良く分からずに不明なのですが、いったい何を陛下がお認めになられたのでしょうか?
「決まっておろう、お前との縁組じゃ」