181 いざ 村へ帰還
第二部完了します。第三部は暫し再開まで時間がかかります。
尚 その男 異世界帰り[異世界編]は今後週に数回の投稿予定になります。
敵の指揮官は突然の敵兵が前方に飛び出し何やら構えている姿に判断を誤ってしまった。
100名を超す攻撃砲の発射により、たちまちの内に敵陣は阿鼻叫喚の悲鳴が湧き上がる。
1発の威力が直径50米ほどの被害を巻き起こす。
それが一斉攻撃にて100発以上敵陣に到着したのだ。
敵陣内は完全に狂乱状態に陥り、敵兵の多くが無残な姿を晒していた。
たちまちに敵弓矢部隊3千名は制圧され、後方に控えていた突撃兵も二度目の砲撃によりズタズタに引き裂かれていく。
さらに続けて三度・四度そして五度の攻撃を受け敵兵は完全に戦闘意識をもぎ取られ半狂乱に追い込まれていた。
「な 何をしておる。騎馬隊突撃せよ!!」
ようやく敵からの攻撃が一段落ついて我に返った将軍が怒鳴り散らし、同じく我に返った各指揮官が忙しく命令を部下に下した。
後方にてあっけに取られていた騎馬隊員もようやく気を取り直し、各隊長の元雄叫びを上げて突撃開始となった。
本来味方の両脇から駆け抜ける騎馬隊であるが、前方はどこも味方の兵の死骸が累々と溢れている、いつしか走りやすい中央部に集まり敵目がけて突進していた。
「今だ 騎馬隊殲滅開始」
ユウゾーの号令と共に両脇の岩山から30発の攻撃砲が騎馬隊に注がれた。
再び轟音が辺りに響き渡る、大量に弾け飛ぶ馬の姿が確認され、その威力と音に無事な馬たちも大暴れして騎士兵達が次々と大地に叩きつけられ、満足に動き回れる兵達は激少する。
「今だ突撃開始!!」
味方の兵達もあまりの威力に呆然と事の成り行きを見ていたが、味方の将軍が大声を上げて自軍を叱責すると全軍に依る突撃戦が開始された。
「うおー ようやく俺の出番だぞ!!」
何処かの都市のさるギルマスに似た者が大声を上げて傭兵団の先頭を走り出した。
それに続いて正規兵達や騎馬隊が一斉に雄叫びを上げて手柄を求めて動き出す。
「よし 前方の五名は急ぎ山道戦に備えて」
タイゾーは今だ混乱している敵部隊に向けて攻撃しながら指示を出す。
敵の敗走に備えて山道に殺到する敵兵の殲滅戦を行うためだ。
「「「 おおーう 」」」
5名のエルフが立ち上がり岩山を駆け出す。
残りは味方の兵が到着するまで岩山から定期的に攻撃をあらゆる場所に行い混乱状態を長引かせていく。
完全に浮足立った敵兵達は到着した味方の兵達に次々と倒されていた。
逃げまどう敵兵に容赦なく襲いかかる味方の兵達の凄まじい攻撃。
そんな様子を絶望の顔で眺めていた敵将軍が、軍師のアドバイス通り撤退命令を出したのは当然の結果であった。
残った兵力は相手の総数と大差はないのだが、勢いが違っていたのだ。
既に敵方の兵は完全に戦う意思を放棄している様に感じられた、皆が退却の一声を待ち受けている状態に置かれていた。
完敗だ…。 国に帰っても厳罰が待っているであろう、なれどこれ以上は味方の兵を失うわけにはいかない。
それは軍師と呼ばれている者も同じであった、この者は一人ぶつぶつと呟いている。
騙された…敵は更に強力な武器を隠しておった…。
嘘だ… こんなのは戦いではない 私は認めない…。
味方の兵達に背中を押されて山道に向かい出す。
狭い山道に我先とチェチェ国の兵達が押しかけて、当然其の場は大混雑の修羅場に変わり果てていた。
誰もが人より早くと他人を押しやりついには仲間同士殴り合いまでに発展する件もみうけられる。
順に並んで退却すれば結果的に早く退却出来るのだが、そんな簡単な事も理解出来ぬ頭なのかと遠くから一連の動きを見ていたユウゾーはため息をつく。
結果的にそんな自己中心的な行動に最後の鉄柱が振り下ろされる事になる。
その現場に追いついたエルフ達による新型銃と新型砲による情け容赦ない攻撃の雨が兵達の頭の上から雨の如く降り注いだ。
其の様子を敵兵とは言え残酷な情景が其の場にて展開する事になり、号令を発したユウゾーはその場から目を逸らしてしまう程であった。
一連の攻撃が終わった後は累々たる死体とまだ死にきれぬうめき声の上がる修羅場が展開していた。
このエルフ達の一斉攻撃を受け、運が悪いと言うか当然の結果というか避難中であった敵側の将軍と軍師と呼ばれていた者も非業の死を迎えていた。
そして多くの敵兵はあまりの攻撃に腰を抜かし呆然と座り込み抵抗を放棄して降伏の道を選ばざるをえない状況に追い込まれた。
それでもそれなりの兵が当初この場から脱出が出来、故郷の国に懸命に山道を逃げ去る様子が見受けられた。
「何だ この投降した敵数は…下手すると連れて移動も困難な数だな」
自分達の数に匹敵するほどの降伏兵の処置に困ると、何処かのギルマスに似た女は大量の返り血を浴びた剣を仕舞い込みながら呟いていた。
この戦いで傭兵たちの動きは素晴らしいものがあり、すべてこの者による指揮にての戦いぶりでかなりの目についた動きであった。
「上から見ていましたが、素晴らしい戦いぶりでしたね」
ユウゾー一行が岩山から降りてきてその者に声をかける。
「馬鹿を言うな すべてこの戦いはお前が提供した武器とエルフ族達による活躍が全てだ。俺達はお前達の作った演出の中の一役者にしかならないわ。さて俺達はこれでお役御免だ、挨拶してオレオンに引き返すぜ」
他の傭兵たちもかなりの分捕品に顔を綻ばせながらユウゾー達に挨拶して軍の責任者の方角に歩いていく。
妻達や各村のエルフ達もユウゾーの元に集結して一連の降伏兵達の動きを見ていた。
勝利と言えばこれほど見事な勝利もそうは無いであろう。
流石にこの報告を受けてチェチェ国も第二の侵略隊を派遣する気は当面起きそうにはないと思われる。
頼むから平和な日々をと心から思うユウゾーである。
「此方でしたかユウゾー殿 あちらで将軍が探しておいでです」
連絡の兵に案内されてユウゾー達は軍の指揮官と面談した。
「おうおう ユウゾー殿、此度のご活躍を陛下に代わり厚く御礼いたします。これ以上ない見事な戦いぶりの指揮、ただただこの私を始め皆が感謝しております。誠にお見事の一言しかありません…」
ユウゾーを讚美する声があちこちから湧き上がる、引きつった顔で愛想笑いを浮かべながらユウゾーは皆が興奮を冷めるのを待つしか無いと諦めかけていた。
首都まで皆が同行を願うという誘いを何とかと断わり、後日報酬の連絡を受けると言う事で其の場からようやく開放された一行は、軍が用意してくれた馬車数台に分乗して一路懐かしい大森林へ移動開始となった。
一国も早く大森林へ帰りたいとユウゾー達は疲れた体を馬車内にて過ごす事となる。
途中同方向に帰還中の傭兵団に挨拶しながらユウゾー一行は懐かしい大森林の皆が待つ家へと思いを浮かべていた。
もうこんな事は懲り懲りと妻達と語り合いながら、やがて大森林の入り口にある防御門が見えてきた時には皆が喜びの歓声を上げ再度皆の無事を喜び合う事となる。
ようやく懐かしい大森林の防御門に到着した一行は再度皆で無事の喜びを交わしていた。
戦勝の知らせは早馬にてまたたく間に国中に広まり、ユウゾー達一行は各地で手厚い持て成しを受けながらようやくここまで到着した。
第一開拓村のダンカン氏もユウゾー一行の到着を首を長くして待っていた。
其の夜も歓迎の嵐を受け戦いの状況説明を集まった村民たちがそれは楽しげに聞き入る様子が恒例の出来事となりつつあった。
宴会の最中大森林の防御門の今後の使用打ち合わせ等をダンカン氏等と話し合い、翌日第二開拓村へ向けて最後の移動を開始する。
懐かしい我が家の門をくぐり抜け、ユウゾー達一行は畑仕事の最中である仲間たちに手を振る。
「「「おーい 帰ってきたぞー」」」
「「「おかえりー」」」
[第3部完]
第二部完了します。第三部は暫し再開まで時間がかかります。
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