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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
180/281

180 いざ 麓決戦

午後からも追加投稿予定です。


翌日 中・重症兵はこの場所に残し軽症兵千名が部隊の先発隊に組み込まれて峠の砦を出発する。

総勢1万3千名の軍が用心しながら麓を目指し移動開始となる。


大軍が狭い山道を通過するのはどうしても時間がかかる。

先発隊の探索が麓にたどり着いた時は最後方部隊はまだ数キロ近く後方を移動していた。

中間点の広場にさえ到達していない状況だ。

忙しく本部の将軍の元に情報が届き始めた。



「将軍 伝令よりこの先の麓の平原に敵軍5千名程集結している模様です」


「おう 野戦を希望か、返って手間が省けるか。至急下山して軍を動かし隊形を整えさせろ。敵の挑発に乗らずまず陣形を整えるのを第一とせよ」


「…将軍、気になる点が一つ。この山道を降りきった所はまだ完全に開けていない土地と報告があります」


「…ふむ 土地の広さはどのくらいあるのだ」


「確か両脇が岩山で三角洲の土地で、大平原に出る距離まで5・6百米程。横幅も平原の出口近くならば5百米程度はあると記憶しております」


「…うーん 軍が並んで行動に出るはやや不足気味かもな。なれど我が騎馬隊の機動力ならば両脇から行動するには問題あるまい。伝令に出来るだけ大平原への出口近くにて陣形を整えさせるように伝えよ。急げ!」


その命を受けて伝令が来た道を大急ぎで引き返す。

将軍の近くで軍師が浮かぬ顔にて考えている。


「どうした 軍師殿。心配事か?」


「いえ 砦の敵兵のあざやかな退却劇を考えまして、何か良からぬ策を考えているやも知れませぬ」


「…なるほどな、伏兵か?しかし少ない兵をどうやって更に分割する?儂が敵なら山道の出口から出さぬように閉じ込めて縦に長い隊列を集中して攻めるが、平野では如何せん兵力が違うぞ。弓矢部隊と騎馬隊の突撃で少ない敵数はズタズタに切り裂けるぞ」


「確かに通常は問題ありませぬが、敵は例の武器を…」


「確かにな…だがあの武器は混戦にはあまり効果がなさそうだ。味方の兵まで巻き込む武器だぞ、近距離用と思われるもう一つの武器も混戦状態に巻き込み騎馬軍団での撹乱で左程の効果もなさそうに感じるが?」


「…はい。今までの敵の攻撃距離から判断するなら、敵が籠城戦にて迎え撃つスタイルであればかなり苦戦する可能性はありますが…」


砦での攻防戦に敵の新武器が有効であったのは少数で守りに重点を置いた結果だと理解している。

混戦ならばあまり効果がないように思われる、それに騎馬隊はかなりの数を用意している。


多少の犠牲があっても一気に混戦に持ち込めば問題がないと思われる、だがと 軍師は移動する馬車内にて何か見落としがないかと考え始めた。


最終的には敵陣形を見るまでは判断が出来ぬと、麓に急ぐ兵を見ながら軽くため息をつく。



「みろ ユウゾー、敵が急ぎ隊列を作り始めたぞ」


「ふむ 味方は動きが無いな…」


三角洲の中央程に敵が集まりだし懸命に陣形を作り此方の動向に備え始めていた。

山道から続々と敵兵が下り始めている、すでに1/3程度の兵が慌ただしく持ち場につく。


やがて後続の兵の為に少しづつ敵陣が大平原に向かい歩みだす。

敵数1万数千名が陣形を作り終えるまでにはまだ時間が必要となる。


「おっ 味方が動き始めた」


敵を三角洲に閉じ込めなければ今後の作戦に支障が出る。

なれど最初から三角洲の出口に陣を構えれば敵も用心をしてしまう。

微妙な両軍の駆け引きが始まっている。


「弓隊前に進め」


味方の軍が三角洲の出口を目指しゆっくり数百米移動開始した。

その様子を見ていた敵軍は整列に乱れが出ていた。


「おい 押すな、敵の弓隊がむかってくるのだぞ」

「俺に文句を言うな 後ろから押されていんだ」

「おい 後ろは止まれ 敵だ 敵が動いているぞ」

「敵の弓隊だと 味方の弓隊は何処にいる このままでは射殺されるぞ」

「弓隊 前に来い 早くしろ 敵が来るぞ」………


敵陣が再度動きがあり、弓隊が最前列に向かい走り込む。


「よしよし 味方の動きに敵陣も歩調を合わせ始めたな」


崖の中腹に腹ばいながら眼下の敵兵の動きを見つめているユウゾー達エルフ隊がいた。

崖の両面に計30名のエルフ達が息を潜めながら事の成り行きを見ていた。


味方の弓兵が三角洲の入り口百米地点にて動きを留めた。

それを見て弓の届かぬ地点まで敵軍は自軍の弓兵を先頭にじりじりと歩みだした。

そんな様子を山道の途中で移動しながら見ている将軍達がいた。


「くそ 大平原に出るには少し遅れたか?!後少しであったのに…」

「左様 軍の先頭を弓兵にすべきでしたな」


敵の罠等を用心して捨て兵達を先頭にしたツケが響いた。

圧倒的に多い弓兵を先頭にしていれば敵の前進を気にせず障害の無い大平原勝負が出来たのだが…。


「まあよい あれだけ横幅があれば左程動きに不自由はない」


見た所、敵の弓兵は約千名ほど、対して此方は3千名近くいる。

敵の騎馬隊もせいぜい5百騎程度、此方は両端に各千騎の計2千騎が陣取っていた。

そして戦いの大勢を決める兵数は敵の三倍。


何処を見ても負ける要因がない、いや敵の新武器が唯一不安材料ではあるが…。

念の為伝令を飛ばし敵との距離を二百米以上離して対峙せよと連絡してある。

万一の遠方攻撃を受けぬ為の用心だ。


チェチェ国の後続部隊がようやく到着し、慌ただしく最後の陣形の微調整を行う。

攻めるにはまだ命令系統がしっかりしていない今がチャンスではあるが味方の陣からは動きがない。


「何故やつらは動かぬ?敵は我らが到着し陣が決まらぬ時が狙い目であろうに」

「確かに解せませんな、絶好のチャンスをみすみす…」


そう言いながらチェチェ国の軍師は辺りの様子を用心深く眺めている。

何かが可怪しいと胸騒ぎがしているのだ。


「何を辺りを気にする、両脇の岩山が気になるのか?」

「はい 何かが胸を横切って落ち着きません」

「ふむ…なれどあのような急な岩山に大人数を隠せきれるとは思えん。例の武器を使用してもここまで離れておれば、せいぜい我軍の両端に被害がでるだけであり、我軍の中央部には届きはせぬぞ」

「確かに…考えすぎかも知れませぬな」

「ではそろそろ行動に出るぞ、よいか」


互いに対峙しそれなりの時間が経過している。

両軍雌雄を決する戦いが今始まろうとしていた。

それを今や遅しと岩山の中央部にいるユウゾー達が用心しながら覗き込んでいる。


「ユウゾー敵の伝令が陣を走り回って何やら伝えておる」


「うん そろそろ始まりそうだな。みんな宜しく頼むよ」


片方の岩山に15名のエルフ達が腹ばいになりその時を待っていた。


「ユウゾー 敵が動き出したぞ!」


ミーアが隣で作戦開始した敵軍を見て思わず小声で話しかける。




「おっ 敵が動いた、此方も前進!!」


味方の兵は横に長い陣形をとり、そのまま全軍前に足並みを揃えて歩みだす。


「いいかい 作戦通り進んだら攻撃開始するよ」


前方の陣内にいる妻達とエルフの10名それと味方の兵に届くようにニーナの声が響く。

やがて両方の陣が弓矢の届くギリギリの地点にてにらみ合う。


と 同時に味方の弓兵達に隠れていた100名ほどの兵が急に前に飛び出し中腰に構える。

飛び出した兵達は全員()()()を構えていた。


まだ正確には矢が届かないギリギリの地点だ。

敵に被害を与える為には少なくとも互いにもう10米は距離を縮めねばならない。

そんな計算をしている間に敵からの動きがあったチェチェ国の指揮官達は少し狼狽えていた。


 なんだ あの者達は?無駄死にの馬鹿兵達か!

 いや 違う! 砦での戦いを忘れたか、敵の新武器だ!!

 そうだ こちらも攻撃開始だ!!


現場指揮官達がようやく事の大きさを自覚する。

だがそんな一瞬の判断遅れが被害を大きくした。

相手の兵からとんでもない攻撃が襲ってきたのだ。


午後からも追加投稿予定です。

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