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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
176/281

176 いざ 砦攻防戦1


峠にある砦に向い敵の大軍が山道を進んでいる。


次の朝早くに敵からの使者がまずは到着して伝令を大きな声で砦に向けて口上を述べる。

ようは 降伏して砦を引き払えと言う事だ。


 口上はよい、通りたければ力で通れ と砦の守備隊長が怒鳴り返す。


それを聞いて使者はうすら笑いを浮かべ引き返していく。


 完全に此方を舐めているなあの態度は…。


砦を守る守備隊の皆がそう感じていた。

無理もない敵は万を超す軍団、此方はエルフ達の支援を入れても五百名ちょい。

一捻りとおもっている筈だ。



やがて多数の人数に依る重々しい鎧の擦れる音が少しずつ大きな音になり響いてくる。


「くるぞ 皆打ち合わせ通り新魔法銃の弱モードに切り替えてくれ。攻撃距離にも注意だぞ、決して前方の広場より先に打ち込むな」


ニーナが10名のエルフ達に指示を伝える。

新型銃はその気になればかなり先まで届く、なれど敵に新型銃の有効距離と破壊力は隠しておきたい。

後に麓での決戦に備え誤った認識をもってもらいたい為だ。


それでも新型銃の弱モードであっても、現在の手榴弾に匹敵する威力はある。

恐らく今後の戦いはこの兵器に対応する作戦を練って来るものと思われる。

しかし今現在は敵もこの新武器の威力が不明の段階だ。

それなりの犠牲を払う事になろう。


槍と盾を持った兵達が次々に姿を現す。

彼等は指揮官の指示の下、広場の横いっぱいに並びだす。

砦まで約150米地点であろうか、砦からの矢が届かぬギリギリの距離だ。


次から次に兵が広場に並び始める。其の数は千を超えた。

そして弓兵の登場だ。並ぶ 並ぶ…。これも楽に千を超している。

その後方に広場に入りきれぬ突撃兵達が出番を待っている。


「うん? あの兵達の鎧は…」


敵の様子を見ていた守備隊長が何やら気づいたようだ。


「何か気になる点が?」

「はぁ あの鎧はチェチェ国のではなく、恐らく攻め込まれたボルカ国の者かと…」

「ボルカ国? おうあの国は策略により殆ど戦わずに降伏したのだな、つまり…」

「…捨て兵でしょうな」


降伏した元敵兵を先発隊に組み込んで敵との戦いに挑ませる。

よくある作戦だ、自国の兵は温存出来るし元敵兵も戦いで自然に数が減っていく。

だがチェチェ国には痛くも痒くもないからな。


「そうか 彼女等には恨みも何もないが、仕方あるまい」


敵の手先になるのならそれは敵と同じだ、倒すのみ。

号令がかかり敵の弓矢部隊が前面に歩み始めた。

互いの矢が届く距離まで近づき 矢合わせ を行うためだ。


矢による一斉攻撃で敵の数を減らす、ごく普通の前哨戦だ。

当然矢を射る数が多いほうが有利となる。

此方は5百 たいして敵の弓兵は千以上、なれど…。


「狙え…敵の弓矢部隊を殲滅するぞ」


ニーナが敵の動きを図っている。

やがて敵の弓矢部隊の歩みが止まり、号令により一斉攻撃の準備に入る。


「…今だ 攻撃開始!」


ニーナを含む11名のエルフ達の持つ新型銃から一斉に発射された。

たちまち辺りに轟音が響き敵の弓矢部隊から悲鳴が響き渡る。


1発毎に敵が10数名爆裂に弾き飛ばされる、即死はその半数程であろうが残りも怪我を負い転げ回る。

被害は人的だけに済まず、その爆裂により弓の弦が壊され武器の使用が不可能となる。


弓矢部隊の後に待機していた突撃部隊の面々は、あまりの惨時にしばし仲間の救出も忘れ呆然と立ちすくんでいた。


やがて後方の指揮官がようやく正気に戻り突撃部隊に命令を下す。

その声に後続兵も盾と槍を構え直し叫びとも悲鳴ともつかぬ声を上げて突撃開始となる。


「よし 矢を射て!!」


守備隊長の号令が発せられ砦より突撃してくる敵兵目がけ矢の雨が降りかかる。

バタバタと敵兵が矢の標的となり倒れていく。

エルフ達も更に銃を撃ち続け、辺りは敵の悲鳴と爆音が響き渡っていく。

なれど敵は数に物を言わせ次々に広場に新手の投入が開始されていた。


「よし 6名は下に移動して予定通りサイコガンにて近寄ってくる兵を殲滅してくれ」


「「「おおーっ」」」


6名が急ぎ下へ向かう、上は残りの5名と砦兵が懸命に敵に向け攻撃をしている。

新型銃と矢の雨を潜り抜けてきた敵は柵の小窓からサイコガンによる連射を受けて死体の山を築いていた。



そんな戦いの様子を安全な岩陰から見ている数名の者がいた。


「ほうほう あれが報告に上がっていた新武器か、なかなか面白い」


「軍師殿 面白がらずにどう対応すればよいか教えて下され」


中年の女が興味深そうにしきりに頷いている、それを咎めるように将軍クラスと思える者がしかめ面にて尋ねている。


「まぁまぁ 焦らずにしっかりと見極めねばな。都合の良いことに此方には失っても左程困らぬ兵がおる事だし、次の者達を投入して下され」


渋々将軍と思われる者が右手を上げて、兵のさらなる投入を急がせる。


「うむうむ 遠方からの攻撃はあの地点が限界かな? およそ二百米と見た。あれは威力的にはかなり厄介な物だな、従来の纏まった攻撃は不利だな、、なるべく広がって被害を少なくせねばな。もう一つもこれまた厄介な武器だな、なれど盾を二重にすれば防げるやも。あれは近接用の武器か?!」


頻りに一人で頷きぶつぶつと何やら呟きだす。


「軍師殿…」


「おう そうだった、一旦引かせてくだされ。次は少し策を試して見ましょう」


太鼓の号令が響き渡り、その音に素早く反応して敵兵達は一斉に退却し始めた。


「うん? 一旦引き始めたな…」


やれやれと砦の守備兵達も一時的とは言え追い返した満足感に浸っていた。


「今のうちに怪我をした者の手当と、敵の動向を見逃すな。エルフ殿 ポーション関連に不足あれば我が主君よりかなりの量を預かっておりますので遠慮なく…」


「おお それは有り難い、なれど私共も十分な量を用意しておるので、不足時には良しなに」


実際心配性のユウゾーから限りなく上級に近い中級ポーションと魔力回復用のポーションを一人あたりかなりの量を持たされていた。

マナポーションを飲みながら使用したマガジンの魔石に魔力を注ぎ込むエルフ達であった。


改めて前方の広場を覗き込むと敵の死体が累々と広がっていた。


「ほぽ5百体以上の死骸だな、それと負傷した兵はその数倍はおるはず」


「此方は死傷者はなく負傷兵が20名程で済んでおります」


負傷兵はポーションにて程無く回復するだろう、これほどの怪我人の違いが出たのは当然武器の性能差にもよるが、厄介な弓兵の殲滅が上手くいった事が大きい。

敵からの矢攻撃が殆ど飛来して来なかったのだ。



「隊長 敵兵に動きがあります」


物見台より敵の動向を伺っていた兵が大きな声で異変を告げる。


「来たか 全員持ち場に戻れ!」


砦内に慌しい気配が満ち、それぞれが所定の場所に戻り敵の動きを確かめるべく山道より上ってくる敵兵に刮目する。


「おう なんだあの陣形は?」


敵兵が続々と現れ陣形をとり始めたが今までと違う動きを見せ始めた。



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