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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
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169 いざ チェチェ国の動向


新しく来たエルフ達の配属も終わり、敷地内には予備兵としてのエルフ10名が畑の手伝いと及び訓練を兼ねての魔物狩りに汗を流している。


新たに加わったミューの同族5名も主は畑の手伝いだが、今後は様子を見ながらサイコガンを貸し与えようと考えている。


一応念の為思念力を確認したがカリナ達と左程違いないレベルである。

それでもサイコガン最大にしての攻撃力は通常の弓攻撃の数倍程度には見込める。


カリナ達3名にはサイコガンの他に新型銃も貸し与えているので、万一このユウゾーの敷地を守る際には問題ないのではと思っている。


それは春の植え付けが一段落した時に、突然にギルマスより一報が届いた。

チャチャ国がとうとう動き出したとの知らせであった。

皆がギルマスの説明を聞くために集まる。



二週間ほど前に同盟国として残っていた国と共同して、敵に寝返った国に国境を越えて進軍開始したとの事である。

ほぼ一年国境に近い場所にて威嚇演習を再々実施していたが、今回ついに動いた知らせが入った。

細かい詳細は続報を待つしか無いが各国が警戒体勢に入った模様だ。


「うーん 続報を待たねば何とも判断がつかぬが、かなり計算された動きかも…」


前回ステア国により不本意な結果を招いたのが相当堪えているといると思われる、只の力押しならお里が知れるが、今の今まで演習以外にはこれと言う動きが無かったと内偵の者からも報告が入っていた。


その内偵者を欺いていた様子が見られる。

余程前回の戦いが堪えていたのかも知れない、つまり単なる戦闘バカでは無いと言う事になる。




上記の予想が正しかったと判断されたのはさらに一週間後に報告が届いた時である。


「なんと 制圧が完了しただと?!」


ギルマスに届けられた報告はすでにチェチェ国が他国に攻め入り目的を果たしたとの知らせであった。

依然詳細は不明ではあるものの他国の攻略に成功をした模様だ。


あまりにも呆気ない勝利であった。

これでは他の国から支援する暇も無かったものと思われる。


 な なんだこの手際良さは…。


前の戦いでステア国に手こずり苦渋をなめたのが嘘のようだ。

次の報告を待たねば全容が分からぬ。

ギルマスは多少イラつきながらユウゾーの家に向かう。




事の全容が判明するまでに紛争勃発から一月経過する。


「なる程 国境にて演習をしていたのはおとりの陽動作戦であったのか。中心部隊は同盟国経由にて密かに侵入して時を待っていたと」


「さらにじゃ、この一年にて敵内部の切り崩し工作を進め、怒涛の進撃にて王都を包囲するや籠城する内部から裏切り者が火を放ち同士討ちが始まる。動揺する兵達に今がチャンスと突撃するチャチャ兵に為すすべもなく殲滅された…」


膨大な届けられた書類を手にギルマスも唸りだす。


「…可怪しいな、今までのチャチャ国とは明らかに動きが違うとしか」


「うむ 推定だが、軍師が交代した可能性がある…」


話に聞くチェチェ国はあまり小細工は使わずに、正面からの攻撃を重きに置いての武力による突破殲滅が得意な国と承知していた。


「確かに だからこそ今回軍師の見直しを行い作戦を進め、見事に成果を出した」


ギルマス ユウゾー マーラそしてニーナの4名が主に話しを進め、他の者達はその話しを静かに聞いていた。


「まぁ そんな流れで間違えなさそうだな…」


アーシャもしきりに感心していた。

ここまで彼の国が方向転換したのも、先の戦いがかなり苦い薬になったのだろう。


「武の国から知恵の国にか…厄介だな」


「いや これが本物かはもう一戦待たねばならない、次の戦で判明するだろう」


それには各自賛成するが、次の一戦にはこの国が選ばれる可能性もある。

そうなると遊著に構えている暇など無いだろう。

無論そんな事はユウゾー達ではなく国の偉い人達の判断になるが、、。


「で この国の陛下はどう動くかな?」


「分からぬわ やんごとなきお方の判断は。只私の知る陛下なら当然従来と今回の戦いの二面性を検討して策を練るであろう」


「うーむ 上手くいけば良いがな…」


所詮はこんな片田舎での考えが中央に届くわけでもない。

ならば今自分等に出来る事から始めねばならない。


「ユウゾー 至急各村のオサにこの件を連絡していつでも支援が出来る体勢をお願いしてくれ」


「了解だ ニーナ悪いが何名かを連れて各村に手紙を届けてくれないか」


各村の出身者を1名連れて四名にて今回の顛末をしたためた手紙を持参して、これから先に起こる事案に前もって対応するのだ。


「恐らく続けて戦はないと思うが、用心にこした事はないからな」


マーラが珍しく少し苛ついている感じだ。

身重が発覚して自分の出番がないと感じているのだろう。


「マーラはそんなに悩まないでくれ、子供の胎教に悪いからな」


ユウゾーはそれを素早く判断してマーラに優しく諭す。

少し不満げにマーラは頷いた。




ニーナからの手紙に各村も緊張度が増して、村人への対応を今までにない速さで訓練の練度を上げていくと力強い返事が各村から帰ってきた。


ただエルフ内でも多少の温度差が発生しているのは事実であった。

前例通り敵が来るのをこの森で待ち受けて殲滅するのが正解と言うグループがいる、困った事に長老と呼ばれている者達がとりわけ多くこの意見に賛同する。


今までこのやり方により生き延びてきた彼等はなかなか考え方が変わらない。

先の迷人事件はあくまで異例な事で、操られて出ていった事により多大な被害が発生したと。


それらの意見を根気よく補佐役達が説得していく。

正直時間のかかる作業である。


その点第三村は多少のゴタゴタだけで一枚岩となる事ができた。

ユウゾーの祖父とユウゾー本人による信頼関係が密なせいであろう。


何より前オサのシャルル様の後押しがあり、村人の戦士達が意気高しである。

ユウゾーより与えられた各種武器の習得に若手も積極的に参加している。


チャチャ国が続けて直ぐに他国攻略には動かないとギルマス達は感じていた。

今回動いた事によりかなり食料や金子が必要になった筈だ。


チャチャ国により統治された国は当然属国扱いによりかなりの財産や食料が本国に運び込まれるだろうが、それでも先の戦いに依る損失を完全に補填する事は無理がある。


下手に悪政を行うと暴発に依る乱が発生するだろうから、当面は生かさず殺さずの統治しか手はあるまいとギルマスは考えている。


最低でも麦の収穫が完了するまでは動きはない筈、それからはあの国の考え一つだな。

麦が黄金色に色づく初夏まで後数ヶ月の余裕がある。



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