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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
164/281

164 いざ 貴族用別荘地?


ユウゾー関係者はそれなりの暮らしに満足して日々を暮らしているが、ある意味一番このご利益に関して感謝しているのはケイト母娘かもしれない。


ユウゾーと知り合う前はまさに赤貧洗うが如しの生活をしていたが、ユウゾー宅に住み込み二年が過ぎて今では増えた寮生たちの面倒を見るために新規の下働きの女性が村から通いで二人追加され、母娘の元で指導を受けている。


住み込みとしては破格の金額を母娘は頂き、ただ感謝の二年でありこの母娘も順調にお金を蓄えてもしかの準備金に回していた。


しかも母娘の身分ではなかなか無理な教育に関してもケイトは受けており、一般常識から礼儀はては高度な数字に関する事項まで将来困らぬようにユウゾーから教育の場まで提供されていた。


将来ちょっとした貴族や大店にて下働きも通用するレベルまで高める為である。


なれどケイトにはちょっとした才能が開かれようとしていた。

彼女は商人としてこの世知辛い世を渡りきる才覚が見られる。


この家に住み込んでしばらくして始めた移動屋台がもはやこの村での名物の一つになっている。

彼女はその年のわりにはそれなりの高額な日銭を稼いで苦労してきた母に毎日手渡すのであった。

母はそれに感謝して将来に独立するケイトの為に準備金となるように別枠にて貯めている。





「チェチェ国がこの所大人しいようだが…」


「だな 良いことではないか、少しは落ち着いてもらわねば」


ギルマスがおやつを片手に木漏れ日の中で寛いでいる。


「…そろそろギルドに帰る時間では?」


「なんじゃ つれないの、用があれば呼びに来るわい」


いや そう云う意味ではなく、正直邪魔なのだが…。

秋の大収穫も間近に控えて色々こちらは忙しいのだけれども。


「なぁ ユウゾー 街の拡大をまた頼めるか?」


 はい? 今年の春に終わったばかりでは?


「いや 何故か入居希望者が多くてな…」


「…それ ギルマスのせいですよね」


「……」


 おい ダンマリかよ!


「…そういう訳で宜しく頼む」


 省略すんな! こちとら暇じゃないんだぞ。


妻達が必死に笑いを堪えている。


「…貰う物はしっかり頂きますよ」


ギルマスが渋々頷く、それなりの城壁を作るには通常かなりの時間と費用が必要となる。

ユウゾーに任せれば時間は1/100 以下、金額は1/10 が前回の支払いとなった。

正確には白金貨1枚にて手をうった。


今回もこれに類似した金額で支払うとの約束になる。

詳細は秋の収穫が終わった時に打ち合わせとなった。


今回の収穫にはエルフ15名の手が普段より見込めるのでかなり楽に終わらす見込みだ。

終われば終わったで越冬準備も待っている。

それに温室ハウスも更に二棟今回は追加して我が家と新開拓村の冬の野菜不足をカバーする。


つまり本格的な冬到来まで休む暇も無いのが現状だ。

これでまた住人が増えれば畑の拡大も検討しなければならない。


「…何故 こんな僻地が人気に?」


「ふむ 思うにこの時勢で戦火による被害から逃れたいと思う者が増えて、この僻地に避難生活を考えているものと思われる、その証拠に貴族からの申込みも何件か極秘に届いておるのだ。無論一般人達はとてつもない低金利にてこの地に家を構えることが可能であるし、お前のお陰で魔物対策もしっかりしているこの地が安全地帯とも言える」


「…戦火から逃げたいと言うのは理解するが、国を守る貴族までもが?」


「いや 表向きは別荘地の確保だ。つまり何かの時には家族だけでも避難できる手配だな」


別荘地? 言い訳にしてもかなり無理があるな、こんな僻地を…。

なれど万一に備えて金のある貴族なら別荘地の名目で避難場所を確保しておきたい気持ちは分かるな。


「そうなると今回の敷地拡大もそんな裏事情が?」


「そうだ 数名でも貴族は貴族だ、それなりの構えの家が必要になるし、今後も場合によって何人からか問い合わせもくる可能性がある」


 …厄介な相手だ、まぁ戦火が収まれば出ていくと思うが。


「と なると今回の拡大地は主として…」


「ふっ お前も感が良くなったな そうだ貴族街の住居地だ」


あいた…やっかいな事を。


「正直気が乗りませんな、来たければ勝手に自分たちで新しく土地を開拓してもらえばどうです」


「お前も意地悪な事を言う この地で勝手に切り開いて別荘を建てれば、完成した翌日には魔物により廃虚になるぞ」


ギルマスはニヤリと笑う。

その可能性は非常に高いが、正直そんな事は知ったことではない。  

「まぁ わしに任せろ、それなりの足枷は考えておる」




季節は秋の収穫時になる、ユウゾー達はエルフ達の支援の元に朝早くから夕方まで大量の穀物・野菜の仕分けに毎日明け暮れてようやく一息つける状況になってきた。


庭先には各商人から運ばれた運搬車が連日列を成し、仕分けした品を引きとって行く。

新鮮で安い商品を皆が待ち受けていた、大量の品はそれぞれの家庭が冬に備えるために塩漬けにされていく。


当然ユウゾー宅もその準備に掛かるが、ユウゾーには最大35日間保存がきく魔法袋がある。

品種別に分類して後で対応しても間に合う。

今は少しでも一般向けに多く出荷する。


この作業に一段落したら温室ハウスにて各種野菜を植え付けていけば良い。

本来はこの家だけの為にハウスを作ったが、目敏い者から分けて欲しいと頼み込まれ、何棟か新しく今年から作った。


まぁ 村の予備野菜に近いものだ、なれど街の食堂や宿屋からも頼み込まれ、希望する品種をハウス栽培する契約も結んでいる。


ハウス内にて生産できる数はさほど多くないので、まぁ冬の臨時収入稼ぎ程度だ。

手間暇と収入を考えれば魔法袋の中古品作りの方がはるかに効率が良い。

なれど村の人々が健康でまた春を迎える事が出来る方がそれに勝る嬉しい事案だ。



本格的な冬支度に入る前にギルマスとの約束を実施する。

外壁を東方面に横百米✕縦二百米をあらたに築く。

この地が一応お貴族様エリアとなる。


あくまで別荘地扱いなので、各土地は最低限に分割される。道路を別にして5区画分を用意した。

通常考える別荘地とは違い狭い居住区になるが我慢して欲しい。

それでも庶民の家なら数件分以上の土地を利用できる。


文句があるなら自分で開拓どうぞ。

その後の保証は出来ないが…。

まぁ 本気で住む気はないだろうしな、あくまで万一に備えての考えであろう。


後から判明したが、森の近くの第一開拓村も何名かの貴族により買い占め状態になっていたそうだ。

そこに溢れた貴族がこの地に目をつけたらしい、何ともはや…。


色々な思惑をそれぞれが抱えて秋も深まっていく。




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