161 いざ ダンジョン派遣
ユウゾー達は今後起こる争いの場について話し合っていた。
少しでも有利な場所にて敵を迎え撃つ必要があるからだ。
なれどこの異世界において新参者であるユウゾーには土地勘はまったくと言ってない。
全ては長い寿命を持つエルフ族に任せるしか無いのだ。
特にギルマスは若い頃から自国以外にも動き回った実績に期待するしか無い。
マーラ達も他国は出歩いたことは少ないがこの自国内は結構若いうちに歩き回った事があるらしい。
戦場はこのユーラシア国内になる可能性が大だし、土地勘もある事になる。
「それはそうとしてキリアーナが何か相談事がありそうな気配だったぞ」
ギルマスが?新開拓村の拡張工事の件かな、何やらそう言えば騒いでいたな…。
明日にでも尋ねてくるだろう、厄介事じゃなければ良いが。
「ユウゾー 手は空いているか?」
翌日予想通りギルマスがおやつ時間に現れた。
まるでこの時間帯を狙ったような訪問だ。
「…厄介事は高額になるが?」
「なんじゃ 新開拓村の発展はお前達にもプラスになるだろう。安い金額で引き受けろ」
やはり厄介事か…。まぁ話し次第だな。
話しは新ダンジョンの件だった。
この春先から去年の初冬に見つかった新ダンジョンの攻略が開始されたが、規模としては中級レベルなのだが、この地区は魔物のレベルが高く同じ種族とは思えぬほど凶暴で冒険者たちも手を焼いているらしい。
兎に角怪我人が続出で30階層以下は今だ未踏破の状態だ。
出てくる数も桁違いでベテランの冒険者たちが5・6パーティで挑んでもよい結果が出ない。
幸い死者は出ていないがこのままではいつ悲報が入るかとの事。
来週にも再度合同パーティにて遠征予定があるが、それに参加して欲しいと冒険者たちからも依頼が上がっているとの事だ。
なる程 依頼は理解したが時期が悪い。いつ開戦の知らせが入るか分からぬ状態だ。
どうするかと暫し考え込み妻達の顔を見ると、何故か期待感に溢れている?…。
ああ そうか、通年であれば農作業の合間に魔物狩りを実施して適度にストレス解放が出来たが、今年は15名のエルフ達が魔物狩りを主に行っている。
妻達は発散の場が少なかったな…。
そんな折にこんな話しが出てくれば皆の期待度が一気に高まっているのか、、、。
うーむ 自分はもしかの時に動けないが、何人かの妻達とエルフ達の最終訓練を兼ねるのも悪くはないだろう。
幸い秋の収穫時にはまだ十分時間がある、妻達数名とエルフ達を派遣するか。
厳選なるくじ引きにて、アーシャとミューに決定。
同じくくじ引きにて5名のエルフ達も決定する、選ばれた者達はかなりのテンションが高まる。
お願いだから やり過ぎないようくれぐれもお願いする。
外れて悔しがる者達は今後狩りの時間を増やすので宜しくです。
翌週 妻とエルフ達の計7名は意気揚々とダンジョン攻略の旅に出かける。
全員に魔法袋の追加と各種ポーション系・野営セット・高級肉・野菜関連と各種香辛料等をこれでもかと詰め込ませた。
何なら野営時の防御柵も持っていくかと尋ねたが、全員嫌な顔をする。…解せん。
冒険者たち5パーティと共に早朝の森に足を踏み込んでいく。
無理するな 怪我なく帰ってくるんだぞ!
新ダンジョンは川沿いに近い、本来川に沿って移動すれば比較的安全に一週間にて移動出来るし、冒険者たちもその様に行動してきた。
ただ川は途中で大きく曲がっているので森の中からショートカットを狙えば行程は確実に早く着く。
なれどこの地区は強い魔物の出没する森を進むことになる。
命知らずの冒険者たちも安全を考えると川沿いコースを選ぶのが通常だ。
だが妻達やエルフ族は迷わず森林突破を選択した。
一級冒険者のアーシャの存在が大と、森の民エルフたちの協力により今回は妻達の提案を受け入れて、5パーティの冒険者達は先頭に進む妻やエルフ達の後ろから怖怖と着いてくる。
しかし冒険者たちの心配も半日も経てば安心感に変わりだした。
出てくる高レベルの魔物たちを鼻歌交じりにも近い状態で次々と倒していく。
後から付いていく冒険者たちはほとんど交戦状態になる必要はなかったのだ、唯一妻達の倒した魔物の魔石と売れば高い価格なる部位の回収業務に追われていた。
魔物の肉も食べれば美味しい肉のみ回収し後は他の魔物の餌として放置された。
1日の終りの野営地での過ごし方は更に冒険者たちの羨望の的となる。
魔法袋から取り出された大型テントが二張用意され、其の中には簡易ベットや寝心地の良さそうなエアーマットと寝袋が並んでいる。
新開拓村にあるユウゾーの直営店に置かれている品であることは知ってはいたが、魔法袋の容量や購入コストにより二の足を踏み、更に運べる荷や魔物の回収時を考えると余計な品は持ちたくないのが正直な考えだ。
なれど現実に大型テント内に置かれている各品を見ると購買意欲が跳ね上がってくる。
「おい 見ろよあの品々、あの品で野営すれば安眠間違いないのでは?」
「ば 馬鹿、たとえそうであっても購入にかかる金額と魔法袋の収納量を考えるとおいそれとは手が出ないぞ」
「いや リーダー、聞くことによると翌日の疲れがかなり違うと言うぞ。疲れが少なくなれば凡ミスも減るしそれによる怪我も防げることになる。ポーション関連の使用量も減らせるのでは?」
「そうだ そうだ。それに私はこの前店の店員に価格を聞いたことがあるが、思ったほど高い価格ではないぞ。魔法袋もあの店では中古品がたまに置いてあるし、私も一回り容量の大きな袋を購入した。ここはパーティ用の装備袋の買い替えを検討してくれないか」
「まったくだ、今回このクエストが成功すればギルトからもそれなりの報酬が追加される。リーダー決断時だぞ」
「う うーむ 確かに成功すればそれなりの報酬がでるな…」
他の各パーティ員も同じ様な事を皆がコソコソと話し合っていた。
そんな冒険者たちの話し合いとは別に妻達は妻達で不満を語り合っている。
「なぁ アーシャ、贅沢な事と理解しているが、ユウゾーがいないと手料理と何より1日が終わった後の風呂での疲れを抜くことが出来ないな」
「うん それに関しては我らエルフもこの村に来てから食事と風呂の大切さは身に染みている。出発して初日でもうあの村へ早く帰りたい気分だぞ」
アーシャとミューの会話にエルフ達も加わり夕食を食べながらワイワイと姦しい。
「そうだ イリーナお前は土魔法が使えるだろう?何とか風呂場を作れないか?」
「うーん 左程スキルは高くないのだ、ユウゾーみたいに出来るかな…」
「「「何事も経験だ。多少の不格好は許容範囲だ。風呂場が出来れば水と火の魔法が得意な者もいるし、是非とも挑戦してくれ!」」」
皆からの圧倒的要請を受けてイリーナが四苦八苦しながら風呂場もどきを完成させる。
出来上がった風呂場もどきに皆が歓声を上げる。
続いて水と火の魔法にてお湯を沸かし、大喜びで皆が順番に風呂へ入り1日が終わろうとしていた。
大森林の森に妻やエルフ達の楽しそうな歓声が響き渡っている。
その様子を冒険者たちが羨ましそうに眺めている姿があった。