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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
157/281

157 いざ 帰還へ


ユウゾーは城の防御要員としてエルフ族の採用を提案する。


「う うーむ エルフ族とな…」


大臣を始め将軍もとたんに口ごもる。

理由は予測出来る、たしかにエルフとは最近不可侵条約を取り交わしたが、契約紙一枚で数百年に及ぶわだかまりが直様消え去るわけではない。


数百年前に時の迷人にエルフ達が操られて国家転覆未遂にまで発展した。

時の王国はこれが原因となって滅び、現国家が誕生した。


王族関係は左程のこだわりは少ないが、当時滅ぼされた残党はその後新国家に吸収され今日に至る。

つまりこの国には当時のドタバタの子孫がかなりおり、長年の不信感が積み上がっていた。


後日エルフ達も迷人に操られていたという真相に気づいたが、あまりに多くの血が互いに流れたのも事実であり、現代までわだかまりが残っていたのもある意味仕方がなかった。


ユウゾーは可能ならこのわだかまりを取る良いチャンスが今回出来たと考えていた。

互いに協力して外敵に向かう、これにより互いの信頼関係を再構築出来るのではと考えた。

それ故何としてもエルフ族の参入をと思い提案したのだ。


「う うむ 確かに互いに不可侵条約を交わした事で過去の精算は終わっておるのだが…」


大臣としては理屈はわかるが感情が今だ整理出来ていない事を杞憂していた。

将軍も同じであり、敵対はなくなっているが部下にも今だ感情がまだ残っている事を心配している。


陛下はそんな二人の葛藤を黙って見ていた。



「そ その件はまずはこの城に本当に新型銃を操る者がいないかを確認してからでよろしいでしょうか?!」


ようやく対応案を考えついた大臣からユウゾーに提案があった。


「どうぞ。 先に確認した騎士様3名がたまたまと言うこともありますからね」


ユウゾーは大臣からの提案を受けることにした。

その返事にほっとした表情で明日からでも手の空いた者達を中心に適正検査を実施する運びとなる。


其の様な流れを確認した陛下は直様ふれを出して調べるように各担当者に伝達させる。


「ユウゾー殿 ある程度の数を調べるのに数日必要ですが、よろしいでしょうか?」


滞在期間と再度の話し合いが必要になる事の確認だ。


「はい まずはお気の済む事が必要と私も考えますので」


その後この話は一旦棚上げとなり、新型銃の威力を確認のため中庭に移動となる。




「「「す 凄ざましい…」」」


百米以上先の標的に向かって発射された新型銃の威力に、見物者を含め10数人の関係者から恐れにも似た悲鳴が湧き上がった。

皆が呆然と新型銃の威力を間近に確認する事になった。


「ユウゾー殿 凄い これなら多数の敵相手に一歩も引くことはありませんな」


将軍は嬉しそうにユウゾーに話しかける。


「敵の騎馬隊や弓兵を優先的に倒せばかなりの勝ち目がでるかと…」


「うーむ 何としてもそうなるように作戦を組み立てねば…」


将軍の頭はこの武器の有効活用についてフル回転しているようだ。





翌日 王宮の中庭には手の空いた兵士で埋まっていた。

一番先端には長テーブルが3つ置かれ、一つのテーブルには一丁の新型銃が横向きに置かれている。

銃の何処を触っても鑑定には問題ないので一度に二人が鑑定できる様になる。


一つのテーブルに鑑定者も2名配置され計6名それに待機の6名の合計12名の鑑定者が集められた。

一人の鑑定者で7回程鑑定すれば魔力が切れる。

直ぐに待機の6名と交代して鑑定を続ける。その間にマナポーションにて回復して一休みする。


そんなルーチン作業で集まった兵士たちに対応していた。


「「「「おーい 早くしてくれ、休憩時間がなくなる」」」」


待たされている兵士から不満の声も上がるが、何百人の兵士達を見るにはいくら時間があってもなかなか捌ききれない。


鑑定師達は汗まみれになりながら懸命に鑑定を続けていた。


ようやく最後の一名が鑑定が終わった頃は鑑定師達はほぼ全員が疲れ果て、中には倒れ込んでいる者まで見受けられた。


鑑定した結果を事務方の人間が懸命に集計し、大臣の手に届いたのは午後も遅い時間だった。


「どれ本日の集計が届いたのか、さてさて結果はいかに?」


とどけられた集計に目を通すと愕然とした表情になる。


「何と413名の鑑定で適応者は1名じゃと?!」


あまりの結果にしばし呆然となる大臣であった。


「うーむ あ 明日も実施だ」


おもわず大声になり部下たちは明日への準備にとりかかるのであった。



翌日も続いて鑑定が行われ、夕方には結果が届けられる。


「何と392名実施で適応者は3名とな…」


目の前が真っ暗になる大臣であった。




その翌日緊急会議が招集されてユウゾー達も呼ばれて参加する事となった。

その席にて二日間に渡る適任者検査の結果が報告される。


「ふ 二日間に調べた人数約800名、そのうち適任者と思われる者はわずか5名…」


読み上げる大臣の声も次第に小さくなる。


「ふむ 兵全員ではないが約1/5を調べた結果がそれか?」


陛下が何故か微笑みながら大臣に問う。

大臣が 左様です と力なく答える。


「ならば当初のユウゾー殿の提案通りエルフ族の協力をお願いする他ないの」


大臣は項垂れながら それしかありませぬ と言葉を続ける。


「よし ならばこの件に関してはユウゾー殿に一任する。よいな」


大臣・将軍及び筆頭政務官が承諾した。

その後今後の動きを話し合い会議は無事に終了となる。


 やれやれ これで森に帰れるとユウゾーは軽く背伸びをした。、


「そうそう グレイシアが会いたがっておるぞ、顔をみせてやれ」


陛下が帰りしなにユウゾーに声をかける。




結果的にはその後数日を王宮にて過ごす事となる。


ようやく大森林へと向かう事ができたのは王都到着後一週間が過ぎていた。

簡易ではあるが帰りの馬車も手配してくれて、ユウゾー達はようやく一息を入れることとなった。

一応念の為護衛兵も3名同行してくれた。


申し訳ないが宜しくお願い致します。


馬車の内部にはユウゾー達のみであり、用がなければ馬車の従者も対応しない。

馬車内部は3名の完全個室になる。


「そうだユウゾー あの時エルフ族を推薦してくれたのは有難う」


ミーアが当時の事をまた思い出して礼を言う。


「よせ 何度もあれから幾度も礼を言われると照れるよ」


「ははは 何度でも礼をいわせてもらう。オサが聞いたら喜ぶからな」


「実はその事でもう一つ狙いがあったのだ」


「小僧 それは只人にあの銃を極力渡したくなかったのだろう?」


ギルマスが小声で会話に混じりこむ。


「ピンポーン 正解だ。流石年の功」


「黙らんか 馬鹿者め。失礼な奴だ」


「えーと それはどういう事だ?」


ミーアが疑問を口に出す。


「大した事ではないが、今は共通の敵がいるが将来王国が森に手を出す可能性もあるだろう?」


「ああ 万一に備えた?」


「そうだ あんな武器を大量に持っているエルフ族と争いたくはないと思わせる為だな」


「そうか だから適応者の数値を高めに提示したんだな」


本来 城に提示した適応者の思念力値はかなり高めの数字である、その証拠に我が家で一番低い数値のミューは120そこそこしかないが、それなりの威力をあの新型銃は発揮する。


わざとハードルを高くして銃を所有する事の困難さとエルフ族への今後の対応改善、そして森への進出野望を未然に防ぐ事をユウゾーなりに計算してみたのだ。


「うん ユウゾーに感謝だな 争いは無いにこした事はないからな」


馬車はそれなりの速度で懐かしい大森林へ向けて進んでいく。




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