156 いざ 鑑定
城からの手紙が届きユウゾー達は迎えの馬車に乗り込み一路王都へ向かう。
王都への長旅はようよう終わろうとしていた。
「ふう ようやく王都に到着するのぅ」
ギルマスは長旅で固まっていた体を揉み動かしている。
あと半日で10日間のこの旅から開放される。
若いミーアも狭いスペース内の10日間はほぼ限界に近いものであった。
無論ユウゾーもこれで暫くは馬車生活から開放されると3名は安堵の表情を浮かべていた。
堅牢で高い城壁が視線に入り始める。
思わず見惚れる城壁で、ギルマスにとっては見慣れた城壁であろうが残りの二人には白く上品さも感じる外壁に馬車の窓から驚きをもって眺めていた。
「凄いな…」
「綺麗…」
近づけば近づくほど見上げる高さにそびえ立ち城壁に二人は見とれている。
「なかなかの物だろう」
ギルマスも一緒になり城壁のあちこちにある装備について簡単に補足説明をしてくれた。
(なる程 ただ外壁が建っているだけではなく防御に関しても考えられている)
考えれば日本の城も矢や鉄砲を敵に撃ちやすく工夫されている、たかが外壁なれど色々な工夫が先人により編み出されている事を再度認識させられた。
「ユウゾー殿は随分熱心ですが、我が首都の城壁は如何で御座いましょうか」
政務官もようやく首都に到着し御役目から開放される事もあり、かなり先程から饒舌になっている。
「いやいや かなり工夫された城壁ですね。守りやすく敵を攻撃しやすい作りが随所に見られます。そして何より美しい」
そのユウゾーの言葉に嬉しそうに頷く政務官であった。
完成された品は自然にその姿も美しくなると聞く、正にその教えの通りの構えの城壁であった。
やがて馬車は城内へ進みその主が住んでいる王宮へと入り込む。
「ほう 王宮内も綺麗だな」
拝謁の為の控えの間に案内されたユウゾーは初めて見る西洋風の王宮に興味が尽きない。
「見ている分には良いが何か住みたくない…」
ミーアが周りを見ながらボソッと呟いた。
それにユウゾーもにこりと笑い小さく頷いた。
豪華絢爛な装備品の数々は鑑賞しているぶんには楽しいが、これらに囲まれての生活はエルフ族やユウゾーにとっては少し息が詰まる空間でもある。
やがて案内人により3名は導かれたが、案内された先は謁見の間ではなく会議室と思われる場所だ。
真ん中にユウゾー両脇にギルマスとミーアが椅子に座りこの城の主を待つことになる。
暫くして奥の扉が開き中より3名の者が騎士数名に守られて現れた。
テーブルを挟んで中央に陛下、向かって左に大臣、右に厳つい武将の将軍職と思われる者が座る。
ユウゾー達が陛下を迎えるために跪いて礼を正そうとしたが。
「よいわ 肩苦しい挨拶はいらぬ 席に着け」
陛下のその一声でユウゾー達も改めて席についた。
「此度は遠路はるばるご苦労であった。早速ではあるが要件に入りたい」
大臣より話し合いのゴングが鳴らされる。
「使いの者より仔細は聞いておると思うが、紛争の両国がつい数日前に再度戦闘状態に入った」
陛下以下3名の顔が強張っている。
「現在の報告では共に互角の状況と報告が入っておるが、今後どの様な状況になるか皆目分からぬ。よって我が国は当初の中立を守るべき国内の戦力を充実させる方針で動いておるが、今後はその方達が約束した新武器による出来具合が重要な位置を占めるものと思われる。早速ではあるが数的には如何ほど製品として出来ておるか聞かせてもらいたい」
そうかいよいよ戦闘が再開したのだな、この国としては正念場になるわけだな。
「お答えします。現在品として約50丁の新型魔法銃が完成しております。なれど最初に申し述べておきますが、私の開発した新型銃は人を選びます。誰でも気軽に使える品ではない事をご理解頂きます」
「ふむ その様な知らせが入っておったの。もう少し詳しく…」
陛下がその点についての質問をユウゾーに問う。
「はい まずは現物を見て頂きます」
そう言って魔法袋から魔石マガジンが入っていない銃を取り出してテーブルの上に置く。
「「「おお これが噂の魔法銃か!」」」
命令により待機している騎士がその銃を回収して陛下の前に届ける。
「ふむふむ 何やら変わった仕様であるの」
3名が代わる代わる手に取りその銃を確かめる。
「その銃の使用に関して思念力と呼んでいます力が優れたものが取り扱えます」
「ふむ 思念力とな、それはどの様に判断するのじゃ」
「その銃に触った状態で鑑定をかけて頂ければ、その項目が出てきますのでそこに書いてある数値を読み上げてもらえば判断がつきます」
「誰か!鑑定の得意な者を至急呼べ」
陛下が待機している騎士に声掛けをする。
一人の騎士が慌ただしく退室する、鑑定士を呼びに向かったのであろう。
「ところで ユウゾーとやら我が第四王女が随分お世話になったようだな」
ニヤリとユウゾーに向い突然問いかけた。
鑑定士が到着するまでの雑談であろうが、少し生々しい発言につい言葉が詰まってしまう。
「この場にあの子も参加すると当初は泣きついてきたのには往生したぞ。あとで会ってやれよ」
そう言って ホホホと扇子で口元を隠し笑い出す。
何故かユウゾーは額から一筋の汗がでる。
鑑定士が陛下に呼ばれて慌ただしく登場する。
事情を説明され一人の騎士が持つ魔法銃に近寄る。
「この者に鑑定をかければよろしいのですな うむ 鑑定!」
パンと淡い光が銃を持つ騎士に広がる。
「さてと 思念力ですな、おうおう確かに浮かび上がってきました。えーと53…?」
読み上げてもらった数字は低めの数字であった。
その後銃の持ち手を変え残りの騎士二人も鑑定してみたが共に低数字に終わる。
「残念ながら数値が低いようです。この御三方では新型銃を使いこなすのが困難です」
その言葉に嘘がない事を示すために同行しているギルマスに鑑定をかけてもらうように提案。
当初ミーアにその役目をお願いしようとしたが、ここはあえてギルマスにした。
「おおう 329と出ましたぞ!」
鑑定士は驚きの声を上げる。
と同時にこの場にいる皆からも歓声が上がった。
「この銃は最低でも150以上は必要となります」
敢えて少し高めの数値を報告した。
「うーむ そうであるか、なかなかに持ち手を選ぶ銃であるな…」
「はい この城の方全員を調べねば迂闊な事は言えませんが、対象者はかなり少ないかと…」
「うーん そうは言ってもな、現実問題として…」
皆がうなりだす。当初の予定が狂うと考え始めたのだ。
「…一つ対応策が御座います」
ここで話を投入する。
「ふむ 何か良い手立てはあるか?遠慮なく申してみよ」
「はい 実はここにいるエルフ族の協力を求めたいと思っております」
「「「何と!エルフ族とな?!」」」
この場の空気が少し固まった。