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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
155/281

155 いざ 王都へ


春の訪れと共に休戦状態であった戦場はキナ臭い空気が漂い始めていた。

そんな空気を派遣されていた内偵者の報告は毎日のようにユーラシア国へと届けられていた。




「なんだあの馬車は?」


丁度前から予定していた西側の敷地拡大作業が済み、新しく出来た土地の整理に追われていたユウゾーたちの前に門から乗り込んできた馬車とそれを警護する騎士10名程がゆっくりとユウゾー宅の敷地内に現れ、それを見た妻達が騒ぎ始めた。


 何だか嫌な予感がするな


ユウゾーはそう感じながら出迎えの為に作業を中止して、皆と一緒に自宅へ戻る事となった。


「お久しぶりです、お変わりありませんか」


お客は以前姫殿下と同行してきた政務官であった。

取り敢えず粗末ではあるが応接間に案内して来訪の要件を伺う事になる。


「えっ? お城にですか…」


陛下・大臣の連名にて至急に訪問されたしと書かれた手紙を受け取る。

休戦状態であった戦場が急速にキナ臭い空気に包まれていると政務官より説明があり、このために新武器の進捗情報及び現物品の確認をしたいとの事で、出迎えの馬車にて登城を要請する内容であった。


 もうすぐ春の耕作が始まる忙しい時期なのに…。


ユウゾーの用意が出来次第馬車にて首都に向かいたいとの事。

同行者はギルマスともう一名なら可との事だ。


当初マーラかニーアと思って視線を送ると二人共笑いながら小さく首を横に振る。

ならばと反対側に視線を向けるとミーアがキラキラした目でユウゾーを凝視している。


 ふう ならばミーアで決定だな


一日時間をもらい出発の準備にかかる。

次いでにお城で無礼にならない最低限の服を購入して詰め込む。


新型銃を何丁か用意し、食料品も入れ込み準備が終わる。

後はユウゾーのいない間の仕事手順を皆で話し合う。

最後にもしかの為に妻達に新型銃を魔法袋に入れて置いてもらう。


 えーと 後は…。


 心配せずに早く行ってそして早く帰ってこいとマーラが笑っていた。


首都まで馬車で急げば片道10日、仕方ない行きますか…。

後のことマーラを始め他の妻達に任せて出迎えの馬車に飛び乗る。




馬車内はユウゾーにミーアそしてギルマスも渋々招かれての参加。

政務官を入れての4名に補助席に執事が一名の計5名が護衛の兵に守られて先を急ぐ。


「またキナ臭い動きとは もう大概にしてほしいのぉ」


ギルマスが暇を弄びぶつぶつ呟いている。

 おい あんまり愚痴ばかり言うと老けるぞ こころでは思っても口には怖くて出せない。


「そう言えばギルマス 前に新ダンジョンが見つかったと言う事だが」


「うむ 規模的には大したことはないが、川沿いで少し遠いが移動しやすい場所だ」


発見した冒険者達が簡単な下調べをしてからその報告が上がってきた。


「それよりユウゾー 新型銃の予備があるなら一丁寄越せ」


何回か改良を加えて全長も短めになり、ショットガンのサイズになっている。


「それは構わないが、一応前検査をしてからだな…」


サイコガンは持ち主を選ぶ、魔法袋から取り出しギルマスに渡し、魔導書で鑑定してみる。


「ぶっ 330?!」 思わずユウゾーは吹き出す。


「うん? 何か問題があるのか」


「いやいや 自分を省いて過去最高値だ!」


妻達ではこれまでマーラとアーシャが最高値であった、それを抜いてトップとなる。


「そうかそうか ワシには才能があるか」


ギルマスはにやにやとご機嫌になる。


ふーむ 思念力は少し変人のほうが高い数値になるのかな?

自分の事は棚に上げ考え込むユウゾーであった。


「…おい小僧。 何か失礼な事を考えていないか?」


突然ギルマスは銃口先をユウゾーに向けた。


「ば 馬鹿、冗談でもそんな真似はするな!」


突然の動作にユウゾーが慌てだす。渡した銃にはマガジンがセットされては居ないので安全ではあるが、銃口を向けられて良い気分になるはずはない。


「ふん 後で使用方法を教えよ」


そう言って自分の魔法袋に仕舞い込んだ。


そんなユウゾーたちの一連のドタバタを興味深く見ている政務官と執事がいた。




その日の野営先は大騒ぎであった。


軍が用意したテントを断りユウゾーは大型テントを取り出して簡易ベットにエアーマットそして暖かそうな寝袋に土魔法で作った椅子とテーブル、それに風呂場と野外トイレの設置をあれよあれよと言う間に設置完了する。


そして極めつけはそれらを囲むように出現した木の防護柵。


城の騎士たちは呆然とその出現を見守っていた。


そして更にミーアの指導の元にギルマスが新型銃の試し打ちが始まると、その威力に度肝を抜かれ一発毎に上がる爆発音に大歓声が上がる。

試射が終わった森の中は一面荒野が広がっていた。


(このバァさんに渡して良かったのだろうか…)


ユウゾーは少し後悔をしていた。




「うーむ これは良い。大満足だ」


サイコガンに満足し用意してあった風呂場で湯に浸かりギルマスは寛いでいる。


大型テント前ではユウゾーが手作りの料理を作り終える間際であった。

そこに政務官が一人ユウゾーのテントに訪問してきた。


「申し訳ない お食事前に…」


後の仕事をミーアに引き継ぎユウゾーはテーブルにお茶セットを用意した。


彼等は干し肉系の簡単な移動食の為に大した時間もかからず夕食が済んでいた。


「いえいえ 先程は皆さんを驚かして申し訳なかったです」


ユウゾーは先のギルマス騒動を侘びた。

大森林内ではなく大草原に入った時に試射を行う予定であったが、ギルマスが買ってもらった玩具を与えられた子供の様にゴネて試射を行った。


「はは あれ程の物 直ぐにも試し撃ちしたくなる気持ちは分かります」


お茶と菓子をご馳走になりながら政務官はしきりに頷く。


「はは それでも当分皆さんに口止めお願い致します」


ユーラシア国の秘密武器の情報漏えいを心配したのだ。


「無論です、此度の同行者達は選ばれた者達です。誇りにかけましても…」


国の存亡がかかっている、政務官も承知している事項となる。


「いい風呂だったぞ、食事はまだか?」


腹を空かしたギルマスがご機嫌の様子で帰ってきた。




その後数日がたち、草原部に到着した時に再度ギルマスは新型銃のテストを行う。

全回と違い見渡す限りの平原にて新型銃の性能を存分に確かめる事が出来、部外者にも見られることなく実に楽しそうに堪能していた。


無論その様子を見学していた政務官・騎士達はこの武器の有効性を改めて各自が認識し、この武器があれば多勢を相手に一泡吹かせられることを感じていた。


皆の色々な思惑を抱いて一行は王都へ急ぐ。


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