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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
154/281

154 いざ 冬から春へ


「なぁ ニーナ、この大森林の広さはどのくらいあるのだろう?」


「うん そうだな…」


夜のお勤めも一戦終え暫しの休息時間になった時にふと尋ねてみた。

エルフの足で南北一ヶ月 東西二ヶ月近くだなと気だるそうな顔で答える。


魔物を対応しながらの移動なら、日に20km前後と考えれば良いかな?

すると南北600km 東西千km強程度となるな、結構な面積があるな…。


大森林の先に大草原があるから、その面積は不明だが大森林と同程度としてもかなりの土地が考えればあるな。


「どうした?この僻地を治める王になりたいのか」


ユウゾーに抱きついていたずらっぽく笑う。


 冗談は ヨシ子さん、そんな大それた事など考えてはいない。

第一この身に残された寿命はあと20数年、とてもじゃないが統治にかまけている暇などない。




雪が本格的に降り出してもう一週間になる。

今年はなんだか雪が多い年になっている、ケイトもミニカーが雪に潜り動きが取れずに家の中で退屈そうにしている。


だがケイト以外は皆のんびりこの状況を楽しんでいるように感じられる。

昼間から温室ハウスにて皆が集まり、各自が好きに時間を過ごしている。


酒好きは雪景色を肴にまったりと過ごし、子供達はハウス内を所狭しと暴れている。

ハウス内はストーブが二つあるので、万一に備えユウゾーはストーブガードを設置する。


元気過ぎて時折育っている野菜が被害にあうが、まぁ気にしても仕方ないだろう。二人の可愛い足で踏まれた野菜は食事時に皆の食卓に並ぶだけだ。


他の者は編み物をしたり、簡易ゲームで競ったりと結構まったりと皆は過ごしている。

本来は朝・夕二回の敷地内循環見回りがあるが、この雪だ。

魔物たちも動きが鈍いし、朝の見回りだけで良いだろう。


カリナ達三名は家にて何かゴソゴソ時間潰しをしている。

気が向けば温室ハウスに来てマーラ達と酒を飲んでいるので、それなりに楽しんでいるのかな。


「そうだユウゾー 冒険者仲間からの連絡で新ダンジョンらしきものが発見されたらしいぞ、いつか行ってみたいものだ」


ミューが鎧の手入れをしながら報告する。


「そうか 場所はどの辺りに?」


「どうやら川沿いの西方面でここから一週間ほど進めばあるらしい。春には調査団を送るらしい」


「ほう 結構離れているな…誰が見つけたのだ?」


2・3級冒険者の者たちが数パーティ組んでの遠征で発見したらしく、ギルドに報告が上がった。


「この雪の中でか…ご苦労さまだな」


「いや 丁度この雪が本降りになる前の話しだ」


冒険者達もこの新開拓村が出来て環境に慣れた者たちがよく遠征しているようだ。

流石に森の中央部に向かう者たちは少ない。

たまに例の魔物が溢れたダンジョン近くまで遠征する者がいる程度だ。


正直この新開拓村周辺だけで十分な成果がでる。

遠征隊は気分転換によく利用されているようなのだ。


「例のダンジョンでこの森の位置的にはどの程度なのだろうか」


ミューが気になるのかマーラたちに尋ねている。


「そうだな 約1/3程度まで進んでいるかな、あの地点がエルフでも限界点に近いな」


さらに中央部に進むと強い魔物によりフルボッコ状態になると言う。


「あそこでまだ全体の1/3地点なんだ…」


それを聞いて少し震えが来たミューである。


「ははは だがユウゾーの作った銃とこのメンバーならかなり先まで進めると思うぞ」


いやいや 過信は禁物だぞ、無理して先に進む事はないぞ。


「そうは言っても一度は伝説の地に行ってみたいものだが…」


エルフ達に伝わる伝説の地は遥か遠い、、。





寒い 穏やかを繰り返しながら季節は確実に春へと導かれていく。

冷たい風が時折吹き過ぎるが雪の心配はほぼ無くなってきた。


野山には気の早い新芽が伸び始め、ユウゾー達も春の準備に余念がない毎日だ。

土魔法にて畑の天地返しを行い土の消毒も兼ねての作業を行っていく。


当初此方の住人達は連作・輪作等における知識が足りず、農家出身のカリナ達でさえ畝の作り変えなど行わず、使い廻しが当たり前のレベルであり腐葉土等の補給も無いに等しい状態であった。


森の中から大量の腐葉土を魔法袋に回収して畑にまくユウゾーに、当初はポカンとしてその行いをみていたが、この数年でやり方を覚え積極的に森の中から腐葉土を集めては畑に投与していく。


お陰でこの数年で畑の土は見違えるほど当初に比べれば豊かな土へと年々変化していた。


「凄いなこの土は…故郷でも皆に教えてあげたいものだ」


カリナは畑の土を手に取り、満足げにつぶやく。


「うむ エルフの村も昨年実施したと言うが、その結果を是非聞きたいものだ」


マーラやミーアも頷きあう。

長命の彼らは経験上畑が痩せて収穫量が減ってきた時は畑を休ませるという知恵は持っていた。

だがそれには新しい畑の開発という課題もあり、手間暇のかかる工程を繰り返さなくてはならない。


肥料に関しては大きな穴を掘り、その中に残飯やら野菜から大量に出るクズをどんどん投下して埋めていくことで肥料を作り出していた。


完熟した時を見計らい畑に肥料として撒いていく。

最初にユウゾーがやり始めた時は皆が野菜のクズとはいえ、集めて安く売ることや食する事もできるのにと不思議がっていたが、ユウゾーの行いの意味合いがようやく理解出来たのだ。


撒いたレンゲの種から芽が出始めて今年も蜜蜂が活動する下地が出来上がってきた。

妻達が今年も楽しみに蜂蜜を待っている、宜しく頼むぞと巣箱の中にいるハチたちに声をかけていく。

妻達が蜂蜜を贅沢に使った料理や菓子作りを楽しみにしている。


そろそろ敷地を拡大して家畜を飼うべきかとユウゾーは考えていた。

家畜から肉は勿論、糞尿から良質の肥料も出来るからだ。


新開拓村の商人を通して山羊・馬・羊・豚等の手配をお願いした。

この春には第一陣が到着するだろう。

家畜の場所は西側をもう百メートル程拡大予定しているので、そろそろその工事に着手しようと思う。


家畜は子供達にとっても有益な教育の手段になる筈だ。

命の大切さを教えるためにも、そしてもう少し大きくなれば家畜の世話係に任命しよう。


さぁ 早く本格的な春になれ、頑張って働くぞ!



ユウゾーが決意を新たにしている頃、遠くの地では睨み合っている両国がなにやら紛争の準備に再度キナ臭い動きを始めていた。


そしてその動きは内偵を放っているユーラシア国にも次々と報告が持ち込まれ、関係者により緊急の会議が毎日開かれ、その場にユウゾーが呼ばれる事が決定すると、その知らせを新開拓村に向け特使が派遣される騒ぎになっていることはまだ誰もこの新開拓村の住民は知らずに居た。




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