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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
143/281

143 いざ 宮殿の主登場

次話は火曜日投稿予定です


奥の扉が開き一人の人物が姿を現した。


それはギルマスも良く知る人物であった。

無論ギルマスがこの首都を離れ10年は会ったこともない人物ではあるが、、、。


「久しぶりだな キリアーナ殿」


その人物はにこやかに笑い大臣が引いた椅子に腰掛けた。


「キリアーナ殿、女王陛下の御前ですぞ。控えなされ」


大臣が陛下が座る位置調整を終わらせギルマスの失礼を咎めた。

はっと 現実に戻ったギルマスは無礼を詫びるために立ち上がろうとしたが、それを陛下が優しく咎めて椅子に座るように諭した。


その様子を陛下と大臣が共に笑いながらギルマスを見ていた。




ギルマスことキリアーナは今生の陛下をご幼少の頃からよく存じ上げていた。

そもそもハーフエルフであるキリアーナは今から50年以上前にこの国の本部冒険者ギルドの副本部長としてよく宮殿に出向いていた。


実力的には本部長になっても不思議ではないキリアーナであったが、人族一番の風習が未だ残っているこの地ではとうとう最終の本部長にはなれなかった。


だがそれは左程キリアーナには問題にならなかった事項である。

其れ以上にたまに赴く人族の宮殿には興味があり、楽しい思い出になっていた。


当時ギルド本部長は公式の行事でなければ宮殿に出向くことはなく、大概の野暮用に関しては副本部長が対応するのが通例になっていたのだ。


その対応にはエルフの血を引いているキリアーナは向いている。

当時400歳を超えたキリアーナは良く歴史が分かっており、前例に対する知識も深く陛下を始めとする宮殿の皆とも仲が良く務めていた。


前陛下の第一王女として生まれた現陛下も良くキリアーナに懐いて外の話を面白がって聞いていた。


そんなキリアーナもそろそろ引退して残りの100年ほどの人生を気ままに過ごそうと決心し、ギルドから離れる算段を考えていた矢先に降って湧いた話が、故郷の森での開拓村の新設話になる。


キリアーナは森に住むエルフ族と人族との架け橋になるならと、喜んでこの開拓村の話に飛びつく。

故郷でもある大森林にて最後のお勤めが出来ると彼の地に向かったのだ。



「彼の地での生活ぶりはどうです?何か困ったことなどは?」


これにどう答えてよいかギルマスは一瞬答えに困った、何も変化などなければ此処には戻ってくる事など無いであろうし、問題がありこの地に舞い戻ったのはそもそも宮殿による横槍問題が明白であった。


ましてそのギルマスに対して横槍を入れたのがどうやら女王陛下となれば、その張本人が其のような質問をされてもどのような受け答えをすれば良いのか…。


そんなギルマスの様子を陛下と大臣は可笑しそうに見つめていたが、大臣より助け舟が入る。


「実はなキリアーナ殿、此度のこと陛下も心痛めておるのだ」


何をいいだす? この指示を出したのは陛下である事はこの状況から明らかになった。

その本人が心痛めておる? ならば当初から傍観していれば済む問題だ。

手を出しては行けない事に手を出すから此度の騒動になったのであろう。


憮然としたギルマスの顔から納得していないと直ぐに理解できる。


「最初から話さねばならぬであろうな」


確かに当初この件にて陛下より依頼事項があったのは事実である、なれどそれはあくまでも希望的意味での発言で、まずは迷い人の人となりを確認する事が目的であった。


その命を受け大臣から更に話が筆頭政務官に届く、この時政務官が気を廻しすぎた。

陛下からの命を拡大解釈にして捉えてしまった。


その当時は丁度紛争両国の対応について宮殿で揉めていた真っ最中での出来事であり、なんとしても迷人を味方にせねばならぬと言う気持ちがその後の展開に大きく動く。


まず彼は特使を派遣して大森林に派遣しギルマスへのアプローチを開始したまでは良かったが、彼の頭には何としても味方に の気持ちが強く、派遣した部下達にもその意味合いが濃い発言を行い彼の部下も国の一大事と捉えて少し強めの発言をギルマスに対して行ってしまった。


当然ギルマスからけんもほろろな対応にて追い返されて、特使からその結果を聞いた筆頭政務官は驚き何としてもと 更に派遣を試みたが結果は同じであった。


筆頭政務官は苦肉の作としてたまたま訪問していたギルドの現副本部長に相談をかける。

副本部長は当初渋っていたが将来国が滅びる可能性もある、との心意気で説得する政務官に次第に心を動かされ、一応持ち帰り検討するがギルドでの動きは内密に願いたいと約束を取り交わし早速内部で動き出した。


だが彼は相談をかけた部下に問題があった。

その彼は出世欲が強すぎた人物であった。なれどかなりのやり手と評判は高く、事実この地位まで上り詰めたのも彼の実力と機転のきく対応が認められたからであった。


これを好機とかの者はとらえた、ギルト上部にも宮殿関係にも成功すればそれなりの成果が約束される案件であるからだ。


彼の仲間達は類は友を呼ぶで 同じく出世欲にかられた者がおり、それも自分等の欲で都合よくギルマス追い出し工作を仕掛けていた仲間であったのだ。


これ幸いと更に動き出した途端にギルマスからの反撃にあい、仲間の一人が失脚してしまう。


この事態を重く見た副本部長は当然彼を責めた、失脚した者が金に汚かったと言う言い訳にも当然疑問を抱いたが、宮殿からはひっ迫した催促が届くなか、今更人選の再考をしている暇もなく釘をさしながら渋々引き続き工作活動を続ける様に指示をだした。


残った二人はなりふり構わない工作活動を開始して現在に至ると大臣は説明を終えた。


 うーむ それが本当だとするなら確かにここまでの話の筋は通っているな。


ギルマスは今聞いた話に矛盾は無いかしばし長考に入る。

当初は陛下の気持ちを読みすぎた事から端を発し、伝言ゲームにも似た流れでそれぞれが各自の思惑の中に動き、最終的にギルマス追い出しグループに話が降りてきてこの始末になったと考えられる。


いつの世も上からの指示に馬鹿正直に動く事は稀な事だ、上の指示を忖度して動かぬ者は出世街道から外れてしまう事が多い。


これは事務系の人間には特に求められる事項の一つでもある、当然上手く機能している時は驚くほど成果を求める事が出来るが、其の中に個人の思惑が強すぎる者がいると思わぬ弊害も出てしまう。


今回はこの後者のケースとして捉えてよいのか?

ギルマスの最終判断にかかっていた。


「どうじゃ キリアーナ殿、まだ疑念は何かあるか?」


煮えきれぬギルマスの態度に陛下が笑いながら尋ねる。

その問にはっと我にかえるギルマスは慌ててその問いに答える。


「失礼いたしました。当然陛下のご説明に疑念などありません。あまりに都合よく色々なケースが重なった結果と判断致しました」


「…都合良くな」


ギルマスの言葉尻をとらえ愉快そうに陛下は笑い出した。


「これ キリアーナ殿、未だ陛下を疑っておるのか?」


大臣も苦笑いしながらギルマスを諌める。


「これは言葉が過ぎて申し訳ありませぬ。なれど再度確認は宜しいでしょうか?」


「ふむ 何なりと」


陛下の代わりに大臣が答えた。


「まずこれまで裏細工を行ったギルド内の二人の処分はどうなりますか?」


今回の顛末に関して一番ギルマスが問題にしなければならぬ事である。



次話は火曜日に投稿予定です

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