136 いざ 冬支度
ユウゾー達の冬に向けての準備も本格化し始めたこの頃である。
「ユウゾー ジャガ芋の収穫完了だ。後は人参がまだ完了していない」
新しく食料庫を増設し蓄えられる食材を次々に運んでいく。
主食の麦も十分にあるし、冬野菜も順調に育っている。
葉物野菜が冬はどうしても不足がちになるが、現在ユウゾーはガラスを劣化版創造魔法で作り続けている、このガラスを利用して大きめの簡易ハウスを作り冬野菜専用として育てる予定なのだ。
この冬にあわせて数ヶ月前からコツコツとガラス製造を行ってきた。
ようやく寒い冬が来る前に完成の目処がついてきた、寒さ対策としてハウス内に薪ストーブの設置作業も終わり温度管理も素人ながら上々の結果が出ている。
薪に関してはこの森の恵みに感謝して利用させてもらおう。
このハウスが成功すれば季節外れの品が食べられる事になるし、高く売れるかな?!
温室メロンも作りたいしな…。 夢を見るだけは自由である…。
「しかしこんな おんしつはうす か?良く思いつくもんだな…」
マーラとアーシャが作業の手を休めてもうすぐ完成するハウス内を見渡す。
今年はテスト用ハウスでユウゾー達一家が消費する野菜位しか作れないが、来年以降は更に大型のハウスも一応計画には入っている。
全てはこの冬の結果次第である。用意したストーブがどれだけの効果があるのか、冬を迎えてからでないと正直判断が出来ない。まずは今年の冬はデーター集めとなる。
その後一週間の仕事をこなしユウゾー達は越冬対策の9割を完了させた。
「さて、これからが本番だ、寒くならないうちに開始するか」
妻達の顔を見ながらユウゾーは気合を入れる。
敷地の拡大を計画しているのだ。
農耕に適した土地を新たに建造していく、規模は横100m 縦300m 3ヘクタールの土地を作りあげていく
当然最初にするのは新城壁の設置になる。
今回は村のエルフ達の協力なしでの作業となるが、日に200m程度の壁作りにてほぼ3日にて新しい城壁が完了した、
境になる旧土壁を崩し終えると広々とした空間が出現してきた。
まだ土地には森林が広がっている、これを妻達と協力して伐採して耕地にする為に更に一週間を費やして完成させる。
「おっ ユウゾー 新しい土地が完成したのか」
暇を持て余しているギルマスが数日に一回はユウゾー宅に遊びに来ている。
「ああ 皆の協力のお陰で完成したばかりだ」
おやつタイムを狙ってきたとしか思えないギルマスの現れ方である。
ライラの勧めに着座してお茶タイムに入るギルマスだ。
「そう言えば 新住人のバンドン達がかなり名声を響かせておるな」
遠く首都からも商いの人が尋ねてきては首都への移住を勧めている者が多い。
バンドンと親方達は頑として断り続け虚しく注文だけをして引き上げているようだ。
「バンドン達に聞いてもお茶を濁されるが、ユウゾーお前が何か絡んでいるだろう?」
私が絡んでいる?イヤ知らんぞ。 あっ インゴットの件があったか…。
そんなユウゾーの顔色を読んでいたギルマスが呆れたように顔を振る。
「やれやれ ずばりか。お前は本当に…」
ギルマスはそこで言葉を区切った。
「失礼な 少しだけ協力しているだけだ」
「お前の少しはこの世界では周りを揺るがす大事件になるからな」
妻達が笑っている、何故だ?……解せん!
「お前が仕出かしたことを本人が一番わかっておらんな…」
ため息を吐き続けるギルマスを妻達が蜂蜜入りのクッキーを勧めて気を紛らわせる。
「まぁ よい 今日は依頼があって参上した」
新開拓村から半日ほど北に進んだ場所に最近オークの集団が住みついたらしい、近々冒険者達4パーティを向かわせる予定だが、出来ればユウゾーの妻達を数名借りたいとの事だ。
「そんな近場にオーク達が? ふむ厄介な事になる前に対応したほうが…」
妻達を見ると皆目がキラキラ光っている。
ユウゾーは直様その様子を理解した、特にやる気の高そうな マーラ アーシャ それに優秀な斥候役のミューの3名を派遣する事で話しはつく。
いい気分転換だろう でもやり過ぎないように頼むよ…。
数日後マーラ達は冒険者4パーティと共に集団オークの現場に向かっていった。
ユウゾー達は冬準備の最後の追い込みになる、カリナ達も手際よく仕事をこなしていく。
冬よ いつでも来い。今年は万全に近い準備が出来た気がする。
数日後マーラ達が意気揚々と帰還してきた。
彼女達の魔法袋には倒したオーク10体程が収まっているとの事だ。
オークの集団は丁度集落作りの真っ最中で、冒険者達と協力して総数20数体を殲滅したようだ。
マーラ達が倒した中にジェネラル級のオークがおり、明日にでも全員で解体作業をせねば。
越冬に向け高級肉の入手が出来て皆がホクホクの顔をしているな。
さあ 明日も寒い風が吹く前にひと働きするか、マーラ達ご苦労さまでした。
更に10日程が過ぎた時に、冬将軍の訪れがあった。
午前中には雪は止んだが寒い風が敷地内に吹きすさぶ。
紛れもなく冬本番を告げる前触れであろう。
「いってきまーす」
ケイトが店番のカリナと共に屋台カーを動かしていく。
ケイトの為に余っている魔物の皮で防寒具を作ってあげた妻達に見送られて元気に西門に向かう。
本人は足元にユウゾー作の電熱ヒーターがあるから寒くないと言うが、上半身は外気の風に晒されると妻達が防寒着を作製したのだ。
特に首周りに暖かそうなフリースで覆われ、ケイトも喜んでいる。
今後は日に日に寒さが強まっていく 無理はするなよケイト ユウゾーもたまには休めと言うのだが、お客さんが待っていると元気に出掛けるケイトであった。
さて もう農作業は無理だが、温室の様子を見るかとユウゾーは動き出す。
「おお 中はなかなか快適じゃないか、、」
あれ? ストーブの前にマーラたちが…。
「おう ユウゾーも来たのか まぁ 座れ」
ストーブの前に土魔法で作ったテーブルと椅子セットに腰掛けて薪を焚べている。
家の居間で皆とワイワイするのも良いが、この温室で冬景色を見ながらのお茶も良いもんだぞ とマーラとニーナが頷きあう。
はいはい のんびりして下さいな。
冬が来て働き詰めの生活から開放されたのだからね。
ユウゾーも椅子に座りながら葉野菜達の様子を窺っていた。
ふむ 上のほうに暖かい空気層が出来ているが、地表は少し寒いな。生育に問題出るかな?
温室の上部に扇風機もどきを作製してハウス内の空気を循環しなければ、、、。
ユウゾーは勧められたお茶を飲みながら次の一手を考えていた。