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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
133/281

133 いざ 屋台準備



ケイトはこれから先の自活の方法を模索していた。



「ユウゾー様 此度はケイトが申し訳ありません」


夕食が終わり皆がのんびりしていた時間にケイトが母親と共に現れた。


「いやいや 少し驚いただけだよ。お母さんも自慢の娘さんだね」


それに対してお母さんは少し恐縮して答えた。


「私が少し病弱な為にケイトには小さいうちから無理をさせてしまい、今回も私の万一に備えてケイトなりに考えた発言のようです」


誠に申し訳ないと恐縮するお母さんとは別にケイトは少し不満顔であった。

これは話し合いにおいて何かあったのかなとユウゾーは二人の態度から推測した。

よし 本音をケイトから聞いてみるか ユウゾーはケイトを手招きして近くに呼ぶ。


「お母さんはあの様に言っているけどケイトはもう少し別の理由があるのではないのかな?お兄さんが聞いてあげるから正直に話してごらん」


とたんにケイトはパッと顔が明るく輝きだし


「うん ありがとう。実はね…」


「ケイト!」


母親が慌ててケイトの発言を止めようとした。


「まぁまぁ お母さん怒らないで。私もケイトの考えを聞いてみたいんだ」


その素振りから何かケイトに口止めをした様子が伝わってきた。


「決して怒らないから、ケイトが今回思いついた訳を最初から話してくれるかな?」


再度ケイトに訳を話すようにお願いしてみた。

少し戸惑いながらもケイトはユウゾーの提案に少しずつ事の次第を話しだした。


一番の心配はやはり母親の体調問題だ。

ユウゾー宅に住み込みで働くことになり、食事や寒暖の心配がなくなり母親の体調も随分良くなってきたが、病弱な母を小さいうちから見てきたケイトとしてはいつまた母が倒れて、この家から出ていく事にならないか心配していたらしい。


その時に何か母の代わりに自分が出来る事がないかと考えていた折に、ユウゾーが野菜を運ぶ際に外側の葉を肥料に使うのか必ず綺麗にむいて捨てている事に気づいた。


食べられる葉を捨てているならあれを貰って野菜スープを作って売れそうだ。

ただその為には昔のスープ作りでは売れないと自覚している、ユウゾーが教えてくれた各種調味料と可能なら肉の入ったスープ作りなら間違えはなさそうだと思いつく。


そう閃いたケイトはまずは各種調味料が安く入手できないかユウゾーに相談したかった様だ。


「済みません ユウゾー様のすることにおかしな事を言い出しまして…」


うん? 何を急にお母さんは謝りだしたのだろう。 ユウゾーは母親が謝りだした理由が…。


「ああ あんな捨て方は私も疑問だった。ああするとなにかいい事があるのか?」


マーラが思いついた様にユウゾーに確認する。

その発言内容でようやくユウゾーも合点がいった。

そうか 此方の一般的な考えでは非常に勿体ない行為をしていたのか!


つい今まで元の世界の習慣を引きずっていたのだと思いつく。

でもそれを指摘したことに何故に母親が謝らねばならない?


ここで二つ目の過ちにも気づいたユウゾーであった。

平等意識が過剰に根付いた元の世界とこの世界の違いを…。


労働層と支配層の違いに、こちらの世界はある意味完全な縦社会である。

金を出す者とその金で働く者とは決して平等ではない世界なのだ。


元の世界でもそんな流れがある事は事実であるが、此方はさらに徹底している。

金を出す者に非難じみた発言をするならば、当然のように翌日からは解雇されても文句の言えない世界なのだ。


やっと安定した職につけ、恵まれた環境と給与を頂ける母親としては子供とは言え非難じみた発言をした結果職から解雇される事を恐れていたのだ。


 なる程 ようよう合点がいった。


ユウゾーは深い溜息をついた。

発言にも気をつけねばと改めて異世界との常識隔離を思い出した。


「了解だ この件について何も咎める事はないから安心してくれ。それよりケイトの屋台の件だが、母親として別段問題ないなら私からも支援したいが良いだろうか?」


その後皆が集まりケイトの屋台についてあれこれ話し合いが夜遅くまで続いていた。


ケイトの屋台支援にユウゾー一家が動き出した。


母親が恐縮しまくっているが、心配するな 任せろ!

まずは野菜スープの味を確認する事から始めないとな、今日は流石に遅いから明日になるか。

味の指導はライラに任せる、俺は仕事の合間に屋台一式を作ろう。


カリナは新開拓村にて何処が屋台場所に向いているか現地調査を頼むぞ。

他の者は新開拓村に行った時にそれとなく屋台のPRを忘れないように。

マーラは総監督だ、皆の手落ちがないように厳しくな。


皆が異常に盛り上がる、あっけにとられているのはケイト母娘だけだ。




翌日からケイトへの特訓が開始された。


「味が薄い ケチらずにボーンと入れなさい」


そうは言ってもかなり高価な調味料を勢いよくとはいかず、ケイトは恐る恐る調味料を投入する。


「まだまだ それ!!」


ライラの指導の元に高価な調味料が惜しげもなく鍋の中に投げ込む勢いで入れられた。


「あのー お姉さん。これは一瓶幾らぐらいの値段がするの・・」


「小さな事は気にしないで、ユウゾーが安く譲ると約束したでしょう?安心なさい。それにユウゾーは今日にでも大量注文すると言っていたから」


「は はい、、」


ケイトは完全に思考が停止状態になりつつあった。

出来上がったスープはお昼に品評会を兼ねて昼食に出された。


「「「おっ 美味しい。上出来だ」」」


皆が大喜びでスープの完成を祝ってくれた。

その中で一人冷静に原価計算をはじめ、容器一杯幾らで売るべきか考えただけで体が膠着するケイトであった。


「お昼から手が空いたものは魔物の肉回収をお願いする」


おう 任せろと 数名が手を上げた。 獲物は何がいい?四ツ牙かオークか?


 いえいえ そんな高級品より一角兎か大鼠で結構です…。


ケイトは引きつった笑いを浮かべた。


スープの中に入れる肉も安く譲ってくれることでお願いする事になったが、どうも屋台のスープにいれる肉としては高級すぎる。


このままでは屋台で売るにはあまりにも高すぎる野菜スープになってしまう。

何故にここまで話しが飛躍してきたのだろうか?

幼い頭では事の成り行きがイマイチ理解できなくなり混乱してきている。


 原価が 原価が・・


ケイトは考えすぎて少し目眩がしてきた、、、。


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