13 いざ 我家へ
「すまないミュー。時間がかかり待たせたな」
「いや、先程までライラと仲良く話し込んでいたから、それほど待った感じではないぞ」
ギルドの待合室の椅子からミューは立ち上がり、一つ軽く背伸びをした。
ライラは他の職員と食事に出たとの事。
丁度良いと言っては変だが、今はライラと顔を合わせるのが少し躊躇いが有る。
ギルドを出ると市場の方角に進む。
途中の屋台で慌ただしく串肉等を食し簡単な昼食とする。
「この店だ。新鮮な野菜が多く値段も手頃なんだ」
目についた新鮮そうな野菜を次から次に買い上げ魔法袋に入れていく。
店主のおばさんが大喜びで対応してくれた。
ほぼ店の中の商品が空の状態になった。
これでも長い冬を考えると不足する気がする。
数件先にもう一軒あるので、新鮮そうな商品を中心に買い占める。
おっと、野菜の種もあまり種類がないが買い占めておく。
続いて日用品・雑貨だな。
ここではミューのアドバイスに従いこれまた次々と買い込む。
冬の間は補充がきかないし、お金もそこそこにあるので気にせず買い物が出来るのは良い事だ。
次は薬局だ。
ひとり暮らしに対応して病気にかかり寝込むことは死活問題になる。
こちらもあらゆる病気に対応する薬と、魔物との戦いに傷を負ったケースを考えての購入となる。
これに関してもミューの経験からの品選びとなった。
次 次だ。
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最後は武器・防具屋になる。
明日からの旅立ちに備え、良さそうな皮の鎧と金属製の手甲・足甲それに予備を入れての靴二足を購入。
ついでに安い剣を纏めて10本・皮鎧を3つ購入。
これらは冬の間の室内作業に利用する予定となる。
よし、宿に帰り買い忘れや不足が無いか最終確認だ。
ミューに今日一日の協力に感謝と、来年春の再開を約束してしばしの別れを告げる。それまで元気でな!
早めに就寝したせいかそれとも旅の興奮のせいか、気分良く目覚めの朝を迎える荷物は魔法袋に全部入っているし、皮の鎧と手甲・足甲それとフード付きの外套を出し食事の後に装備して出発となる。
宿の主人にお礼をつげ、見送りを受けながら宿を離れる。
途中出店の開いてる店により何件かの店で多めに買い占める。
魔法袋に入れて道中の食事対応に使える。
村の中央部から隣町に出る馬車に途中まで乗せてもらう交渉を行う。
交渉成立にて少しばかりのお金を払い荷台の空いている場所に腰を下ろす。
例の断崖絶壁の山の間近にて下ろしてもらう予定だ。
この山は途中一箇所だけ途絶えており、その場所から森と外界をつなぐ道が出来ている。
昼前にその場所に到着するとこれからが本当の一人旅の開始となる。
絶壁に沿って4・5日の旅で私の居住地に到着予定。
今回はある目的の為に積極的に魔物を狩っていく。
一つは冬用の干し肉対策だが、二つ目は魔石の大量採取だ。
ついでにレベルアップも早まるしね。
魔石は冬の室内で使う各道具に利用したい。
当分の間 狩って 魔石回収 の繰り返しになるかな。
開拓村を出て3日目に異変が発生。
突如魔法袋が回収しなくなるトラブル。
焦ったよ。かなり本気で。色々原因を考えたのだが、ある事を思いつく。
おめでとう。満杯の状態です。
3トン分の荷物が入ったのです。
予備に作った1.8トン用の魔法袋を新たに腰にぶら下げる。
ええい この袋を一杯にしてくれる。と改めて回収作業開始。
怒涛の2日間でした。
ようやく見覚えのある地点に到着した。
壁を慎重に確認し一気に生活魔法の土魔法で粉砕。
見事土壁は崩れ落ちポッカリと空洞が見えた。
見慣れた空間が出現しました。
まずは締め切った空間の空気入れ替え。
生活魔法の風魔法にて大量の風を洞窟内に押し込み作業。
上部に開けた広めの穴から溜まった空気が押し出されて行く。
しばらくこの作業を続けようやく内部の空気が一新された。
次は壊した壁の修復と置いてあった木製のドアの取り付け作業。
もうすぐ寒くなるからドアを締めた時隙間の無いよう調整。
さらに空気取り入れ口も最小で機能するようにこれも調整。
内部のホコリも生活魔法の清浄にて汚れ落とし実施。
これでホッと一息。夕暮れも近づいて来たので食事の準備だな。
忙しい 忙しい。
明日から冬対策で当面大忙しの毎日です。
では久しぶりの我が家でオヤスミなさい。
空気取り入れ口から朝の日差しが入り込んできた。
いやー 昨夜はぐっすりでした。
ドアの防災用角材を外し外の空気を確認。
おっ、かなり温度がひんやりするな。
冬が着々と近づいているのが分かるよね。
朝食済まし最初の仕事は3トンの魔法袋の内部仕分け。
その前に新しい魔法袋を確認。実は昨夜残りの魔力を使い魔法袋を作成した。
使用MP400。これがぐっすり眠れた?秘訣かも…
3トンの魔法袋内部を少し吐き出さないと。
まず肉系?から始めるか。5日間で狩った魔物を移動!
光が新袋1.8トンに移る。
一角兎 17体・ 猪系 5体 計重量 約 1トン
ここから解体されて純粋の肉の量は1/4以下かな?
仮に1/5としても200kgの生肉が見込まれる。
日に肉の消費量を500g と仮定すると、月に15kg 冬の期間を三ヶ月と計算すれば、単純に50kgあれば冬を乗り切れる筈。
充分な量だな。但し、生肉換算だが。
干し肉はほぼ水分量がなくなるから生肉が100kgあっても完成時には10kg前後と計算すれば良いかな?
うーん前回何の位の量が出来たかよく覚えてないな…
圧倒的に燻製肉のほうが食べやすい。干し肉は非常用と割り切ろう。
あとは干し肉と燻製を作成時の割合だ…。
肉を解体しながら独り言を繰り返すユウゾーであった。
2日をかけ解体作業を終わらせる。干し肉は太陽との勝負だし、燻製は燻ている間はさほど手も懸らない。
塩はまだ100kgはあるな、漬物作業を開始する。
漬物用の器は陶器屋から大量に購入した。
白菜もどきを水で汚れを簡単に洗い余計な水分を拭き取り次々と器に並べていく、同時に塩と野生の唐辛子を砕いて投入して、最後に蓋と重しの為手頃な石をのせていけば完了。
葉物は賞味期限が短い、湯であげて手で水分を絞り込むとそれなりの量が出来る。後は容器に収めて魔法袋に収納。
次だ、地下室作りに着手。生活魔法の土魔法で着手。
頑張って3メートル四方のスペースを地下2メートル程に作成。
うん。なかなかの出来栄え、保管庫の完成だ。
前に作った漬物用の器を並べていく。木製の棚も作った。
根野菜の保管にもなるからな。無論燻製肉が入った魔法袋も収納。
うん?意味があるかな…まぁ気分だ!
ほぼ10日ほどかけそれなりに準備が終わりかけたある寒い朝、天気が今一と見上げた私の顔に冷たいものが…
うぉー 雪だ。とうとう冬本番か! 積もるかな? 少し心配だ…
幸い雪の勢いは弱く昼前には止んで薄日も見えてきたので一安心。
朝から熱心に作業しているのは薪割り作り。
森から倒木を魔法袋に入れ外の一角に積み上げてある。
それを懸命に斧で薪作り。
洞窟内もさらに拡張し、一つは日用品の保管部屋と数日分の薪を置けるスペースと、もう一つはこの冬お世話になると思われる作業部屋。
午後からは待望の風呂作りを行う予定。
前から作成予定だったが、生活魔法の清浄が意外と使い勝手がよく、一汗毎に清浄を唱えるとスッキリと体も服も綺麗になるので、ついつい他の作業に力を入れてしまった。
でも寒くなれば風呂が一番だな。
雪景色を見ながら露天風呂もよいが、いつ魔物が近寄ってくるか分からないからな。
すったもんだしながら夕方には風呂も完成した。
早速魔道具で湯を出し湯船に溜めていく。
魔道具は例の婆さんの所でホコリまみれの品を発見し、安く買い叩いた。
なぜ安かったと言うとこれは魔石の消費が大で、一般向けしないと言う事が判明。
貴族連中は基本使用人が湯の準備もするし、大型の風呂は薪ストーブの応用で湯沸かしをするらしい。
なんせ家庭用の風呂でゴブリン用魔石を一回3個も消費する魔道具なんてとてもコスパが悪く売れ残り確実のアイテム品となる。
逆に言えば森に住む私にはランニングコストは、ほぼ0となる。なんせ日に何体かは必ず退治する毎日だ。
湯船に浸かると全身に暖かさが伝わってくる。
疲れが吹き飛んでいくなー。
今晩の献立は何にしようかなー。
極楽 極楽。
朝起きると薄っすらと雪が積もっている。そのうち溶けるかな。
部屋に設置したストーブに追加の薪を焚べ、暖かくする。
私の創造魔法ではMPがたらないので村で購入した物だ。
家庭では煙突配管に火事防止の石綿等を巻くが、ここは周りが岩だ。
火事の心配など何もない。
朝食を済まし本日の作業を開始する。
午前中は少なくなった薪作りだな。
午後からは作業台にて錬金術の修練を予定している。