129 いざ 直営店
ユウゾーはギルマスにも負けぬ悪い顔で笑い出す。
派遣してあったエルフ達からの情報が色々入ってきたのだ、その中で何人かの商人がよく集まって話し合いをしている情報が入り込んできた。
その時にギルド本部の〇〇様から と言うワードがよく出てくると一人の派遣エルフが言うと、他のエルフからも その名は私も聞いたことがあると頷いていた。
後は簡単 会合の際お茶を持っていく次いでにドア越しに耳をすませばよいだけだ。
かなり小さな声での密談で気を配っているようだが、耳の良いエルフを甘く見てはいけない。
最低の情報は直ぐにユウゾーの元に集まる。
「まったく 何か良い条件に踊らされたのだろう」
ギルマスも嫌な顔で考え込む。
まぁ 暫く相手の出方を見てみようと二人は頷く。
「ユウゾー 蜂蜜がなくなったのだが…」
あのなマーラ 蜂蜜酒を作る前に皆で蜂蜜を舐めていれば無くなるのは当たり前。
了解…。 私の小遣いから蜂蜜酒を購入してあげるが、ライラには内緒だぞ。
マーラが嬉しそうに頷く。ライラに購入がバレると怒られるからな。
庭の蜂蜜は今後お菓子作りに利用すれば良いだろう。
よく野菜を求めに来る商人を通して少し多めの蜂蜜酒を発注したユウゾーであった。
マーラも新開拓村に酒を扱う店が出来て、当初の酒作りの熱も少し冷めてきたようだ。
派遣しているエルフ達に定期的に様子を見に行く次いでに、目新しい酒を購入してはカリナ等と酒の品評会を行い楽しんでいるようだ。
「ユウゾー お店に行ってくる」
おっ ご苦労さん。ひと月ほど前から開拓村の一角で小さな店を開いた、西門から入ってすぐの場所で東西の大通りに面しており、隣に最近できた二軒目の宿屋がある。
多数の冒険者受け入れにより急遽新設された宿屋だ。
その店で扱う品はユウゾー手作りの品で、中古の魔法袋・野営装備品・ポーション類・そこそこの武器及び鎧品等を置いてある。
ポーションや武器類は本職の店に遠慮してあくまで下級品クラスを並べている。
一番の売れ筋は簡易ベットにエアーマットであり、魔法袋もそこそこ売れている、中堅冒険者でも魔法袋に関しては普及率は高くないのだが、パーティで購入するケース及び買い替えによる容量アップにユウゾーが利便をはかり結構人気がある。
従来の品を下取りで高く見積もり、一段ないし二段階上の中古魔法袋を購入し次いでに簡易ベット類を追加購入するケースが多い。
下取りした魔法袋はまだ袋を持たない別の冒険者が購入していく。
冒険者にとって野営で地表に寝るのと簡易ベット上で寝るのは雲泥の差があり、冒険者達は人伝えにてよくユウゾーの店に訪れる。
そのため当初は朝・夕の数時間しか営業していなかったが、品を求め冒険者達がよくユウゾー宅を訪れる様になり営業時間の延長を始めた。
基本昼休みが長い店と言えば理解しやすい営業時間になった。
当面交代にて妻達が一人お店に出掛ける様になった次第だ。
そうそう隠れたヒット商品として安価品の魔道具懐中電灯も良く売れている。
全てがユウゾーの劣化版複写魔法により原価¥0の品である。
ユウゾーは左程利益には執着していない、冒険者達の安全・健康を第一に考えているのでそれが冒険者達の人気を呼ぶ理由の一つになった。
「ニーナさん他の仲間に分けたいので少し多めに…」
「ダメだよ 欲しい人は買いに来てもらう事が条件だよ。大量買いは他の人に迷惑をかけるからね」
さる冒険者と店番のニーナとの会話である。
安く良い品は転売対象になる、ユウゾーの嫌う行為だ、つれなく断るニーナである。
「ユウゾー 今日の売上だ」
ニーナが小袋に入れた売上金をユウゾーに渡した。
店の売上が約金貨6枚 昼休みにギルドに魔石を分割して売った最後の残りを売却して約金貨7枚 計1300万ゼニーとなる。
「ほう 今日は店の売上が良いが?」
「買い占めは断っているから大丈夫だ。袋が4つとその他だ」
中古の魔法袋300キロ用を金貨1枚100万ゼニーにて冒険者に提供している。
とてつもない破格値だ。新品の袋なら金貨5枚は最低する商品だが中古と言う事でこの価格にしてあるが、実はほぼ新品だ。
売り始めた当初は確かに皆の手持ちや貸し出した袋を回収しての中古品であったが、売れいきが良くてとうに複写新品をわざわざ汚したりして中古品に見せて売り始めていた。
「しかし 安すぎないか?」
アーシャも苦笑いしながらユウゾーに尋ねた。
そう言われてもユウゾーは価格については上げるつもりはない。
元は消費魔力だけである、一晩寝れば回復する。
「まぁ元はタダ同然だし、今晩また何袋か作るか…」
一応疑われ防止に販売数は月に何袋と決めてあるが、人気が高くなかなか入手出来なくて奪い合いに近い状態になっている。作れば作るだけ売れるが、やり過ぎは御法度だ。
ユウゾーが金貨13枚と銀貨数枚の入った小袋をライラに渡す。
ライラが自室にある秘密の隠し金庫にて保管するのだ。
近頃はギルドに預けてはいない、ギルドから預金を監視されるのを防ぐ為の対応になる。
「はい お預かりします」
ライラが席を外して自室に小袋を大事に運んでいく。
新開拓村が出来て約半年、隠し金庫には正直かなりの金額が保管されている。
皆の小遣い分配だけで、たまに日用品で不足する物を補充するくらいしか使う事がない。
一応従業員待遇でカリナ3名とケイト親子に給与として支払うが、その位では影響はでない。
「「すまんなユウゾー 部屋付き食事付きでいい給与まで貰って」」
カリナ達が酒を片手にお礼を言う、一人100万ゼニーを給与として毎月受け取っている。
ケイト親子も二人で月に100万ゼニーを受け取っているが、当初はその金額に驚かれなかなか受けとって貰えなかった。
住み込みの食事付きなら年収に匹敵する金額となるからだ。
ケイトに今まで満足に服も買えずに赤貧に近い状態からの脱却に、母親はユウゾーに感謝しかない。
二人共この数ヶ月で小綺麗な服と痩せていた体もふくよかになってきた。
母娘も驚くほど元気になり、ケイトは午前中の手伝いが終わると午後は自由時間にしてあるので敷地内だけではなく、新開拓村の探索に忙しいようだ。
子供が少ない為か何処に行っても大人達から可愛がられてこの村の人気者になりつつある。
うん 元気な事は良いけれどあまり人様に迷惑は懸けないようにな。
そんなケイトがある日一人の大人を連れてユウゾーの前に連れてきた。