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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
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124 いざ 冬の日常生活


「ユウゾー 久しぶりに魔物が姿を見せたぞ」


妻達が武器を片手に飛び出した。

この数日天気に恵まれ魔物も少し活動し始めたのだろう、塀の上に二人が登り門から三人が出ていく。


どれどんな魔物が…。


 うぉー 大猪の四ツ牙だ 逃がすな。やつの肉は美味い。


妻達が大猪を仕留め意気揚々と帰ってくる、さっそく解体作業開始だな。


ユウゾーはミーアとマーラを引き連れて土壁の外側の点検に出掛ける。

ぐるりと一周周り何処か魔物に依る不具合が無いか定期的に点検する。

これは隣のギルド管理の土壁も同様に点検を行う。


「ふむ 何箇所か魔物に依る攻撃跡らしきものがあるが誤差範囲だな」


コンコンと土壁の攻撃跡らしき箇所を叩いて強度確認し、念の為補修魔法をかけていく。


「丈夫なものだな、何の位耐久年数は持つのだ?」


 放置状態なら10年で半減かな? 


基本数年に一回全面補修をかければ十分だが、魔物が激しく攻撃した箇所は都度補修をすれば安全だろう。部分補修ならさほど手間暇はかからないしな。


確認作業が終わり、妻達の解体現場に急ぐ。


「よし これで又当分美味しい肉に不足しないな」


倉庫にぶら下げてある肉専門の魔法袋はこれで5袋目になる。

1袋2.5トン近く収納できるので、計10トンは予備肉がある。

生肉を中心に消費していく。


まさに売るほど在庫を抱えている状況だ。

あとひと月もすれば雪も溶け始める、春の訪れになる日も近い。


雪が少なくなれば道の開通も急ピッチで進むだろう。

後もう少しで開拓村との道が継る、完成すれば人の動きと物量が大幅に向上する。


第二の開拓村として賑わう事が予測される。

そうなればユウゾー達も忙しくなる、冒険者相手に色々商売も考えている。

上手く行けばいいが、失敗しても左程困らない程の蓄えもあるし、ほぼ自給自足のベースも作り出している。


これからの人生ライフを楽しむ方向に進めばよいのだ。

ようやく好きな事を好きなだけ行える事が可能になってきた。



数日後にはまた冬空に戻りユウゾー達は家の中での生活に戻る。


「ユウゾー また錬金術か?」


暇を持て余した妻達が入れ替わり1階の奥に作った錬金術室に訪れては、ユウゾーが何を作っているのか興味深く覗き込んでくる。


「うん カリナ達の防具と剣を少し手直ししている」


部屋に入ってくる度に同じ質問を投げかけられるが、一人一人に同じ回答を繰り返す。

3人の装備一式の手直しが完了して一息を入れる。


ライラが丁度お茶と手作りのお菓子を運んできた。


「有難う ライラ、皆は何をしているのかな」


「ははは いつものお喋りです、でもその内容の半分はユウゾーの話ですよ」


 えっ それは気づかなかったが、まぁいいか お喋りの内容まで聞くもんじゃないか。


何となく いい噂と悪い噂の半々だろうと感じていた。


「ふふ 正解かな。でもそんなに悪い話ではないですよ。最終的には皆ユウゾーに感謝するオチです」


いやいや それ程甘い妻達ではあるまい、でも今はライラの言葉を信じておこう。

では魔法袋の予備と剣の増産を始めるか。


魔法袋と剣は春に支援に来てくれるエルフ達の為に今の内に作り置きしなければ。

明日はポーション関連も作らねばならない、なかなかのんびり出来ないユウゾーであった。



「なあ ライラ、この所小遣いを貰ってないようだが…」


「春まで辛抱です。売るものは沢山あるのですが、買取先が…」


それはそうだ、現在この地にはユウゾー一家しか住んでいない。売りにいく為には開拓村が一番近い場所だが、この雪化粧では動けない。


「そうだ ユウゾーの持っている第二開拓村の小売店リストに酒販売店はあるのか?」


手持ちの酒が残り少ないマーラは心配事が多いようだ。


「大丈夫だろ、食堂の店もリストに入っているし冒険者と酒はセットだから、酒を扱わない食堂など直ぐに潰れるぞ」


カリナがマーラから貰った酒をチビチビ飲みながら答える。


「うーむ この際地酒作りに挑戦するのも悪くないな…」


「地酒?それは頼もしいがせいぜい蜂蜜酒くらいしか作り方は知らんぞ」


「蜂蜜酒? あれは美味しいが作れるのか?」


「まずは材料を集めなければな…」


この世界ではまだ養蜂の観念がない、そのため蜂蜜酒はかなり高額な酒にランクされる。

だがその美味しさは折り紙付きだ。


妻達が昔飲んだことのある蜂蜜酒の味を思い出して喉を鳴らす…。




「あん? 春に蜂蜜を大量に集めたい?」


高級な蜂蜜だが妻達の小遣いでどうにかなる範疇だ。しかし急に何故?

ユウゾーが首を傾げているとカリナが話しの流れを説明してくれた。


「ははあ つまり皆が蜂蜜酒の話しに同調したと…」


ユウゾーは思わず笑いがこみ上げてきた、まぁどうせなら美味しいお酒を飲みたいよな。

蜂蜜酒は女性が好む味だろうし、買うのもよいが巣箱を作れば定期的に採取出来るなと呟く。


その呟きを聞き逃す妻達ではなかった、その話しはどういう意味か詳しく説明しろと食い下がる。

妻達の血相に思わず逃げ腰になるユウゾーを皆がしっかり掴んで事の説明を迫る。


しってる範囲の話しを全て妻達に話す事にした。


「「「な なるほど上手く行けば高く売れるな…」」」


取らぬ狸のなんとか を妻達は頭の中に描いているようだ。


「ユウゾー その巣箱とやらを大量に作れ」 


ま まて 事はそんなに単純ではないぞ!ハチは基本的に1種類の花からしか蜜を集めないはずだ、養蜜家はその花を求めて日本中を移動していくと、昔TVで見た記憶がある。

だからそんな手間暇などかけられる訳がない。


あれ?可怪しいな…。確か田舎の家で個人で巣箱を設置して蜂蜜を採取している番組も見たことあるな。


うーん、考えれば野生のハチが季節毎に花を求めて移動するなんて聞いた事もないし、、。

大丈夫なのか  大丈夫だよな、ユウゾーも少し混んがらがっていた。


「どうした?その巣箱とやらは出来ぬのか」


「あっ そうではない、大丈夫だ春になれば検討しよう」


考えをまとめながらユウゾーは多分いけると判断した。

もし違えば単体の蜂蜜をユウゾーの小遣いから買えば良いと割り切る。


妻達の蜂蜜酒の話題はその後暫く妻達の間で語られて、皆が春の訪れを楽しみに待つのであった。



やがて気候は静かにそして確実に春に向かって徐々に暖かさを増していく。

エルフの第三村も新しい命が誕生し、村の誰もが喜びに湧いていた。

その中にはユウゾーの血をひく三人の赤子も含まれている。


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