123 いざ 家造り
お陰様でブックマークが50名に達しました。 お礼申し上げます、今後も頑張りますのでヨロシクお願い致します。
朝・夕の空気が変わり始めた。
日中はやはり暑い日が続くが、明らかに秋の気配が漂ってくる。
正式にこの村の住人になったカリナ達が麦の蒔き頃だと騒ぎ出した。
よし ならば明日は皆で麦の種を蒔くぞと決定する。
そして住宅を作る季節にもなってきた。
本来木は季節の寒い時に工作すると完成後に曲がりの少ない家が出来る。
但し木は数年かけて自然乾燥させねばならないが、それ程の時間は今回無い。
時間がある時に皆に風魔法で水分を飛ばす作業をお願いしていた。
今回に関してはこの木で家を作るしか無い、そう呟いてユウゾーは大量に積まれた木を眺めていた。
まずは明日の種蒔きを終わらせねば…。
これからの季節は越冬に向けての準備期間となる、気合が入る。
皆で大騒ぎの種まき作業が終わり、ホッとした頃に冒険者に守られて大工職人達がギルド・宿屋建設にやってきた。
総勢職人だけで20数名いる、半分は見習いと言うより雇われ労働者のようだ。
力仕事が必要な建設現場だからな、怪我の無い事を祈っている。
これからひと月以上泊まり込みの生活になる、何か必要な物があれば遠慮なく言ってくれ。
食事の材料は任せろ、毎日肉と野菜のてんこ盛りだ。
大八車に似た台車数台に道具や部材及び泊まり込みの一式を積んでいる。
当分賑やかな毎日が続くだろう。
責任者の親方と話合い彼等の泊まる場所と調理場及び井戸の手動ポンプの動かし方を教える。
大層喜んでいた、何をするにも水の確保が一番だからな、親方は最悪川での給水作業を考えていたそうだがこれで大幅に手間が助かったとの事だ。
冒険者達も手動ポンプに目が釘付けだ、えーと問題ないよなマーラ?
家の第一歩は土台作りとなる、土を掘り起こし地固めとなる、その際に大量の小石も必要となる、近くに岩山が無いので河原で石を集める。冒険者達が周りを固め採取作業を行う。
ふむふむ よく手際を覚えておこう、もうすぐユウゾー達も自分の家作りを開始するからだ。
建設に関する特殊工具も覚えておこう、本職のすることは参考になる。
一週間近くかかり土台作りが終えた。
彼等には秘密だが、同じ事をユウゾー達は3日で完了した。
魔法と魔法袋での砂利採取が人力とは天地ほどの差があるからだ。
大量の砂利回収も鼻歌気分で往復出来るからな、、。
合間で魔物退治で大量の肉を彼等に届ける。
野菜はそこの畑にあるので利用してくれ。
冬野菜の植え付けも開始した、白菜系をたっぷり種を蒔く。
おっ 麦の芽も育ち始めたな、がんばれ。
合間の家作りも順調だ、考えればエルフにとって家は過去何回も建設してきている、それなりの道具を渡せば10数人がかかれば驚くペースで作り上げる。
ただこの時期はやることが多い、じゃが芋の収穫も近い。
人参 玉ねぎの種も蒔いた、 落花生の収穫も急がねば。
冬仕度の準備に急に忙しくなってきた。
合間合間の家作りも加われば尚更だ。
朝・夕の寒さがはっきりと感じられる頃にギルドと宿屋の建設が一段落つく。
外装が完了し内装の仕上げが来年の春に道が完成したと同時に再開される。
お世話になったと親方からお礼を言われ、迎えに来た冒険者達と開拓村へ引き上げてゆく。
来年また会いましょう。
ユウゾー達は暫しの別れを告げる。
さて ここからはユウゾー達もラストスパートとなる、日中はそれなりに温かいが、朝・夕はかなり冷え込み始めている。
手が空けば家作りに注力して、待ちに待った家が完成した。
皆が大騒ぎで完成を祝う。
これでいつ寒波がきても暖かい生活を送る事が可能になった。
と同時に長いあいだ開拓に協力してくれたエルフ10名との別れも近い。
寒くならない内に村まで引き上げてもらわねば申し訳がない。
未練たらたらのエルフ達を送り出す日が来た。
土産物に追加の魔石と大量の魔物の肉それに大量の野菜と各自の袋に入るだけ押し込む。
その魔法袋は各自にあげるので大事につかっておくれ。
あっ サイコガン…。 うーん。
そうだ、来春エルフの他のメンバーが来るので、その者たちに渡してもらえるかな?
えっ? 欲しい…。
村に10丁のサイコガン必要かな…。
ならば5丁は認めます。
直ぐにオサに一筆書いておくので村管理でお願いします。
個人所有は認めてくれないと思うよ…。
それとプラハを宜しくお願いします。
約束通り一旦村に帰ってもらうから。
プラハそんな顔はしない。
来年春以降待っているからここに帰っておいで。
その代わり持っているサイコガンの私用は認めてあげるから。
無事に来年顔を見せるんだぞ。
11名のエルフ達は半分泣き泣き新拠点を後にして第三村へ帰っていく。
その一週間後から冷たい風が吹き荒れ、冬の到来を告げた。
「ふー 寒い風だ。この風が吹く前に彼女等が帰り着いて良かった」
寒い外から戻り暖炉の前で暖まっているユウゾーとミューであった。
朝・夕の二回敷地内の異常がないかの見回りである。
魔物たちの姿もめっきり少なくなった。
冬眠、、してないよな…。
寒さに依る移動範囲の縮小だとおもうが、冬眠を考える程に姿が見えなくなった。
来年は少し遠慮してくれればと都合の良い事を考える。
「おっ 寒い中ご苦労さま」
カリナたちが二階から降りてきた。
唯一の暖房がある居間に続々と皆が集まりだす。
今年は時間がなく一部屋に二人の生活で、ユウゾーだけが一人部屋となっている。
正確に言うと昼間は一人だが、夜は二人になる・・。
後残っている仕事は何かな?
焚き火を見つめながらやり残しの仕事を考えている。
薪割りは定期的に行わなければならないし、白菜の漬物も皆の協力で大量に漬け込んだ。
残りは寒風に晒す方が甘みが出ると言うし、霜が降りたら麦踏みのしごとがあるか…。
麦踏みはもう間近だろう、場合によってはこの数日で行うかも。
寒い体もようやく温まりユウゾーは大きく背伸びをした。
「そうだユウゾー 倉庫の貯蔵庫立て付けの悪い箇所があるぞ」
急ピッチで建てた小屋だ、可能性はある。
暖かい日があれば修繕だな、雪が積もる前に対応せねば。
寒波到来まさにみぞれ混じりの強風が吹付け、ユウゾーは日に二回の見廻りが精一杯の状況が続いた、それが3日続いた朝に久しぶりの薄日が射してようやく野外活動が出来るようになった。
手分けして作業分担しながら残仕事を片付けていき、やれやれと安心した翌日から雪が本格的に降り出して来た。
風がなければ左程寒さも感じないと建物の影で出来るだけの薪割り仕事をこなす。
斧をふるっての力仕事といえ冷気が体に侵入してくる。
ようよう目標の量をこなし暖かい風呂にユウゾーは飛び込む。
湯気を逃がす木戸から雪が積もり始めた外を、昼間から風呂に入ったまま眺めるのはなかなか風情がある。
大自然の冬まさにその本番が始まったのだ。
風呂の中で大きく背伸びをして何となく幸福感を味わっていた。