120 いざ 開墾作業
本日より朝の8時に投稿致します。宜しくお願い致します。
夏が近づく、その為か夕立がよく降るようになった。
暫く雨が降れば直ぐに止む、水掛けが楽になって助かるが、野菜の虫退治に手間がかかる季節だ。
エルフ達が自然の薬草を配合して野菜に与えてから楽になったかな。
地球で言うトマトやきゅうりそれに茄子等に似た野菜も元気に実を大きくして食卓を賑わしている。
ユウゾーの好物の枝豆も皆のお気に入りだ。
苦労して掘り当てた井戸にトマトやきゅうりを冷やしてのご馳走が並ぶ。
うーん もう夏とよんで良いな、そろそろ日中の屋外仕事は控えたほうがいいかも。
朝・夕で頑張れば良いだろう、先は長い無理は禁物だ。
日中は何本か残してある大木の下で涼めば良いからな、ハンモックを作製して木の枝にて結び寝ていると皆が自分だけずるいと怒り出すので、全員分をせっせと作製し皆に配る。
各自思い思いの樹の下でお昼寝タイムが日常化してきた。
涼しくなってきたら本格的に家作りを開始せねばならない。
あれ 支援のエルフ達はいつまで滞在出来るのかな?
もうこちらに来て数ヶ月目になるよな、流石にそろそろ帰らせねば不味いよな。
マーラに相談すると冬までに帰ればよいのでは とのんびりした回答になる。
下手に今村に帰らせようとすると皆が怒り出す?と真顔で言われた。
いいのかな? 良いんだろうな、、。ユウゾーは何となく皆の空気に流された。
ギルマスが突然の再訪問で砦にあらわれた。
その姿に皆が驚きながら歓迎の準備を始める。
お供は前回と同じ冒険者達と、カリナ達もいる?!
照れくさそうにカリナ達が手を振っている。計9名の突然の訪問だ。
「陣中見舞いだ 突然にすまんな」
その態度はとてもすまんと言う表現とはかけ離れている。
まるで突然の訪問で慌てる様を楽しんでいるような気がするが・・。
「おう そうだ手土産が有るぞ、カリナ達に頼んであったのだろう?カリナ達の魔法袋が一杯だと言うのでわしの袋で運んできたぞ」
そう言って近くのテーブルに品物を並べる。
はい?! 何だこの大量の酒は? 誰が、、。
直ぐに判明した、マーラからの依頼品だ。
マーラが喜び勇んで駆け寄り自分の魔法袋に回収している。
「な 何だ?ちゃんと金はカリナに払ったぞ!」
はぁ~ いつの間に・・。
「仕方ないだろう、用意してた酒も飲み尽くしたし・・」
時折マーラが晩酌していたのは知っていたが、カリナに注文していたとは、おまけにギルマス本人が運んできてくれるとは・・。
「良い良い こいつの酒好きは知っておる」
その代わり今晩は酒をおごれとマーラに交渉している。
マーラが渋々承諾した。他の皆がその様子に笑いを噛み殺している。
夕方になり森の中に涼しい風が吹き始めた、夏の夜の宴会には適している清風だ。
急遽用意した大テーブルに大量の食べ物とお酒が並んだ。
賑やかな宴会のスタートとなる。
「信じられんな この危険地帯での豪華な宴会などは、、」
冒険者の一行は辺りを見渡し苦笑いを浮かべて酒を楽しんでいた。
ギルマスが今回の訪問目的をグラス片手に語り始める。
「拠点建設の途中確認と少し相談がな、、」
何かあったのかな?相談事とは、、。
「相談事は後でゆっくり話すが、見事な拠点が完成しているな。明日見学させてくれ」
隣に建てたユウゾー達の拠点が気になるようだ。
皆で力を合わせた自信作だ、喜んで案内しよう。
「ホウー こ これは見事な・・」
ユウゾー達の新拠点に案内すると、そこに広がる光景に皆が驚きの声を上げる。
一辺300m四方の土壁に囲まれた敷地内には多品種の野菜が植えられていた。
ユウゾーによると葉物野菜系は取りやすいように現在住んでいる場所の近くに植えてあるが、この拠点は根野菜系を中心に植えてあり種類は10数種におよんでいる。
その他は今が盛りの夏野菜と言われている品種が実をなしている。
どれもが夏の日差しと風に揺れて色とりどりな実が光輝いていた。
特にトマトに似た品種は大量に作られており、実を熱して ケチャップ なる品を作るそうだ。
無論毎日の食卓にその実がならんでいる。
「ふむ 約後ろ半分はまだ植えていないようだが・・そうか、この先蒔くのは麦関連か?」
ピンポーン 正解です。涼しくなってきたら直ぐに蒔けるように準備しています。
主食になるから畑の半分は必要になる、余れば保存すれば良い。
「ほぼ真ん中に空きスペースがあるが、あそこが家の建設予定地かな?」
またもや正解です。秋口には建設開始となる場所です。
今片手間に部材を集めている最中です。
「うーむ よく考えて植えてあるな。あの井戸から伸びておる水路にも似た物は?」
またまた正解、苦労して作った溜池システムの一部ですぞ、近くに寄って確認下さい。
この畑の4箇所に散水用の小さな溜池を作っております。その水路系なんです。
ユウゾーが嬉しそうに説明を始めた。
「なんだ?井戸に蓋が・・いや 何やら突起物が二つ、何だあれは?」
家建設予定地の中に井戸が掘られているが、何か様子が可怪しい。
「これは鋳物か?何やら不思議な形の物が二つ共に反対に設置してある??」
その一つに長いレバーの様な物が取り付けられて先端は曲がった大きめの出口が下に伸びている。
「これは手動ポンプと言いまして井戸の水を効率的に汲み出す事が出来ます」
な なんだと!?
「ウォー 急に大声を・・」
どう使うのだ? 使ってみせろ!
なんだ ギルマス急に興奮し始めたが・・。
早く 早くの声に急かされてユウゾーは慌ててポンプのレバーを握り動かした。
ポンプの出口から勢いよく水が溢れ出す、それを見たギルマスが 代われとユウゾーからレバーを取り上げて自分の手で動かしだす。
「なんてことだ、こんなにも楽に大量の水が溢れ出てくる、、」
はぁ こんな前時代的な物で喜んでいただければ・・はっ、いかん不味かったか?!
事の重要さをようやく理解したユウゾーであった。
「ユウゾー この事を知っているのは?」
あっ えーとこの場に居たのは マーラとミーアかな?
二人が至急呼ばれ 二人が何事かとギルマスを見ている。
「マーラ ミーアこの道具をどう見た?」
ギルマスが尋ねる、二人揃って怪訝な顔つきで何を騒いでいると言いだす。
二人にとってはまたユウゾーが何か便利な物を作ってくれた位の認識だと判明した。
「はぁー お前等な これにどれほどの価値があると思う?」
ギルマスが呆れた顔で再び尋ねた。
その一言で先にマーラがはっと気づく、ミーアはまだポカンとしている。
「そ そうか 一財産生み出すな・・」
ようやくこの品がとんでもない価値がある事を理解したようだ。
「いかん 私とした事が・・ユウゾーのする事に慣れすぎていたのと、目先の開墾生活が楽しくてついぞ考えが回らんかった」
「えーと そんなに金を今更稼がなくとも・・」
「「お前は黙っておれ!」」
ギルマスとマーラが同時にユウゾーを叱る。