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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
12/281

12 いざ 開拓村 3

 「いらっしゃいませ~。 あれお客さん男1人かい?」


宿泊代の心配ではなく、本当に男一人を心配してくれているようだ。

一泊二食付きで2泊分1万6千ゼニーを支払う。


食事は二食共部屋に運んでくれるそうだ。 

何となく宿に入った時から背中に痛いほどの視線を感じていたので、好意に甘えることにする。


鍵を渡されるときも部屋のロックとなにか有ればすぐに駆け付けるから、遠慮なく大声を出してくれと何回も繰り返してお願いされた。

なんだか少し男として自信を無くしてきたぞ。


部屋に入り鍵を確実に施錠してようよう落ち着いた。今日一日でかなりの金額を稼げた。

これで明日に市場で冬支度の不足分等を買い物で補えば、のんびりとした生活を過ごせるだろうか。

なんせ初めての異世界の冬を一人で迎えるのだ。


何が不足するか予測もつかないが、反面何となくウキウキと楽しんでいる自分を見つけて思わず苦笑いをしてしまう。


しばらくするとドアをノックされ食事の配膳を受ける。

宿の娘さんかな?配膳が終えても立ち去る気配がないので、いくばくかのチップを渡しドアまでお見送りをしてあげた。




翌朝 食事とトイレを済ませ、下へ降りるとミューはすでに到着して待機していたが、急ぐ必要もないので二人分の飲み物を注文する。


今日一日の行動予定を打ち合わせ中もチラチラと彼方此方からの視線を感じるが無視しながら予定を詰めていく。

私もまだ環境に慣れないせいか今一落ち着かない。


 さて、今日も一日頑張ろう!

 まずはギルドからかな。



「お早う御座います。ユウゾーさん ミュー」


受付の美人嬢は今日は顔色も良く元気そうだな。

朝の忙しい時間帯を避けたのが良かったのか、冒険者の人数も少ないようだ。

改めて各冒険者を横目で観察すると、流石に皆鍛え上げているのがよく分かる。


女性ながら筋肉モリモリの人も何人かいる。

厳つい装備品に身を固めている姿にはまだ違和感が正直ある。


 私も何か身を守る装備を購入せねば…


「おはよー ライラさん」


カウンター越しに挨拶を交わし昨日の持ち込みの査定評価の説明を受ける。


「…以上で 合計銀貨4枚小銀貨1枚の41万ゼニーです」


おっ、あの大猪意外とお金になるんだな。感謝!

有償板に昨日の魔道具屋の売上高の半分、金貨5枚と合わせて振り込みをお願いする。


ライラさんが金貨を見て少し固まっていた。

数人の家族なら金貨一枚で半年以上の生活が出来ると昨日ミューに教えられた。


昨日の魔石代金残24万と合わせて 約560万ゼニーがカードに入金された訳だから。 


 それでもまだ魔法袋には500万程の現金額がある。

でも食料・日用品 それに防具等の購入予定があるから、ほとんど手元には残らないかもね。


 「そうだ ユウゾーさんは初登録ですから、初心者講座を受講されるか、何方か のパーティに最低3回同行するのが規則なのですが、何方を希望されますか」


 初級者は生存率を上げる為にギルド主催の講座を受け色々な対処方法を学ぶか、冒険者3級以上の個人またはパーティに同行して現場教育で必要な事項を学ばなければならない。


 「うーん 今回は時間が足りないな…」


必要な品を購入したら至急森に戻り、冬支度の準備に掛かる必要がある。

寒い冬を安全に過ごしたいからな。


 「そう言えばミューは3級冒険者だったよね?」


 「そうだ 今年の春に昇級したんだぞ」


えっへんとそこそこの薄い胸を大きく張りミューは答えた。


 「ライラさん 実はこの村に来る前にミューと3日ほどパーティーを組んだのですが、一回分としてカウント可能ですか? それとこの件に期限はあるのでしょうか?」

 

 「ああ ユウゾーは攻撃力において私に匹敵するのは間違えないぞ。ただ冒険者 としての常識は足りない事が多かった。でも同行した3日間でそこそこ教えこんだのは事実だ」


  ミューが補足を入れて補足説明を行う。


 おい 見栄をはるな。 何が自分に匹敵するだ お前を助けたのは俺だ!



 「そうですか… わかりました。ミューさんの証言があるならば、私の権限で一回分は完了とします。カードを貸して下さい記載しておきます。それにこの件での達成期限はありません。達成しなければギルドでのクエストを受ける資格がありませんので」


 なる程 クエストを受けられなければ食い扶持に困るのは自分自身だからな…


ライラさんに今回の穏便な処置を厚くお礼をする。

ライラさんの顔が少し赤くなり始めた? 体調不良? 昨日に続き大丈夫だろうか? 心配です。無理は駄目だよ。

残りの二回分は来年の春に残し、この場から辞退しようとした時に声がかかる。


「おい。私に挨拶なしに帰るのかい。少しお茶でも付き合え!」


二階の階段からギルマスがニヤニヤ笑っている… 



 ハァ…厄介な人に捕まったな…。お茶をすすりギルマスからの興味本位な質問に答えていく私です。 


森の何処に居住地を確保しているのか から始まり、あれやこれや私の情報を丸裸にする勢いでの質問責めだ。

無論重要事項はこちらもぼかすが、しつこい事しつこい事。

昨日の魔道具屋の婆さんといい勝負、、まてよ!


 「ギルマス…つかぬことを尋ねますが、ギルド裏の魔道具屋の店主と仲がよろしいのでしょうか?」


一瞬体が固まったのを見逃さなかった。


 「ははは アリアか? バレたかな?」 


 「それは (じゃ)の道はなんとか と言いますので」


 「…なかなかに聡明だな」


やはりか! 道具屋の婆さんとグルか。 いや同類だな この二人は、、

情報が全て伝わっていると考えるべきだな。頭が痛い……話を変えよう。


 「ところで神の加護についてお詳しいですか?」


ギルマスが完全に固まりました?!

突然の加護の話題変更に違和感が走ったのかな。


 「…無論それなりに長く生きているから、沢山の神の名は存じているが…」


 「ならば、この…」


 「まて! その前に私に話しても良いのか?」


どういう意味だろうか? 加護の内容が不明だから尋ねたいだけなのだが。

どうもこの異世界では加護自体秘密にする必要があるのかな?

正直地球ではそんな経験がないから、私には判断材料がない状態だ。


 「いや、加護の内容が不明なので教えて頂きたいと…」


 「内容? 何を言っておる? 神の名がわからぬと言う事か?」


どうも食い違うようだ。何かがズレている。そこをはっきりさせないと先に会話が進まないぞ。


 「そもそもこの世界では神の加護はどの様な位置付けにあるのでしょうか?私は ご存知の通り他の星から転移されて来たので、この世界の慣習等についてよく分かりません。そこから説明をお願いします」


 「説明も何も 神の保護がある それ即ち加護となる」


 えーと 禅問答か? もう少し砕いた説明が欲しいな…


 「…その点は理解していますが、私の知りたいのは別です。はっきり言えば加護とは他人に知られてはいけない事なのですか?」


 「…いけなくはないが、基本自分の胸の内に収め日々その神に感謝する毎日が最上とされている」


 「…その理由は?」


 「…神を信じて、神に関わらず…」


 おい それ矛盾していないか? 堂々巡りが始まった…


 「すまぬがこれ以上は加護について私からは話せない。恐れ多い」 


ゲームセットです。この場は諦めよう。またの機会だ…

これ以上は時間の無駄だ。引き上げるとするか…

帰りの挨拶を終えようと腰を上げかけた時に爆弾発言がでる。


 「少し待て。 実は折り入って相談がある」


 うん? どうやらその話がお茶に誘われた理由かな?


上げかけた腰を再度ソファーに沈み込ませる。


 「うん 実はだな その……ラ ライラはどう思う?」


 ライラって受付嬢のライラだよな? 他は知らないし。 

 そのライラがどうした? そうだ 体調が悪そうだった 早退させるように後から提案してみるか?


 「村で用事が済めば明日には森に帰る予定だろう?」


確かに最初の頃の雑談でその旨は伝えたな。


 「良ければライラも一緒に森の居住地に住ませて欲しい。あの通りかなりの美人だし気立てもわしが保証する。

 唯一の思案事項は獣人ではあるが、人族との違いはあの可愛い耳だけで他は何も人族とは違いはないぞ。そもそもこのご時世純粋種は本当に少なくなったし。かくいうわしもハーフエルフだしな…兎に角ライラは良い子だ。一緒に住んでも絶対間違えはないぞ。さらに…」


 まて まて! つい呆気に取られて聞き流していたが、何の話をしているのだ?

 まるで結婚紹介人のオバさんみたいな話しぶりだが…。

 前後の流れについていけてないのですが、順を追って説明せい!


 「説明は今しているのだがな…そうそう下で待たせているミューも良い子じゃないか。まだまだ発育途中ではあるが、ライラとミューの二人を連れて森に…」


 「待てと言ってる! 話が飛躍すぎて混乱しておる。何の意図があるのだ?」


 「意図?そんなものはないぞ。純粋に紹介だ」


 紹介? いつからギルド長は女衒(ぜげん)になった!!

 そもそも肝心の彼女達にまともに話をしたのか、絶対にしていないだろ。


 「話が逆だぞ。ライラから昨日に相談があったのだぞ。そしてミューは問題が無いだろう? あんなにお前に懐いているのに」


 はい? 今何と? すまんが少し時間をくれ。頭がさらに混乱中・・。

 意外と言うか 昨日会ったばかりのライラが私に?

 いや違うぞ 何かある 騙されるな。きっと別の思惑が。


 「何をそんなに悩む? お前もこの世界の事情を大方理解しておるだろう。圧倒的に男性不足だ。気に入った男は早く手をつける そうでなければ他の女が動き出す。当たり前の事だろう?何ならあと何人か紹介するぞ。断る女は余程の事情持ちだと思うぞ。良ければ我が村のエルフ達に何人か声をかけてみようか?まだ純血種が多く残っておるが?」


 えーい 黙れ! 事情は了解した。その上ではっきり答えるぞ。


 「今はまだいい。この世界に来てほんの数ヶ月だ。まだ此方の生活に慣れるのが精一杯な状況だ。他人のことなど考えられない状態だな。取り敢えずこの冬を過ごしてそれなりの経験を積んで改めて色々と考えてみる。それが答えでいいか?」


 「来年の春以降に答えを出すと考えていいのだな? 因みにライラの事は嫌ってはいないと思って良いのだな?」


その通りだと答え 部屋から退出する。

もう昼休みの時間だ。ミューを待たせ過ぎたな。

早く次の予定先に行かねば、もう一泊する必要が出てくる。


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