118 いざ 新拠点設立 3
では午前中の仕事開始だ、砦に一箇所だけ設置してある門から門番役2名を残し、ユウゾー達は出ていく。
前回と同じように基点を決めて測量の真似事にて、紐を引きながら予定地に走り出す。
護衛役がしっかり辺りを見張っている、邪魔な木はしっかりと魔道具で切断しながらの作業だ。
お昼までに一辺100mの壁を設置終えた。
外の作業は今日は此処までだ、無理は禁物だ先は長いぞ。
出てきた魔物をお土産に砦に帰還する、肉の確保成功だな。
午後からは完成して寝泊りをしている新開拓村予定地での農地作りになる、日当たりの良い場所を選びまずは土魔法で土地を荒く耕す。
その後に配布した鋤や鍬で丁寧に土を混ぜ合わせる作業になる。
確保した農地は横50m縦30m程度の広さだがとりあえずは十分だろう。
出来上がった農地に夕方近く種蒔きを開始できた。
えーと この品種はまだ蒔くのは早いな、おっ これはいけるか、、。
にわか農家のユウゾーはエルフ達に教えてもらいながらこの季節に蒔ける種を投入していく。
葉物はさほど季節は選ばないが、季節に敏感な種は肝心な季節を外しては上手く育たない。
ようやく種を蒔き終わり水を懸けて一息。
たのむぞ 丈夫に育っておくれ。
「おはようございます。突然ですが、午前中の行程を変更致します。昨日の作業時に皆さん経験なされたと思いますが、魔物がウザイ、兎に角ウザイ。よってこの一週間は魔物殲滅作戦に変更致します」
途端に皆の目が輝き出した、皆も同じ意見だったのだと理解した。
「はい 隊長」
土魔法隊のエルフの一人が手を挙げる。
「はい 土魔法隊隊員の…」
「メイナです 宜しく。私達にも皆が持っている銃を支給して下さい」
あっ だよね、忙しさで忘れていたな。不公平は問題ですな。
「承知しました。一部手抜かりがあった件は謝罪します。ただ適正試験を行う必要がありますのでこの後残って下さい」
マーラに残りのエルフ達の指揮を任せて討伐隊は出発した。
「さて 5名の方は順番にこの銃を触って下さい。その時に鑑定をしますが宜しいですか?」
まずメイナが一番に歩み出て銃を受け取る。
鑑定の書をユウゾーは握り締め 思念力 の数値を読み取る。
思念力175 おっ いけるな、次の方。
5名全員の結果が出た。
175 111 127 99 108 お見事皆さん合格です。
銃の在庫は3丁の為、不足分を複写魔法にて製造して皆に手渡す。
さて教官役はミーアに任そう、その為にミーアに残ってもらった。
それに何故かミーアは教え上手だ、彼女が教えると上達がものすごく早い、同じように私が説明してもそれなりの時間がかかってしまう、、解せん!
ミーア教官が皆に丁寧に説明を始める。
皆が真剣に聞き入っている、頑張れミーア。
一通りの説明にたっぷり時間をとる。基礎が一番大事だからね。
やがて説明が終わり質疑に入り皆の理解も確認しながら、教官が実技に入りたいと要望される。
無論ユウゾーに異論はなく、全員壁の近くに移動した。
ユウゾーが射撃用に土魔法で土手を作り、いざ試し打ち開始だ。
5名分の標的を作ったので存分に各自撃って下さい。
土魔法でテーブルセットを作りお茶を飲みながらユウゾーは皆の見学だ。
何だかんだで午前中も終わりに近づく頃、マーラに引き連れられて他のエルフ達が帰還する。
皆の表情がもの凄く爽やかに見える、鬱憤ばらしに成功したかな?
テントの近くで皆が魔法袋から成果の魔物をとりだした。
ま 待て、なんだこの狩った数は半端ない!たちまち山のように魔物が積み上がる・・。
訓練を終えた魔法隊も集まってきて呆然と見ている。
まだまだ その気になって狩ればもっと狩れるぞ、ミューが薄い胸をはる。
これは午後からも変更して魔物の解体にあたらねば、拙作の肉が無駄になるな、、。
ユウゾーは予定通りに進まんと頭を振る。
午後からは魔物の解体と干し肉・燻製と皆で手分けしての作業となる。
中にはあまり食肉に向かない魔物もあり、魔石だけ回収する作業になったが、大量の肉に皆の顔も綻んでいるようだ、さてこの先一週間どれだけ皆が張り切るやら、、。
最初の3日間はそれはそれは魔物が可哀想に思えるほどの勢いで狩りまくり、午後からは解体作業に明け暮れていたが、4日目くらいから少し様子が変わってきた。
狩る事は狩るが美味しい魔物の肉だけを回収し始め、それ程でもない肉は魔石だけ回収し本体は放置。まぁ当然の結果だろう、午後からの解体作業は結構重労働だからな。
流石に皆も解体作業に飽き始めたのだろう、それはユウゾーも同じであった。
無造作に積まれた魔石入れの籠の中はどれだけの魔石が入っているのか考えたくも無いほどの数になる。
だがそのお陰で一週間経った新拠点の周りからは、初めてきた時に比べて明らかに魔物の数が激減した光景が確認できる。
あくまでも当初と比べればと言う前提であり、開拓村やエルフの村の近辺とは魔物の数は桁外れに多いのは変わらない。
明日からは拠点作りを再開するとユウゾーが皆に話すと、何となくほっとした空気が皆から流れる。
これで午後からの解体作業は当面避けられるからな。
分かっているよ皆の気持ちは、つい哀れむ目線で皆を見てしまう。
ご苦労さまこの一週間、お陰で明日からの拠点作りは捗りそうです。
半日に100m程度を目標に土壁の設置工事を再開する、ユウゾー達の拠点は300m四方の規模に当初は決めそれに従い建設していく。
計12日間を費やしようやく新拠点の枠組みが完成する。
これからが本番だ、300m四方の敷地内の整理整頓が開始される。
昼間はほぼ全員で敷地内の伐採作業になる、この作業に一週間近く要して完了した。
後は切り倒した木々を一箇所に集め綺麗に組んで並べる、風を通りやすくして木を乾燥させる為だ。
なんだかんだでこの地に来てからひと月が過ぎようとしていた。
考えればこの人数での作業では驚異的に早いペースで拠点作りはすすんでいる。
基本新拠点は農業特化型だが、将来は畜産も視野に入れて考えている。
当面は野菜や麦の穀物生産が主ではあるが、その下準備の開墾がようやく開始される。
敷地内を土魔法にて荒く耕して、後は人海戦術で更に入念に耕していくのが、この数日の皆の日課になっていた。
慣れぬ作業に手にマメを作りながらもユウゾーは作物の収穫を夢見ながら頑張っている。
早く耕して種を蒔かねば生育時期がズレて収穫量に差が出てくるからだ。
耕作と畝作りそして種まきと一週間かかり終えて皆がほっとした時期に、この新拠点に突然の訪問者が現れた。