115 いざ 懐かしき洞窟さらば
寄り道ついでに昔の住居に向かうユウゾー達である。
途中岩塩の質の良い場所により出来るだけ回収して久しぶりの住居に到着した一行であった。
「此処に住んでいたのか?」
絶壁の岩山にたどり着き目印の付けてあった場所にユウゾーはたどり着いた。
魔法にて偽装してあった岩山を崩すとポッカリと入口が現れる。
風魔法を使い内部の淀んだ空気を入れ替え一行は中に入り込む。
「ふむ 多少埃っぽいが内部は変わっていないな」
「これは魔法で内部をくり抜いたのだな」
マーラ等がまたもや呆れた顔で内部を見回した。
「6人だと少し手狭だが一晩の宿なら問題ないだろう?」
簡単な掃除を皆に任せて、地下の貯蔵庫に入って不要の食材を外に運び処分する。
「少し暗くなってきたか」
夕暮れが近い、魔法ランプに火を入れて灯りをともす。
三ヶ所に設置すると内部はかなり明るくなってくる。
ついでに木の扉を付けて角材の閂で外部からの侵入を防いだ。
風呂場にお湯を溜めて旅の疲れを癒やしてもらおう。
料理は簡単なメニューで良いな、野菜が少し少ないがその分肉は多めだ。
「ここで半年以上過ごして来たからな」
何となく遠い昔のような気分におそわれる、この地を出て色々な事があったなと感慨深さも一入だ。
料理を作りながら次にこの地を尋ねる日があるかなと考える。
恐らく余程の事がなければ訪ねる事も無いだろう。
「さぁ 料理が出来たぞ食べようか」
次の朝洞窟に別れを告げ土魔法にて入口を偽装した。
どのルートで開拓村へ帰ろうか?
ミューが中央突破が一番早いと提案する。
そうだな、人数もいるし経験値稼ぎを兼ねて帰るとするか。
ゴブの巣が多い中央突破を帰路とする。
「おう 帰ってきたか。随分念入りな調査だったな?」
ギルマスに当初予定してあった帰還日とのズレを謝る。
当初の予定より一週間近く延びてしまったからな。
「ふむ するとこの川岸から森の中に約300m程度進んだ所を拠点とする訳だな。其の地点に10m四方程度の土壁を設置して分かりやすく目印にしたと…」
簡易地図を手にギルマスとユウゾー達が今回の拠点探しの探索結果を検分する。
「だが話しを聞くと魔物の数と強さが数段アップしたのが出没するのだろう、本当に此処で良いのか?」
それについては今回テストを兼ねて魔物の強さを検分する仕掛けを置いてきたので、次回訪問時には結果が出るだろうと説明する。
「その結果次第ではこの場所から撤退するのだな?無理はせぬようにな」
ユウゾーにすればまだ手抜きの砦であり、農業に関してはこの選んだ土地が最適なので出来ればこの地にしたいが、妻達や生まれてくる子供の安全を考えると確かに無理は禁物かと考え込む。
全ては次回訪問時が勝負となるな そう判断するユウゾーである。
その後新拠点に関して互いの約束事を取り決め仮契約書にサインする、最終的にギルマス本人が土地を確認して本契約を締結する運びとなる。
ユウゾー達は開墾に必要な器具様々な物一式を購入していく。
こんな物は使うまいと思われる物まで買い漁った。
後日必要な時に気軽に買い物が出来る場所ではない。
ある程度高級な品を一つ購入すれば後はユウゾーの複写魔法で数は増やせる。
但し安物買いをしてしまうと更に70%落ちの性能になってしまうので使い物にならない、それなりの高級な品を購入する。
その他家具類・日用品と食料関連等開拓村の商店はちょっとした景気ブームになり大騒ぎとなる。
どうしてもこの村では入手困難品は取り寄せてもらう事で前金を支払う。
後日不足品が出るだろうから、その時に運び込めば良い。
狭い開拓村ではあっという間にユウゾー達の新拠点の噂話が広がる。
中には自分達も移住計画に参加したいという者もいたが、川の向う岸だと聞かされて尻込みする者がほとんどであった。
そんな中商売人は逞しい、出店に関して全ての権利をユウゾーが握っている事が判明すると泊まっている宿屋に訪ねてくる者達が増え始める。
まだ野とも山ともつかぬ移住話しに流石にユウゾーも閉口する、形が出来上がってから改めてと断りをいれても商人達はなかなか引き下がらない。
早めの確約欲しさに連日の訪問客に堪らず、ギルド内にある冒険者用の宿泊先に入れてもらい、商人たちからの面会を遮断する。
そんなドタバタを繰り返している毎日であったが、エルフ村に支援を求めに行った、マーラとミーアが村のエルフ選抜隊10名を引き連れて帰ってきた。
この内5名は土魔法の得意とするエルフ達であり、ユウゾーの希望した者達である。
他の5名に関して戦士及び開墾隊となるが、よく見るとこの5名に見覚えがある、森のダンジョン攻略に参加した猛者揃いではないか、村の運営に問題ないかマーラに尋ねると皆のたっての希望だと半分諦め顔で話してくれた。
あの時ユウゾー達がいなければ自分等は命が無かったかもしれないと、恩返しに是非ともとオサに頼み込んだようだ。
現在ユウゾー達が持ち込んだ食料が豊富に村にはあり、来年まで困らない状態だしそれなら行って来いとオサも同意したようだ。
ユウゾーはマーラに耳打ちする。
表向きの理由は分かった で彼女等の本音は?
ユウゾーの作る食事とお風呂それに少しの息抜き。
マーラが苦笑いで答える。
ユウゾーは軽いため息をつく、まぁ良い。食事と風呂は面倒見るが息抜き出来る暇まどないぞ。
その後数日かけてエルフの増員による食料の見直しや各種装備品等の作製に追われるユウゾーである。
出発の前夜に出来上がった装備品をエルフ達に配る。
鎧関係の強化と弓の強化品それに5名には前回使用したサイコガンと各自に魔法袋を配り終えホッと一息つけたユウゾーであるが、もう明日には森の奥地に出陣となる。
ユウゾー達総数16名 他にギルマスとその護衛5名合わせて22名の部隊が村から朝早く出ていく。
それを見送る関係者からの声援を背に受けて皆の顔に軽い緊張感が走っている。
中にはそれを存念そうに見送る者達もいる、確約の約束を貰えなかった商人達だ。
あの商売魂には感心するユウゾーであった。
いよいよだ、成功するか失敗に終わるかは誰にも現在分からない、だがユウゾーには何となくこの遠征が上手くいきそうな予感がしていた。
無論根拠などない只の希望的推察ではあるが、ユウゾーは半分ウキウキしている自分に気づき慌てて顔を引き締める。
そんなユウゾーを見て苦笑いをする妻達の姿があった。