表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
11/281

11 いざ 開拓村 2

少し遅れました。午後も少し遅れる予定です。

 「お待たせしました。ギルマスより連絡を受けておりますので先に手配完了しております。この場所に直筆サインだけお願いします。それと有償になりますが、便利なカード型の認識板もご用意できますが?」


受付嬢の綺麗なお顔が少し赤いようだが、体調不良かな?お大事に。

一般用のプレートは無骨な薄い金属板だが、有償板はお洒落な感じがする。それと一番の違いはキャッシュカードみたいに現金の預け入れができ、連携先の店や旅館ではカード決済サービスがOKとの事。


魔法袋があるので現金の持ち運びには困らないが、あまり他人の目に魔法袋を晒したくない時は便利かも。

価格が5千ゼニーだが、よくお金の価値がわからず隣りにいるミューにそっと目配すると、彼女は胸ポケットから有償板を出し 便利だぞ とニヤッと笑った。


 「えーと これで支払えます?」

魔法袋に数枚入っていた銀貨を渡してみる。


 「はい 大丈夫です。こちらはお釣りの5千ゼニーです」


先程渡した銀貨より一回り小さくデザインも違う小銀貨なる貨幣を5枚受け取る。

ついでに貨幣の種類と大体の価値も教えてもらう。

後は習うより慣れろで、実体験で覚えていこう。


部材の売却をお願いし、大量の各種魔石をカウンターに提出する。

職員が数人にてあたふたと確認作業に入る。


 すみません。今後は溜めずに持ってきます。


魔石の総数218個 合計金額 34万ゼニー。10万ゼニーだけ現金で残りはカードに預ける。この10万は後でミューに報酬で渡す予定。

四ツ牙の大猪は奥の解体場に持ち込み、明日に査定金額が確定。


魔法袋の売却は可能かミューにこっそり相談すると、ギルドでも可能だが商店に持ち込む方が高値が期待できるとの事。

彼女の知り合いの店を紹介してもらおう。


ギルドでの用はすべて完了。明日再訪問で大猪の代金を貰うだけ。

受付嬢に手続きのお礼と明日の再訪問を約束してギルドを出る。



ミューの案内で裏筋に一本入った場所にその店があった。

割と小ぢんまりとした構えの店だが中に入ると意外と奥行きがあり、見かけより広々と感じる。


店内には各種魔道具のサンプルが大量に置いてあり、カウンターの奥の棚には今回の目的の魔法袋が大事そうに陳列棚に収まっている。


ミューによると魔道具は高価な品が多く、万一に備え入口近くの商品はすべて外側だけで肝心の中身は入っていないとの事だ。


客より購入要望があれば店の奥から本物を出すシステムらしい。

比較的安い商品は本物らしいが、高価な品はほとんど本物は並べてないと思った方が間違いがないのかも。


 「おーい 婆さんお客だぞ!」


 「誰だい? 失礼なやつだね。なんだミューか。何の用だい?」 


まさに魔法使いのお婆さんと言うのがピッタリの店主が顔を見せる。

ミューが私の代わりに用件を説明してくれる。


私はこれが現物だとカウンターに置く。

昨夜この為に最後の複写をかけ、売りやすい重量収納の魔法袋を作成しておいたので、さほど売却に問題ないと思うのだが…


魔法袋を手に取り見つめていた店主の目の色が変わる。

いや物理的な意味で本当に変わったのだ。ブルーの目が濃いグリーンの目に…


 婆さん鑑定持ちなんだ。


ミューがぼそっと 驚いている私に説明をしてくれた。俗にいう鑑定眼だ。

しばらく眺めていた店主が深い息を吐き出し私に問いかける。


 「これを何処で手に入れたんだい?」


うん?何か不味ったかな。クレームを付けられるようなヘマはしていない筈だが、ここは恍けるか!


 「うん? どういう意味だ。何か問題があるのか?」


 「質問しているのは私なんだが。まぁいいさ、答えたくなければ無理には問わない。少しやっかいな品だね。」


はて、さっぱり意味がわからん。しばし店主とのにらめっこが続く。

先に焦れたのは相手だった。勝った!?


 「はぁ 恍けるなら説明をするが、この魔法袋には時間の付与が付いているんだよ。どういう意味だか分かるよね?」


なんだ?それがどうした? 元は1/30だったけど複写を重ねてその品は1/数の時間効果しか無いはずだが? あっ まさか……?


どう答えるか思案中の私よりミューが先に反応した。


 「えっ!時間の付与付きだって!さすがユウゾーは異邦人だけの・・・・あっ、しまった」


馬鹿者め!! つい先程ギルド長より私の正体は絶対に秘密だと、かなり強く約束事を交わしたのに勢いで喋ってしまった。


 「なんと!あんた迷い人か? そうか、ならば理解した」


驚きの目で私を見つめていたが、意味深い笑いに変わった。

私は横目でミューを睨みつける。彼女は小さくなって頻りに謝りのポーズを繰り返す。

はぁー ため息がでるが仕方ない。もう元には戻せない。


 「恍けてももう遅いな。出来れば他の者には内密に…」


 「了解だわね。それとまだ此方に疎いようだから説明してあげる」


説明によると魔法袋に時間の付与は、今まで幾人の錬金術師が挑戦したがすべて失敗の連続だった。

それを首都の老舗の雇い錬金術師が数年前に初めて付与に成功し、現在その店の門外不出の技術として膨大な利益を上げている。


そんな付加価値の高い商品を持ち込んだのだから、当然店としても用心深く対応せざるをえない状況になったのだ。


第一どう見てもこの高い商品を買えるような人物に見えない。

ならば盗品の可能性を疑う。

盗品を僻地の店で売り払いに来た、と判断したのだが、どうもそんな人物に見えないし、どう対応すべきかと店主も考えていたとの事だった。


 「まぁ 別の意味で驚いたけどね」


再度意味深い笑いを浮かべる店主であった。

私も再度深い溜息をつく。


 「少し教えてくれ。成功した時間の付与は何の位の効果があるんだ?」


 「1/5だよ」


つまり一日しかもたない商品でも袋に収納すれば5日もつという事になる。

えっ? そんなものか 私の持っている1/30は別次元品だな。それに私の魔法袋は今後成長していく可能性が大だ。

絶対に秘密にしなければ。

 

 「…ふーん あまり驚かないのだな。ならば此方も一つお願いがあるんだがね。その願いを聞いてくれれば少し査定に色をつけるよ」


 「…その願い次第だな」


 「この魔法袋をあんたは別の魔法袋から出したよね? その魔法袋を是非とも鑑定させてくれないかい?」


やばい!この婆さん何か勘ぐりだしたな。

おい!目の色が変わりだしたぞ。鑑定眼を発動しようとしているな…

慌てて私の魔法袋を相手から見えない位置にズラす。

効果があるのか不明だが……


 「残念だが、この魔法袋は売る気がないので、交渉不成立だな」


 「…それはそれは残念だが、次回の楽しみにしますかね」


食えない婆さんだ まったく。


 「さて、本題に戻りこの魔法袋の査定だが、内容量は約350キロで、時間の付与は1/3で間違いないかえ?……ならばズバリ750万ゼニーで互いに手を打たんかい?」


 「ちょっと待った!!異議ありだ!」


元気に手を上げたのは先程までしょぼんとしていたミューだ。

先程の失策を取り戻したいのだろう。


 「それは安すぎるぞ。そもそも私の100キロ容量の魔法袋でさえ3百万ゼニーで購入したのだぞ。その魔法袋は容量だけでも一千万ゼニーでの価値がある。それに時間の付与を鑑みると1500万ゼニーはいくはずだ。事実オークションに出品すればそれ以上の落札値は間違えない商品だ」


おう 一気に値が倍か! ミュー頑張れ!


 「いやいや何を言うか素人め!それは売値の話じゃろ。これは買値の話じゃ。

 精々出しても800万が限界じゃ!」


 「なんの! ならばギルドにて正式オークションの手続を行うのみ。1400万」


しばし二人の舌戦が店内に響き渡り始めた………


 「ゼィゼィ ならば遺憾ながらその金額で合意じゃ ゼィ」


 「ハァハァ 此方も心残りなれど今回は合意とする ハァ」


おっ、ようやく交渉成立かな? つい暇で半分うたた寝をしてしまった。

二人共ご苦労さまでした。


 「待っておれ。金の用意をする ゼィ」

店主はそう言うとヨロヨロと店の奥に消えていった。


 「待たせたな。ギルドより最低10%以上の価格を上乗せ出来たはず ハァ」


そ そうか。大変にお疲れ様でしたね。彼女の還元額を見直さねば…


 「用意出来たぞ 確認してくれ。1100万ゼニーじゃ」


目の前にピカピカの金貨11枚が並び置かれていた。

この上に白金貨があるんだって。

丁寧に11枚の金貨を確認し、受取り票にサインをして店から出ようとしたら呼び止められて一言。


 「わしは魔道具屋のアリアじゃ。次はいつ来る?さらに良い品を希望じゃ」


 「…ユウゾーだ。次は春先だな。品は気分次第かな?」

  

 ふふふふふふふふふ…

 ははははははははは…

  

二人の腹黒い笑いが店に響いた。





外に出て周りに人影が無いことを確認するとユウゾーは金貨1枚を取り出しミューの手に握らした。

あまりの額に驚きこれを固辞するが、無理矢理にお礼だと半分強制的に収めて貰いながら、明日も買い物に付き合ってもらう約束を取りつける。

ミューは金貨を大事そうに魔法袋に仕舞う。その顔がとても嬉しそうなのを横目で見ていたのは内緒だ。


この村には2つの宿があると教えられ、お勧めの中の上クラスに向かう。

もう一つの宿は冒険者の溜まり場的な宿で、下の中クラスになり安全面からあまりお勧め出来ないとの事だ。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ