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右手にサイコガンを持つ男  作者: 西南の風
108/281

108 いざ 特級ポーション


 確かに この子には見覚えが…。


考え込むユウゾーにマーラが、ほれ東門の屋台で手伝っていた子だぞ。

同時に顔を見合わせる二人がいた。


「あっ あの時のお兄さん?」


「おう 思い出した、野菜スープの子か?」


屋台スープ売りの母娘だな。すると病気で寝込んでいるのは…。


「うん 私のお母…」   グウ~ッ。


おう おなかの虫か、ならば暫し待てまずは、、、。


日はまだ高い森の中だが土魔法でテーブルセットを作ると、お菓子とお茶を用意する。

さかんに遠慮する娘を席に座らせて、まずお腹の虫を黙らせよう。


皆が座って食べ始める姿を暫く見ていたが、流石に空腹には勝てぬ様子で一つ摘まむともう後は夢中になり食べ始めた。


お茶のおかわりをユウゾーは注いであげると、お茶もグビグビ飲み干し再び目の前のお菓子に手が伸びていく様子を皆が優しく見守っている。


ようやくお腹も落ち着いた様子なので、ぼつぼつ状況説明を聞かせてもらうか。


この半年程母親の体調不良が続いており、今回5日程前からついに寝込みほとんど食も取れずに日に日に衰弱している状況らしい。


何とか母に元気になってもらいたくて知人から森に薬草が生えていると教わり、危険と分かっていたが何とか採取出来ればと森に入ったとの事だ。


肝心の薬草も何処を探しても見つからずに、途方に暮れていた所に魔物からの襲撃を受け逃げ回っていたと事の顛末を話してくれた。


 そうか 結局薬草は見つからずか…。


マーラに薬草を尋ねると、この森の群生から判断すると有効な薬草がある可能性は低いと言う。


 ポーションは病気にも効能があるのか?


 無論あるが、ある程度万能に効果があるのは上級ポーションで、中級以下は病気の治療にはイマイチだと顔をしかめた。


 …中の上ならどうかな?


 …何を言っているのだ?何だと鑑定で上級に限りなく近い中級ポーションだと?


マーラが呆れた顔でユウゾーを見つめた、だが直ぐに考え始める。


 飲まして見なければ何とも言えんが、少なくとも今の段階では最良の一手だろう。


そうか ならば試してみる価値はありそうだと判断した。

ユウゾーは袋から中級ポーションを二本取り出すと、少女の前に置く。

怪訝そうな顔で瓶を見つめる少女に、


「これは私達が使っているお薬だ、お母さんの病気に有効かは正直分からないが、それなりの効果が有ると思っている。お母さんに飲ましてみてごらん、1本は今後の予備に持っておけば良い」


ユウゾーはポーション瓶を少女の手に握らせた。

戸惑う少女に周りの仲間が いいから貰っておきなさい、お母さんの病気を治したいのでしょう?

ようやく踏ん切りがついたのか、母の喜ぶ顔見たさに少女はしっかりと瓶を握りしめる。




「ありがとう、えーと 私はケイトよ。お兄さんは・・?」


無事にオレオンに帰り着く。ケイトの問に ユウゾーだ と笑いながら答えた。

創造魔法で小さなリュックを作ると、その中に血抜きした一角兎とお菓子を詰め込んであげる。

背の荷物が多少重そうだが、両手にはポーションをしっかりと握り元気に街中をケイトは走り出した。


 ポーションが効果があれば良いが…。


最悪でもポーションは滋養強壮薬にも用いられるから、それなりの体力回復には役立つだろう。

これ以上のお節介はこの世界では無理だ、人の命の軽い異世界では限界がある。

救うべき人はゴマンといる世界で、優しさだけでは生きていけないのだ。


「さて 今日はこのまま家に向かおう、明日ギルドに行こう」


もう夕方が近い、ギルド内は大混雑の時間だ。

妻達もそれに賛成と家に向かい歩き出す。




翌日ギルドの比較的暇な時間帯に魔石換金に訪れる。

今回は750万ゼニー程の精算となる。


ユウゾーはギルドからの帰り道にポーションを売った店に立ち寄ってみた。


「おっ お兄さんポーション売りに来たのかい?」


店主がニヤリと笑いながら尋ねてきた。

ユウゾーも苦笑いしながら袋から大量のポーションを取り出す。


「こ これはまた…確認するよ」


店主は何か問いたい様子を我慢しながら品鑑定に移る。


「計100本かい 見事な中級ポーションだね」


精算作業に移ろうとする店主を手で止めて、ユウゾーは尋ねてみた。


「・・特級ポーションが可能なら欲しい」


店主の顔が強張っている、暫く考えていたが少し待てと奥に入る。


やがて出てきた店主は店の入口にそのまま歩むと戸に鍵とカーテンを引いて、休業状態にしてユウゾーに向かいため息交じりに話しかける。


「まったく こんな話しは店先でするものじゃないよ。あんたが親方からの紹介でなければ直様断ったのだけれどもね」


そう言ってユウゾーの目の前に綺麗に輝く琥珀色の小瓶を出した。


「お望みのポーションだよ 白金貨4枚だ」


 おう まさかの特級ポーション?通常の店では在庫など持たぬはずでは…。


「よく知っているね、たまたまだよ。さる方から依頼があり手配したのだが、隣国同士のキナ臭い話しは聞いているだろう。何処も魔法薬の買い占めにあい品物が入庫不安定なんだよ。其の方も残念ながら薬が間に合わずに・・。まぁそんな訳で売れずに残ったと言うことさ、品薄なので多少高めの金額だがどうするね?」


確かに通常は白金貨3枚が常識の線だろう。

高いと断れば品薄品なので直様違うルートにて売りさばかれるのは確実だな。


「購入しよう。ただ一応鑑定させてもらうよ」


ユウゾーは鑑定の書を握り目の前の小瓶を確認する。


「間違えない。この百本のポーションの売却による差額で白金貨1枚でよいな?」


「ああ それで良いさ、毎度」


店主はにっこり微笑むと白金貨1枚とポーション百本の引き換えに、特級ポーションをユウゾーに手渡した。


「商談成立だね、これからもよろしく頼むよ」


ユウゾーを上客と判断したようだ、次の商談狙いかな?




「ユウゾー 何もこの値が高い時に買わずとも後日でも良かったのでは?」


外に出て人通りの少ないことを確認したマーラが小声で話す。


「うんマーラ確かにそうだが、こんな薬はいつ必要になるか分からない家業だろう?必要な時にあの時に購入しておけば良かったと悔やむ事などしたくなかったのと、入庫に手間がかかると思っていたのが運良く直ぐに手に入る事となった、これを逃してはいけないと判断したのさ。それに一番大事な事だけど、値段が普段より高いと言っても結局白金貨1枚で入手できたのだよ。激安では?」


ユウゾーはいたずらっぽく小さく笑う。


「それは別に百本ポーションを…」


そこでマーラはハタと気がつく。

百本のポーションは元手ほぼゼロであると言う事を。

瓶代はかかっているが大した額ではない、元手はユウゾーの手間暇と魔力消費のみ。


「はぁー とんでもない男を夫にしたんだな…」


軽くため息をつき、急にユウゾーの腕に絡み付く。

慌てたユウゾーが どうした と問うと。


「なんでも無い、少し甘えただけだ。早く家に帰ろう、それと 今晩は私だからヨロシク」


二人の様子を後ろから眺め少し気分を害している護衛役のミーアがいた。



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