107 いざ 助けた少女
新年明けましておめでとうございます。本年もヨロシクお願い致します。皆様のお陰でここまで投稿を重ねていく事が出来ました。改めて御礼申し上げます。
遠征用意を整えて西の中級ダンジョンを目指す。
当時一番人気のダンジョンで、入口前の広場に沢山の冒険者達の野営姿が見られたが、その当時の半分も冒険者の姿を見ることはない。
「ふむ まぁ空いているのは当然か。この方が探索が楽だしな」
新ダンジョン地区の人気がいかに高いか目の当たりに分かる。
空いている広場前に野営のテントを広げながら、ユウゾーは知り合いの冒険者がいるか探してみたが該当者は確認出来なかった。
「ユウゾー早く設置して夕食の準備をしてくれ」
マーラが騒ぎ出す、はいはいとユウゾーは休めていた手を動かしだす。
プラハが慣れぬ手付きで魔法書を握りながら、風呂場と簡易トイレをミーア達の指示の下懸命に作製している姿が見えた。
かなり手慣れてきた様子だ 頑張れと心の中で応援する。
10階層の安全地帯を目指し順調に進む。
途中かなりの魔物達が現れるが全てサイコガンの餌食となる。
魔石やドロップ品の回収が忙しい。
特にプラハの張り切りが目につく。
何か良いことがあったのかい?思わずそう呟くユウゾーだ。
ダンジョンハイになっていないか心配してしまう。
確かミューやミーアも昔同じことを体験したな…。
二人と目が合うと昔を思い出したのか、視線を逸らされてしまった。
昔の古傷は触るまい、もうすぐ安全地帯に到着だ。
安全地帯には数組のパーティが野営の準備中だ。
それぞれに挨拶を交わし奥の一角に陣どる。
手早く野営の準備を終わらせ、夕食作りをせねば。
1名を省いて皆手際よく動き回る。
その1名はテーブルの上に回収した魔石を並べご満悦の様子だ。
その回収された魔石の数はハンパではない、わずか一日でよく集るものだ…。
明日からが本当の意味での魔石回収の勝負になる。
良い魔石とドロップ品が沢山回収出来れば良いな。
夕食が終わり暫くするとプラハがウトウトし始めた。
風呂に入って体が解れお腹がいっぱになればそれは眠くなるだろう。
無理せず早く休めとプラハをテントに追いやる。
妻達もお菓子をつまみながらまったりしているので、ユウゾーは予てから考えている今後の近未来について妻達に意見を聞いてみる。
皆の一致した考えは基本都会の街中でなければ何処に住んでも構わないとの事だ。
出来れば自然に接した地区が一番との事だ。
都会育ちのアーシャを少し心配したが、本人はケロリとして皆と住むなら大丈夫だとにっこり笑う。
ふむ その笑顔可愛いな。ふむ今晩はアーシャの番だったな。
たっぷりと可愛がって……いかん!何を考えておる、少し緊張感が薄れておるな 反省。
そんな事を考えなくともその夜はアーシャからたっぷり搾り取られたユウゾーであった。
20階層の道のりも魔物の出現率は高かったが、当たるを幸いに7丁のサイコガンが休む間もなく発射続け、安全地帯に到着後の魔石確認では皆が笑顔満載の状態だ。
夕食後に明日の最終工程の打ち合わせに入る。
明日もこのまま力押しでダンジョンボスの30階層に突入して地上に戻る事で決定。
ライラとプラハの二人も既に違和感なくサイコガンを扱えるようになった。
このダンジョンでは7人の相手になる魔物はいないからな。
まぁ 安全第一が一番だから皆に適度にブレーキをかけながら進めばよいな。
30階層まではまさに怒涛の勢いで突き進んだ。
最終ボスもライラとプラハの二人に対応させ、ユウゾー達はサポートに徹する。
難なくボスも倒し終えドロップ品の魔導書を入手出来た。
雷魔法の中級か また珍しい物が…。
ライラとユウゾーが対象になったが、ここはライラに譲る。
ライラが魔導書を抱きしめて目を輝かせていた。
さて転移石で地表に戻るとするか、ボス室の入口近くにある転移石で皆が次々と移動していく。
その夜は恒例となった魔石の選別作業をマーラの指揮のもと全員が参加。
今回もかなりの魔石を回収した。精算が楽しみだね。
例の如くクズ魔石は全てユウゾーの前に集められた…。
了解だ…頑張ります、、、。
ユウゾー一行は鼻息荒くオレオンまで帰還の途についた。
オレオンの都市が見え始めたときにその事は起きた。
オレオンに着く寸前に小さな森がある。
通常はその森を避けるかのように道が出来ている。魔物はほとんどいないと言ってもよい、一角兎等をたまに見かける程度である。
都市の下級民達が薪や茸の食料探しに使う程度の森になる。
何の気無しに森を左手に見ながら、その中の様子を見ながら歩いていたミーアが突然立ち止まる。
その様子に他の者達も何事かと森の奥を注視していたマーラが、
「ゴブリン? いや…小さな女の子がいる」
只の薪拾いなら珍しくもないが、何となく様子が…。
「いかん!何かに追われて逃げているんだ」
マーラとミーアが森の中に駆け出した、続いて皆も子供を助けるべき森の中に走り出す。
「ひー た 助けてー」
声も絶え絶えに助けを呼ぶ声が小さく響く。
脱兎のごとく駆け寄るミーアがサイコガンを発射した。
「ひーー」
女の子に襲いかかるまさに寸前に一角兎の頭が弾け飛び、女の子の顔に鮮血が飛び散った。
恐怖に倒れ込んだ女の子は腰が抜けた様子で震えていた。
「もう大丈夫だ、怪我はないか?」
マーラが女の子に追いつき安否確認を行う。
ガタガタ震えながらも大丈夫だと首を何度も振っている。
追いついたユウゾー達もほっと一息いれる、顔についた鮮血をアーシャが優しく拭き取り、
「危なかったな、だが誰も付添はいないのか?」
まだ怖さから抜け出ていない為か喋る代わりに首を横にふる。
「此の森は比較的に安全とはいえ、小さな子が一人で来る場所ではないぞ」
マーラが呆れてため息をつく。
「お お薬の、薬草を取りに…」
ようよう言葉をつなげ説明しだした。
母が病気で寝込んでしまったが、薬を買う金がなく森の中に薬草探しに来たとの事だ。
「気持ちはわかるが、万一お前の身に何かあれば母が悲しむぞ」
ミューも心配そうに女の子に話しかける。
途端にしゅんと俯き肩を震わせている。
どれ街まで送り届けるかとユウゾーは顔を覗き込むとハタと考えこんだ。
あれ この子何処かで見たことが…。