102 いざ オレオン再び
ふむ 金儲けは袋以外にもあり得る訳だな。
まぁ 今後時間がある時にじっくり検討するか。
その前に皆に最後の分配だ、ユウゾーは小袋を二つ取り出す。
「皆も納得したようなので今後はライラの提案通りに進めたいが異議のある者は?」
マーラを始め皆諦めの顔で承認する。
その顔を苦笑いで見つめユウゾーは皆に伝える。
「では 早速明日より実施したいので皆の協力をお願いしたい。さて、明日より実施だが、困ったことに本日はまだ明日ではない」
何を言い出すのかと皆は怪訝な顔つきになる。
「よって 本日は最後の分配配布に移りたい」
途端に皆の顔が輝き出す、ライラだけがため息まじりだ。
「魔道具屋にて袋がかなりの高額で売れた。よって皆にお裾分けとなる」
二つの小袋をテーブルの上でひっくり返すと白金貨が大量に転げだす。
皆から歓声の声が響き渡る。
「皆1枚づつ取ってくれ。残りは運営費に当てるからな」
たちまち皆の手が白金貨に伸びて各自が手元に引き寄せる。
1枚1000万ゼニーの白金貨を皆が掌にとり眺めている、ライラも何故かうっとりと白金貨を眺めている。プラハは未知との遭遇に混乱している。
残った白金貨を再び集めて5枚だけを別にする。
残りの白金貨を纏めて小袋に入れて、ライラに渡す。
「皆聞いてくれ、ライラの内助の功が早速発揮された訳だ。今後我がパーティの金庫番はライラを任命するので、何か必要な事があればライラに相談して欲しい。またこの5枚に関しては予備費として私が所有する。残りはライラの管理でお願いしたい」
ライラは白金貨が20数枚入った小袋を手にとり、目を白黒させていた。
宜しく頼むよ 我がパーティの金庫番殿。
翌日はオレオンに向かう旅の始まりだ。
予約してあったレンタル馬車屋から2頭立ての馬車に皆が乗り込む。
途中ギルドに寄りライラが最後の挨拶を皆と交わしている。
ギルマスが二階の窓からユウゾー達に手を振っていた。
さてさていざ旅立ちである。
ゆっくりと馬車は動き出す。さらば大森林よ 開拓村よ。
御者席にはミューとマーラが乗っている。安全運転で頼むよ。
大森林の中を一本道が続いている。
魔物の出現を皆が注意深く見ているが、結局大草原に入るまでは魔物は現れなかった。
大草原に入り見通しがよくなり、これからは交代で見張りを続ける。
手の空いた者同士でお喋りに花が咲く。
ミューと交代にユウゾーが御者席に移動している。
魔物はコボルト系が数頭襲ってきたが、難なく撃退する。
天気は良いし季節も良い、絶好の移動日だな。
移動は全て馬任せ、その方が何故かスムーズに馬が動く…解せん。
1日目は予定の原っぱにたどり着く、急いで野営の準備だ。
大型テントにユウゾー専用テント及びプラハ専用テントの設置、簡易トイレに風呂場の設置が終わりほっと一息をつく。
女性陣が入浴している間にプラハと二人で食事の準備になる。
だいぶプラハも手際が良くなってきた。
最初は一から十まで手とり足取りの状態であったが、今日あたりは言われなくとも自分から先を見て対応出来始める。
うん マーラに比べれば大分筋がよいぞ。まぁ 比べる相手が相手だが、、。
いやいや旅に出ると男は鍛えられるものだ。
このまま成長して欲しいものだな。
夕食とお菓子タイムが終わり後は寝る準備だ。今日の夜番は誰からかな?
防御柵と魔除け袋も撒いたし、後は宜しくだ。
うん 今日はミーアが同衾かな、ではテントに行こうか 皆さんオヤスミ。
旅は順調に過ぎていき、半年ぶりにオレオン都市に舞い戻ったユウゾー達であった。
まずはギルドにて情報収集とこれまでの大量の魔石を売りに行こうか。
ギルドに入るとかなりの熱気にユウゾー達は驚く。
何なんだろうこの活気は?
受付にて大量の魔石を盛り上げると流石に皆が騒ぎ出す。
おい なんだあの大量の魔石は?
例のダンジョン産なのか?
いや待て あのエルフ達はもしかして?
そうだ 少し前に話題になった あの一行じゃないのか?
何だか姦しいな・・。
「ゆ ユウゾーさーん、お久しぶりでーす!」
奥の方から声がかかる、この声は。
「ダンカンさん ご無沙汰でーす」
懐かしい人から声がかかった。
「兎に角 上に行きましょう。ここは目立ちすぎますから」
ダンカン氏の案内で二階の応接室まで案内される。
ギルマス室は今来客中らしい。
一階の冒険者達から注目を浴びてしまった原因を尋ねると…。
「それなんですが、例の新ダンジョンが正式にひと月前にオープンしたんです。その噂を聞き入れてこの国中の腕自慢の冒険者が集まりだして、もう大騒ぎの毎日なんです」
この国では2つ目の上級ダンジョンに認定されて、今この都市はちょっとした一大ブームの真っ最中らしいのだ。
それと同時にあのダンジョンの最大の功労者であるユウゾー達の噂話に、尾ヒレ背ヒレがついて少し前まで大変な状態であったらしい。
やはり 早めに逃げ出して正解だったんだ。
しかし 下の熱気は異常の一声では済まされない位の活気に満ちている。
「それそれ 実は新ダンジョンから左程遠くない地点でまたもや新しいダンジョンが見つかり、あの地点はもう冒険者達で溢れかえってる始末です」
ほう またもや新ダンジョンが、、。
新発見されたダンジョンは規模的には30階層の中級ダンジョンではあるが、冒険者の流れが完全にあの地点に向いてしまっているらしい。
まぁ 後数年もすれば落ち着くんでしょうけれどもとダンカン氏も呆れ顔である。
人の常で新しい場所には誰しも興味を持つからな。
「おう ユウゾー、よく戻ってきたな」
荒々しくドアが開かれてギルマスの参上だ。
元気そうだが、忙しさに少しやつれた顔に見える。
「カカカ やつれもするわ、こんなに忙しければな」
ギルマスへの利権目的の来訪者が後から後からひっきりなしに続いて、うんざりの状態だという。
「で 今回は何が目的なんだ?新ダンジョン群か?」
いえいえ興味は確かにあるが、主にふたりの底上げが目的だと新たな二人を紹介する。
ある程度の底上げができたら別の場所に移動する予定を伝える。
「ふむ それは少し寂しいが、お前たちは有名人だ。あまり長いはせぬ方がいいかもなぁ」
腕組をしながら寂しそうにギルマスは呟く。
「なれど これまでと違いかなりこの都市が潤っているのでは?」
「カカカ それは有り難いことにな。全てお前たちのお陰だ、改めて礼をいう」
ギルマスが軽く皆に頭を下げた。
「よして下さい、私達は単に依頼に応えただけです。それなりの報酬も頂きましたので、改めて礼を言われる程の事ではないですよ」
「いやいや言わせてくれ、あの時お前たちのパーティが参加しなければどれだけの被害があの探索で生じた事か、、。それにあの地区の管轄が他の都市に持っていかれた可能性すらあったのだ」
「いや もうその辺にしましょう。十分にギルマスのお礼は伝わりましたので」
突然ドアがノックされ職員の方が硬貨袋と明細書らしき物をギルマスに手渡す。
ご苦労さん とギルマスは袋と紙をうけとりユウゾー達の前に置き直した。
「下での魔石の換金とその明細だ確認してくれ」
マーラとライラにより袋の中身が確認されて、明細書を見ていたライラがギルマスに疑問点があったらしく質問を投げかけた。
「失礼ですが、魔石の単価にかなり開きがあるようですが?」