101 いざ ライラの提案
朝になる さて今日中に最後のやぼ用を片付けて明日にはオレオンに向かわねば。
横で寝ているライラを起こさぬように身支度を終えて朝の鍛錬開始だな。
裏庭に向かうとアーシャが準備運動をしていた。
珍しいな 朝の挨拶を交わしてユウゾーも準備運動を開始する。
明日の移動に備えてアーシャも少し鈍った体を鍛えておくと言う。
ついでにユウゾーの打ち込み練習の相手になってくれるとの事だ。
此方も願ったりだが、剣のレベルが違うから御手柔らかにだぞ。
約一時間近くアーシャの指導を受けたっぷり汗をかいた。
その汗を井戸水の濡れたタオルでアーシャがユウゾーの上半身を拭いてくれた。
火照った体に冷たいタオルが気持ち良いものだ。
ユウゾーを拭き終えたアーシャが耳元で呟く。
今晩は私の番だから宜しくな
はい…無論頑張ります、ユウゾーは気合を入れ直す。
大事な妻達だ、対応に差があってはいけないからな。
各店が開く時間にユウゾー達も店を訪れ旅に必要な食料や部材及び日用品関連の買い出しをする。
妻達は一通り買い出しが済むと衣料品店に入り込む、春用の衣服も揃えたいようだ。
好きな物を買いなさい。お金はあるぞ、お大尽様の気分かな?!
そうは言っても所詮冒険者用の衣服になるので、左程高価な物など誰も見向きもしない。
ふむオレオンに着いたら少し高価な私服関連を買いにいくのも良いな。
せっさくの美人妻達だ、偶には着飾って食事会の真似事も必要だよな。
妻達を見ながら一人頷くユウゾーであった。
そのユウゾーを見て小首を傾げる妻達である。
その後昼食を済ませるとアーシャとミーアを伴い魔道具屋に訪問する。
他の妻達は引き続き市場にて必要と思われる品の最終確認をお願いしている。
「来たか 奥へ」
婆さんは今日も元気そうだな。
応接間にて品物の確認作業に移る。
「ふむ これなら売りやすそうな品だな。だが良くこれだけの数を」
計15袋 を目の前に婆さんは嬉しそうだ。
一つ一つ丁寧に確認すると満足げに頷いた。
少し待てと 裏に入っていく。お金の準備だな、今回はいくらになるかな?
「今回少し前回分の上乗せをしてある」
義理堅い事だ、嬉しいけど…。
白金貨15枚が入っていた、ほう 無理したのでは?
「なんの 商売になると判断したんだ安心せい」
聞くと市場は今が高値のピークに近づいているらしい、婆さんもそれなりの利益確保が出来ると判断したのだろう。
「有り難く頂いておく。それと今回にて当分袋の卸しは中止したい」
「ふむ それは残念だが確かに裏で誰かが動き出した情報もあるので、暫くは熱りを冷ますのも悪くはないな」
うん? どこかの組織関係が動き出したのかな…。
危ない 危ない 可愛い妻達に怪我でもされたら申し訳ないからな。
最後に店内にて気になる魔道具を数点求めて店を出た。
「ユウゾー 昨日も同程度の金額を稼いだのだろう?」
アーシャが呆れた顔でため息をついた。
ミーアはアーシャを見て笑っている。
「話しのとおり今回で暫く中止になるからな」
「婆さんの話しに出てきた誰かとは?」
「いや全く心当たりはない」
正確には一人いるのだが、今はまだ推定の段階だ。
暫くは身辺の周りに注意が必要かな、後で妻達にそれとなく注意するように伝えておこう。
その夜ちょっとした騒ぎがあった。
ライラが妻達に提案をもちかけたのだ。
ユウゾーはオブザーバー扱いで参加する事になる。
「正直言いますと、皆さんの昼間のお金の使い方は異常です。どれだけの丼勘定で使用されているのか考えた事がお有りですか?不思議に思い皆さんにお尋ねしましたらほとんど全てが人数割にて分配されているとの事。可怪しいと思いませんか、ここの宿泊代金・店での食事代・旅での不足食品代等々全てがユウゾーさんが支払っているのですよ。その上に皆さんは今回春物の冒険者衣服代もユウゾーさんからお金を受け取りましたね?どんな金銭感覚なんですか?」
えーとライラさん これは当初の約束事ですし、ほら今回みたいに結構な額の臨時収入も…。
「ユウゾーさん その臨時収入も今回までとの事ですよね次回からは無いのでしょう。ここらで皆さんも妻としての自覚を持ってもらいたいのです。ユウゾーさん少し甘やかし過ぎですよ」
・・はぁ そうですよね。
「まてライラ 確かに少しユウゾーに甘えているのは認めるが、何も分配された金額を湯水の如く使っている訳ではないぞ。そ それにだギルドの個人口座に貯めてある、、」
マーラが必死に弁解を始める、何となく危機を感じているのだな。
「マーラさん これを見てもそんな事が言えますか?」
テーブルの上に手書きで何やら数字が列記されている紙を置いた。
「これは皆さんの口座に貯めてある金額です。近くでじっくりと見て下さい」
なる程 ユウゾーの個人金額が一番多いが、各個人がかなり凸凹のある金額である事がひと目で分かる。
「この中でアーシャさんプラハさんと私が最近身内になりましたので省かせてもらっています。他の4名の方は比較的当初からユウゾーさんと同行されていますよね。なのに何故この様な残金額に差がでるのですか?」
一番貯まっているのはミーアだ、次にミューが続く。マーラとニーナはミーアの1/5程の金額しかない事が分かる。
「い いやこれはその…。」
マーラ…弁解すればする程にボロが出ると思うよ。
「こ これは職権乱用だぁー 個人情報の漏洩になるぞ!!」
「いいえ これは身内での情報ですので、公には問題ありません。それよりどうしてこんな金銭感覚になっているのか、そちらの方が問題です」
何となくマーラ達の使い方が想像出来る。よく飲みに出かけるが酒が入り始めてご機嫌の時は周りの者に振る舞い酒をしている事がある。それも半端ではない人数にだ。
半分貸し切り状態で酒場を占めてのどんちゃん騒ぎも報告が何回かユウゾーにも届いている。
自分たちのお金だからとユウゾーは笑っていたが、安い場末の酒場とはいえ何回も続くとそれなりにかなりの金額になるものだ。
「うぉー 酒を飲むと記憶が 記憶がぁー」
マーラ・・良い機会です。少しお酒は控えようね。体にも悪いし。
当分の間お酒は宿屋の食堂に限定しよう。
「さて皆さん今後は分担金は中止にします。全てお金の一元化を図り、皆さんには小遣い制度に移行いたします。当然今までの分配された金額に関しては関与しませんのでご安心を」
皆が一応にホッとした表情を見せる。
「さらに次いでですので、皆さんの小遣い制度ですが、当面は月に稼いだ金額の3%一人当たりが妥当だと思います。いかがですか?」
この金額にはニーナも含まれるので3✕8の24%が小遣いとなり、残りの約75%が共用費となる。
共用費の中には宿代・食費・衣服等の各諸雑費込となる。
諸雑費を引いて余ったものが資金としてキープされる事になる。
今までの頭割りに比べれば単純に1/5程度になるかな?
「それと個人で稼ぐ分には関与しませんので、お好きにどうぞ」
そう言ってライラはユウゾーを見てにっこり笑う。
うん? 俺か、どういう事かな・・あっ 何も魔法袋だけに拘る事もないのか、、。
その気になれば剣や鎧の武具関連やポーション関連もいい金を生むよな。
そうか、別の金儲けの方法もあるのだな、袋に比べれば利益は少ないが危ない橋を渡る必要もないわけだな。
ふむ 一考の価値があるな、、。
ユウゾーは足りない頭をフル活動させ始めた。